オーケストラと人気のシンガーがコラボレーションし、最高の音楽と新しい体験を届けるコンサートシリーズ「ビルボードクラシックス」。今夏その舞台に、「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」という“世界三大ミュージカル”すべての主要キャストを務めた俳優・飯田洋輔が立つ。7月3日に東京、8月8日に京都で行われる本公演では、飯田の東京藝術大学時代の同期・高井優希が指揮を担当。「MAESTOSO(堂々とした)」をテーマに、多彩な楽曲を総勢50名超のオーケストラとともに披露する。
音楽ナタリーでは飯田と高井にインタビューを実施。コンサートに向けての意気込みや「MAESTOSO」というタイトルに込めた意図、セットリストの構想に加え、ステージ上で刻一刻と変化する“生きたもの”を届ける、コンサートならではの醍醐味について話を聞いた。
取材・文 / 兵藤あおみ撮影 / 石阪大輔
公演情報
billboard classics YOSUKE IIDA Premium Symphonic Concert -MAESTOSO-
- 2026年7月3日(金)東京都 東京芸術劇場 コンサートホール
OPEN 17:30 / START 18:30 - 2026年8月8日(土)京都府 京都コンサートホール 大ホール
OPEN 17:00 / START 18:00
出演者
飯田洋輔
指揮:高井優希
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演) / 大阪交響楽団(京都公演)
編曲監修:山下康介
東京藝術大学時代から20年を経て
──飯田さんはオーケストラと初共演になりますね。
飯田洋輔 もともと「ビルボードクラシックス」には注目していて、実際に足を運んでたこともあり、出演オファーをいただいたときは大変光栄に思いました。これまで単独でのオーケストラコンサートをやったことがなく、プレッシャーに感じる部分はありますけど、同級生の高井くんが指揮してくれるので。安心感はあるなというところです。
──お二人は在学中から接点があったのですか?
高井優希 はい、在学中から。
飯田 僕は藝大時代、声楽科でクラシックを勉強していたんですが、どうしてもミュージカルがやりたくて仲間と同好会を作ったんですよ。そこからいろんな人の力を借りているうちにサークルに昇格し、活動の総まとめとして発表会をやろうという話になった。みんなでフルオーケストラをバックにミュージカルをやることを目標に取り組み、ついに実現した際に指揮を振ってくれたのが高井くんでした。もう20年近く前の話です。以降のキャリアは、僕はミュージカルで、高井くんは主にクラシックコンサートでそれぞれ活動して。そこからはお互いのことを知っていながらもなかなか交わる機会がなかったんですけど、今回のオーケストラコンサートで誰に指揮してもらうかと考えたとき、真っ先に高井くんのことが頭に浮かんで、僕からオファーをしたという感じです。
高井 ちょうど去年の今頃、飯田くんがジャン・バルジャンを演じた「レ・ミゼラブル」を2公演拝見しまして。同級生でありながら、いちファンとして「レミゼ」の世界観にどっぷりと没入させてもらい、本当に幸せな時間でした。あまりの素晴らしさに、2回とも泣きました。大いにインスパイアされ、「今後何かの企画で1曲でもご一緒できるチャンスがあったらいいな」と思っていたところに今回のオファーをいただき、もうめちゃくちゃうれしかったです。すぐに「はい、やりたいです」とお答えしました。
──今回のコンサートには音楽用語で「堂々とした」を意味する“MAESTOSO(マエストーゾ)”というタイトルが付いていますね。
高井 飯田くんの重厚で力強い歌声にピッタリだと思います。
飯田 タイトルを付けるとき、僕の歌声の特性やたたずまい、あとオーケストラの規模やその響きを考えていたら、“MAESTOSO”が一番ふさわしいんじゃないかと思えたんです。僕の一番好きな音楽用語でもあるし、僕自身がよく“堂々とした”と表現されますしね。そうタイトルを決めたら、おのずとセットリストも決められるかなと。
「MAESTOSO」で披露したい曲
──当日はどんなセットリストになりそうでしょうか。
飯田 僕は僕で自分がこれまで歌ってきたものを中心に入れたいですし、高井くんにも何かアイデアをもらえたらなと思っています。
高井 まずはやっぱり「レミゼ」の曲を一緒にやりたいかな。
飯田 学生時代に指揮してくれたのも「レミゼ」の曲だったよね。
高井 さっき藝大時代のミュージカル同好会の話が出ましたけど、その前に学園祭で合唱の出し物をやる機会があって。そのときは合宿までやったんですよ。その宿に行く道すがら、飯田くんがミュージカルのよさを熱く語ってくれたのを今でもすごく覚えています。それをきっかけに、「レミゼ」が大好きになったんです。その節はご教示ありがとうございました。
飯田 いやいや、当時はミュージカルが好きでそのよさをただ語っていただけで、人に教えている気なんてさらさらなかったんですよ!
高井 そんな飯田くんが今ではすっかりスーパースターになっていて、すごいなと。今回お声がけいただき、本当にありがたいです。今からコンサート当日が楽しみでなりません。
飯田 演奏を担ってくれるオーケストラの皆さんはトップクラスの方々ばかりでしょうし、指揮者は20年以上の付き合いになる高井くんですから。安心して身を任せ、そのうえで存分にパフォーマンスできたらいいなと思います。
──特別な企画のコンサートだからこそ、これまで舞台で歌ってきたことのない曲、例えば女性のキャラクターのものに挑戦するなど、新たな試みも拝見できるのでしょうか。
高井 私はここ何年かディズニーのコンサートの指揮を担当させていただく機会があったこともあり、飯田くんとディズニーソングをやってみたいなと思っています。
飯田 実は僕、学生時代に東京ディズニーシーでアルバイトをしていたんですよ。ヴェネツィアン・ゴンドラというアトラクションでカンツォーネを歌っていました。ディズニーのオフィシャルホテルでディナーショーをやらせてもらったこともありますし、好きなディズニーソングもいろいろとあるので、これ!というものがあればぜひ歌ってみたいですね。女性の曲もキーを少し変えれば歌えるんじゃないかな。ただ、日本語訳の口調次第で聴き手にとって気持ち悪くなってしまうかも? 歌曲にしてもマイクを通すことでその曲の魅力が半減してしまってはいけない。僕が歌う意味やオーケストラの音色、音響的なこと、コンセプトから物語性までも考えていかないとですね。
──ジャンルやテーマの異なる数々のナンバーを歌い紡ぎつつ、全編に通じるコンセプトや物語性を持たせたいと?
飯田 そうですね。“MAESTOSO”というタイトルのもと、いろんな表情の曲がちりばめられていて、その1曲1曲をオーケストラのサウンドの魅力とともにお客様に伝えられるコンサートにしたい、というのが理想形ではあります。が、僕1人の発想力だけではそこにたどり着けそうにないので、高井くんや編曲監修の山下康介さんと意見交換をしながら作り上げていきたいです。それこそ、さっき話に挙がった藝大時代の発表会では、高井くんが僕のやりたいという気持ちに応えてくれ、手探りの状態で始めたものをオーケストラにまとめあげてくれたので。今回もちゃんと応えてくれるのではないかなと。お互いプロとしてぶつかり合えるのが楽しみです。そうして作り上げたほうがお互いに納得のいく公演になり、演者はもちろん、お客様の記憶にも「いいコンサートだったな」と残るはず。楔のようにね。
高井 まずはその場にしかない空気を届けたいですね。我々が本番のコンサートでやることは、“リハーサルの再現”ではありません。私は、練習とは道筋を作るものであって、その道にはある程度幅があると思うんです。広い道で右側を歩くか、左側を歩くのか、状況によって歩く場所を変えるようなことが演奏でもあるんです。その時々の“最善”を考え、そしてそれぞれの状況を読み合いながら音を作っていくと、思わぬ化学反応が起こる面白さがある。観客を含め、同じ時間や顔合わせは二度とありません。それが生のコンサートのよさであると思っています。
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“生きたもの”を大切にするコンサート



