コクーン アクターズ スタジオ第2期生による発表公演、COCOON PRODUCTION 2026 Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル「アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―」が3月19日にBunkamura シアターコクーンで開幕する。コクーン アクターズ スタジオ(以下CAS)はBunkamura シアターコクーン芸術監督の松尾スズキが主任を務める“若手を対象とする演劇人の養成所”。松尾が書き下ろした「アンサンブルデイズ」は、CAS生たちの思い、舞台業界の現状などを織り交ぜたミュージカルで、昨年の第1期生による公演では演出・美術を杉原邦生が手がけた。今年、第2期生による公演ではノゾエ征爾が演出を担当する。
CAS立ち上げ時から常任講師も務める2人は、「アンサンブルデイズ」について、CASについて、どのような思いを持っているのか。多忙な2人のスケジュールを縫って奇跡的に実現した本対談は、終始リラックスした雰囲気で和やかに進行した。
取材・文 / 熊井玲撮影 / 藤田亜弓
「僕とは違う」けれど「すごいな」と思う関係
──お二人は昨年末にスタートした、サンリオピューロランドのメインパレード「The Quest of Wonders Parade」で初タッグを組まれましたが、それ以前からコクーン アクターズ スタジオ(CAS)の講師同士として、よくお話しされる機会はあったのでしょうか?
ノゾエ征爾・杉原邦生 いえ。
ノゾエ めったに会う機会がなくて。ただ(はえぎわ劇団員の)山口くんが……。
杉原 そうそう、山口航太くんが僕の芝居に何回か出てくれているので、それをノゾエさんが観に来てくださったときにちょっとお話ししたくらいで。……あ、でも1回、2人で食事に行きましたよね?
ノゾエ ああ、行きましたね!
──お互いの作品をご覧になったことは?
杉原 もちろん何作も観ています。ノゾエさんは演劇のアナログな部分を生かした、ある意味、素朴な演出をなさいますが、ああいう質感で表現できていることがまずカッコいいなと思っています。その場で起こるライブ感をすごく大切になさっていて、演劇でしかできない表現にすごくこだわっていらっしゃるんだろうなと。しかもその表現が押し付けがましくなく、最終的にじわっとくる印象がいつもあって、僕とは全然違うなと感じています(笑)。
ノゾエ 邦生くんはスパーンとくる潔さ、気持ちよさがあるなと。僕は日常的な世界観で日常的なものを持ち込むんだけど、邦生くんはパン!と目を覚させてくれるような、一瞬で物語世界に連れて行ってくれるような強さ、爽快さがあり、その力がすごいなと思います。創作者の作為みたいなものが見えないというか、1歩間違えると鼻についちゃいそうなことも邦生くんの演出にはなく、理屈抜きのところでポン!とやっているのが、やれそうでなかなかできないなと思います。
──一緒にお仕事されて、仕事相手として印象が変わったところはありますか。
杉原 ノゾエさんのお人柄なんだと思いますが、めちゃくちゃ柔軟(笑)。
ノゾエ 柔軟、でした?(笑)
杉原 はい。もちろんこだわりはお持ちでそれは伝わってくるのですが、打ち合わせの中では「ここにこだわりが……」というようなことは一切おっしゃらず、でもスルッとこだわりが入っている印象を受けました。
ノゾエ (笑)邦生くんはスマート、って感じがしますね。ピューロランドのお仕事は、とんでもないビッグプロジェクトだったので、邦生くんはどれだけの人と話をして、想像しきれないくらいさまざまな要望を聞き、それを踏まえたうえで自分のこだわりを盛り込んだのだと思いますが、本番は見事なパレードになっていたので、「よくぞやりました! すごいな」と感じましたね。
今一度シンプルに作品を捉え直す
──「アンサンブルデイズ」は、昨年杉原さん演出で初演され、今回はノゾエさんが演出を担当されます。ノゾエさんも初演をご覧になったそうですが、印象に残っていることはありますか?
ノゾエ まず、シアターコクーンという大きな舞台でCAS生たちを生かす、というところがすごいなと思いました。僕もCAS生たちとは授業でずっと関わってきましたが、あの子たちがこんなにも生き生きと!というところで僕はめちゃくちゃ感激して。それこそ、演出家が導いていけるところだと思うんですけど、本当にみんな見違えるようでした。しかも養成所の発表会であることを忘れさせてしまうというか、松尾さんのホンの世界観として、コクーンで上演される1本の演劇作品になっていたのがすごいなと思いました。
──初演の時点で、次年度ノゾエさんが演出することは決まっていたのですか?
ノゾエ はい、決まってました。なので、「勘弁してよー」と思いました。
一同 あははは!
ノゾエ でもありがたいな、とも思いましたね。1発目、どうなるかわからずすごく怖かったと思うんですけれども、初演の衝撃は大切で、コクーン アクターズ スタジオとしてとてもいい1歩目を踏んでくださったなと。
──初演の稽古中に取材させていただいた際、杉原さんが「とにかく大変だ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
杉原 そうですね……本当に大変でした。まず「アンサンブルデイズ」という作品の初演だし、コクーン アクターズ スタジオがどういうものであったか、その結果が公に出る1発目のものでしたし。しかも、松尾さんが新作を書き下ろすってこと自体ほぼ初めてみたいなことで、公演としてもシアターコクーンで上演する松尾さんの新作であり僕の演出作品であるわけで……。さらに、稽古中に第2期生のオーディションもあったので、余計に「コクーン アクターズ スタジオの節目として『アンサンブルデイズ』でちゃんと結果を残さないと、松尾さんがこんなにも時間と情熱を掛けて始めたプロジェクトが後に続いていかなくなっちゃうんじゃないか」という思いも湧いて、とにかくなんとかせねば!と思っていました。
稽古が始まって、本読みの段階では「まあこんなもんかな」と思っていたのですが、立ち稽古が始まった瞬間に「どうしよう!」と焦り始めて(笑)。普段仕事をしている俳優たちとは違って、やってみよう!と言ってパッと動ける俳優がまだ少なかったので、僕が一つひとつ全部演出をつけるつもりで向かい合わないといけなくて……そこが一番大変でした。
──しかもWキャストなので、2倍演出されるわけですよね。
杉原 そう、それがまた大変でしたね。
ノゾエ (うなずきつつ)でも今は今で、みんな立ち稽古になると(記憶に)残ってるものをやるんですよ。
杉原 あ、初演の記憶を?
ノゾエ そうそう。読み方も初演の印象に近いし、動きの位置関係も。それを取り払って組み立てていくのは、また別の大変さで。
杉原 確かに。先入観があるんですね。
ノゾエ ただそれだけ初演の景色が強烈だったとも言えるので、改めて初演はすごかったなと思います。
──1月上旬から稽古が始まりました。進み具合はいかがですか?
ノゾエ やっぱりハードルがめちゃくちゃ高くて難しいなとは思っています。いろいろな条件を考えつつ、このシアターコクーンのサイズ感を埋めていかなければいけないわけなので。
杉原 人数も第1期生とは違いますからね。
ノゾエ そうですね。第2期生は4人少ないので、大人数で見せるシーンの迫力はその分どうしても弱くなってしまう。そこは演出として考えていく部分です。
──初演から演出は大きく変わりそうでしょうか?
ノゾエ よりアナログ感が増すと思います。つまり、より一人ひとりの存在が曝け出されるというか。でも、このホンにとって大事なものは変わらないし、「このセリフは当然この言い方になるな」という部分はあるので、本質が変わるわけではないですが。1本のホンで、別の表現者たちが取り組んで、同じものになったらおかしいよね?と思って稽古に臨んでいます。
──配役に関して、ノゾエさんが意識されたことはありますか?
ノゾエ その人の持ち味が一番生きるところはどこかを考えつつ……とはいえ、僕もそこまで一人ひとりのいろいろな面を知っているわけではないので、探りながらですね。「普通だったらこういうキャスティングにするかもしれないけれど、僕の知らないポテンシャルがあるかもしれない」と思って冒険したところもあるし、「やっぱりこの人の持ち味はこれだよな」と思って順当なキャスティングにしたところもあるし。でもなるべくそれぞれの強みが生きる場所を、ということは意識しました。
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第2期生たちの顔が変わってきた



