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ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390 EPISODE.4(前編) [バックナンバー]
MCバトルイベントの低迷と隆盛:MC正社員&DOTAMA
MCバトル“真冬の時代”を経て
2024年1月19日 19:00 13
MCバトル“真冬の時代”
──正社員さんが起こした改革は、アスベストさんとのMCバトル対談(参照:ShowBizとしてのMCバトル史|MC正社員の見つめる過去と未来)に詳しいのでそちらに譲りますが、2009年頃のMCバトルはビジネスになっていました?
KEN だから運営のモチベーションは、儲けようとかじゃなかったということですよね。
MC正社員 MCバトルぐらい好きになったものがほかになかったし、その運営で褒められたからというのがモチベーションでしたね。
KEN 逆にビジネスとして成り立ったのは?
MC正社員 2012年に「戦極」がスタートしたときには、キャパ200人くらいの浦和BASEに人がパンパンに入るようになって、イベント自体はなんとか黒字になってたんですけど、サラリーマンを辞めてもその収入と同じぐらいの利益が出るな、と思って仕事を辞めたのが2013年。「戦極」第5章のタイミングですね。
KEN イベント「Fruit Ponchi」はその前?
MC正社員 「戦慄」と「フルポン」が終わって、「戦極」が始まるんですよ。
KEN 「フルポン」は変わり種MCバトルが多かったじゃないですか。
──「女性口説きMCバトル」とか。
KEN 「AYA a.k.a. PANDAの作ったお弁当を食べてジャッジする」とか。ジャッジは俺なんだけど(笑)。
MC正社員 変わったバトルが多かったのはMeteorさんの影響ですね(笑)。
KEN そういう試行錯誤があったうえで、結果としてガチのMCバトルのほうが客が入ったということですよね。
MC正社員 そうですね。「戦極」に入ってからは、そういうタイプの変わり種バトルはほとんどやってない。
──2018年の「BodyBag」(5分×2本、アカペラのMCバトル)のような別システムはありましたが、バラエティ番組的なバトルはほぼなかったと思います。2011年にAmebreakがageHaでイベントをやったときに「女性口説きMCバトル」のシステムを「フルポン」から借りましたが、少なくとも2011年時点では、本式のMCバトルよりも「女性口説きMCバトル」のような変わり種のほうが、広いシーンにはウケると思われていたということですよね。
KEN 当時は「ヒップホップをどうマイルドにすれば世間に届くか」という話が多かったけど、今思うと結局「とがったもの勝ち」だったし、MCバトルもいろいろ試した結果、ガチが正解だった。
MC正社員 2012年に「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」(「高ラ」)が始まるまで、本当にMCバトルは人気がなかったし、2009年から2012年まであたりはオワコンだと言われていたんですよ。「勝っても意味ないし」みたいな。
バトルにイノベーションが起きる瞬間
──高校生が戦うというパッケージは特殊だけど、内容は本式のMCバトルだった「高ラ」でブームに火が着いたというのは面白いですね。
KEN
DOTAMA がむしゃらだったっていうのがあると思います。ひたすら自分の曲を作って、バトルで名前を売って、ライブをやらせてもらって、ということしか考えてなかったし、シーンの先行きをそこまで余裕を持って俯瞰で見ることは、正直できてなかったと思います。不器用というか。
MC正社員 チャンスがなさすぎて、出るしかなかったって感じじゃない? ライブだって、ギャラなんか当時俺たちの回りの人間はもらったことなかったと思う。
DOTAMA だから、モチベーションというよりは、もうひたすらやるしかないと必死でした。
KEN バトル自体は好きでした?
DOTAMA 大好きです。バトルを見るのも大好きだし、それは今も変わらない。
MC正社員 根本がそれですよね。みんな「ヒップホップ冬の時代だからラップ辞めます」と思わないわけだし。
DOTAMA いまだに僕ら、アラフォーのおじさん2人で「あの試合観ました?」って言ってますし。
MC正社員 めっちゃ観てる、俺ら(笑)。
DOTAMA 気をもんだり迷ったりもあるけど、MCバトルが大好きなことは一貫して変わらないんです。
──DOTAMAさんは2011年にUMBの東京予選で優勝して本戦に進まれましたが、そのときの心境は?
DOTAMA 生き残った、ですね。自伝「怒れる頭」にも書いてるんですけど、バトルロイヤルを生き残ったという感じでした。
MC正社員 2011年のUMB東京予選は荒れたんですよ。本命がポコポコ負けて、今までの価値観が覆ったときだった。2010年ぐらいまでは「知名度」とか「格」、「オーラ」も勝敗を左右してたんですね。でも同時に「戦慄」組、要は2カ月に1回はバトルをやってる、バトルの練習をしてるやつがいい成績を残すようにもなって。そしてレギュラー化してるメンバーにもお客さんが優しくなっていた2011年の東京予選でメシアTHEフライと晋平太をGOLBYが破るっていう大番狂わせが起きるんですよね。新宿、Libra Records主催の大会でドープなワードセンスで勝負してるメシアTHEフライさんにGOLBYさんが韻をバンバン踏んで勝つっていう。価値観が変わった瞬間だった。
DOTAMA それは2010年に晋平太さんがUMBで優勝したのも大きいと思うんですよ。特にZONE THE DARKNESS(現ZORN) VS 晋平太の……。
MC正社員 「お前は誰に口きいてんだ? お前だよこのプチ晋平太」という晋平太さんのパンチラインが。
DOTAMA あのパンチラインみたいに、今までとまったく違うスキル、戦い方を見せてくれるラッパーが登場した瞬間に、MCバトルにイノベーションが起きると思うんですよね。2010年の晋平太さんはまさしくそうだったと思う。
MC正社員 だからあの時期は価値観が変わるタイミングだったし、新旧の価値観のぶつかり合いで場が荒れたんですよ。
──大阪でも梅田サイファーが勝ち出した時期だと言いますね。
MC正社員 梅田もR-指定も、出てきた当時はけっこう叩かれてたんですよね。でも、そのスタイルを、勝つことで“正義”にした。
DOTAMA そこに僕がたまたま変り種として生き残ったというか。それが2011年の印象ですね。
MC正社員(エムシーセイシャイン)
MCバトルイベント「戦極MCBATTLE」のオーガナイザー。2008年よりラッパーとして活動を開始し、2012年1月に同イベントを立ち上げた。2021年10月には東京・日本武道館で過去最大規模となる「戦極MCBATTLE 第24章」を開催。22歳以下限定のMCバトル大会「U-22 MC BATTLE」、女性ラッパー限定の大会「CINDERELLA MC BATTLE」などの監修・プロデュースも手がけ、日本のMCバトルシーンのオーソリティとして活躍している。
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DOTAMA(ドタマ)
栃木県出身のラッパー。2017年の「ULTIMATE MC BATTLE」で優勝したほか、数多くのMCバトルで好成績と大きなインパクトを残している。テレビ朝日にて放送されたMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」には初代モンスターとしてレギュラー出演した。現在までに12枚のアルバムを発表。音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」などの楽曲プロデュースも手がけている。“音楽の社交の場”をテーマに掲げたイベント「社交辞令」を定期開催中。
KEN THE 390(ケンザサンキューマル)
ラッパー、音楽レーベル・DREAM BOY主宰。フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年、アルバム「プロローグ」にてデビュー。これまでに11枚のオリジナルアルバムを発表している。全国でのライブツアーから、タイ、ベトナム、ペルーなど、海外でのライブも精力的に行う。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員として出演。その的確な審査コメントが話題を呼んだ。近年は、テレビ番組やCMなどのへ出演、さまざまなアーティストへの楽曲提供、舞台の音楽監督、映像作品でのラップ監修、ボーイズグループのプロデュースなど、活動の幅を広げている。
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MCバトルの歴史を KEN THE 390とゲストが語る「#ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE」
第4回は「戦極MCBATTLE」オーガナイザーの #MC正社員、バトルシーンのトップランナー #DOTAMA が登場!2000年代後半から2010年代前半にかけての“MCバトル冬の時代”を語る。 https://t.co/rrKNLxLQZ6