KAAT2023年度のラインナップ明らかに、長塚圭史「視界が開けるような作品を作っていきたい」

KAAT神奈川芸術劇場の2023年度ラインアップ発表会が本日2月7日に行われた。

会見には、同劇場の芸術監督である長塚圭史らが出席。長塚は、シーズン制を設けること、劇場を開いていくこと、クリエーションのアイデアを開発する“カイハツ”プロジェクトを引き続き3つの柱として掲げ、「劇場が“ここ”にあるということを地域の方にアピールしていきたい」と意欲を見せる。また長塚は、2023年度のメインシーズンタイトルが「貌（かたち）」に決定したことや、2023年度の新たな取り組みとして、神奈川県民割、シーズンチケット発売、使途の指定可能なオンライン小口寄付を導入することを明らかにした。

プレシーズンの演目には、タニノクロウが作・演出を手がける「虹む街の果て」をはじめ、KAATキッズ・プログラムより、伊藤郁女の振付・構成・演出による「さかさまの世界」、松井周が作・演出を担う「さいごの1つ前」、根本宗子作・演出「くるみ割り人形外伝」が並んだ。「虹む街の果て」は2021年に上演された「虹む街」の未来を描くリメイク作品。「さかさまの世界」は2021年にフランスで初演された作品の日本版で、神奈川県内の子供たちから収集した“秘密”が作品に織り込まれる。白石加代子らが出演する「さいごの1つ前」は2022年に上演された同作の再演。「くるみ割り人形外伝」はバレエ「くるみ割り人形」をベースにした音楽劇となる。

メインシーズンは、写真家・浅田政志の個展「Yokohama Photograph －わたし / わたしたちのいま－」で幕開け。このほか、アーサー・ミラー作品を長塚が演出する「アメリカの時計」、倉持裕の戯曲を杉原邦生が演出する新作公演、KAAT、東京デスロック、第12言語演劇スタジオによる共同製作「外地の三人姉妹」、筒井康隆の小説を福原充則の演出で舞台化する「ジャズ大名」、長塚が作・演出を手がける「箱根山の美女と野獣」「三浦半島の人魚姫」、リー・ホール作品を小山ゆうなが演出する「スプーンフェイス・スタインバーグ」、そして「YPAM - 横浜国際舞台芸術ミーティング 2023」がラインナップされた。

「Yokohama Photograph －わたし/わたしたちのいま－」では、浅田が神奈川県に暮らす人々を撮り下ろし、自身初となる劇場での展示を実施。「アメリカの時計」は世界恐慌を扱ったアメリカ史劇で、倉持と杉原が初めてタッグを組む新作では、複数の顔を持ち、複数の人生を生きることができる摩訶不思議な人間の物語が描かれる。1930年代の朝鮮北部を舞台にした「外地の三人姉妹」は2020年に初演された作品の再演。「ジャズ大名」は幕末の日本に漂流した黒人たちが音楽好きな大名と出会い、城中でジャムセッションを繰り広げるコメディ作品だ。原作では小藩が舞台となるが、今回の公演では小田原藩の支藩・荻野山中藩に置き換えられる。「箱根山の美女と野獣」「三浦半島の人魚姫」は、神奈川県内巡演プロジェクト「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」の第2弾で、「スプーンフェイス・スタインバーグ」はガンに冒された少女が死について考えるモノローグドラマ。「YPAM - 横浜国際舞台芸術ミーティング 2023」では、国際的芸術交流の深化・発展と共に、地域との結びつきを深めることを目指したさまざまなプログラムが展開される。

さらに提携公演として、仕立て屋のサーカス、ロロ、木ノ下歌舞伎、OrganWorks、範宙遊泳、黒田育世、天使館、地点、Noism Company Niigataの公演が行われる。

会見の最後、長塚は「芸術監督としては、劇場が地域に必要だと思われるように、演劇の魅力をより多くの皆様に届けていきたいと思っています。また作り手としては、刺激的なものを皆様にお見せして、視界が開けるような作品を作っていきたいと考えています」と決意を明かした。