さとう。インタビュー|「全曲しっかりと自分の血が通った」2ndアルバム完成

さとう。の2ndアルバム「窓越し、その目に触れて」がリリースされた。

「窓越し、その目に触れて」はリード曲「通過する故郷」やそのほかの新曲「ドーナツホール」「ライア」、6カ月連続配信リリース企画で発表された「ネバーランドより」「胸ぐら」などで構成され、配信版は13曲、CDはボーナストラック「ぺちゃんこ」を加えた14曲を収録したボリューミーな仕上がりに。どこから聴いてもさとう。のベストな状態が味わえる作品となっている。

昨年3月発売のミニアルバム「とあるアイを綴って、」以降、テレビアニメ「花は咲く、修羅の如く」のエンディング主題歌「朗朗」や、二宮和也のカバーアルバム「〇〇と二宮と2」の収録曲「ピアス」など、さとう。の楽曲はこれまで以上に世に広がっていった。昨年はツアーを3回行い、「さとう。の音楽を愛してくれる人がこんなにたくさんいるんだ」と実感したと言う彼女は2ndアルバムとどのように向き合ったのか。妥協を一切許さず創作に臨んだ本作について、話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一

二宮カバーは「今でも夢のようなお話」

──昨年3月に行ったミニアルバム「とあるアイを綴って、」のインタビューから1年が経ちました(参照:さとう。ミニアルバム「とあるアイを綴って、」でバンドサウンドと向き合う)。最近のさとう。さんを拝見していると、とても充実した活動を行っているように見えますが、振り返ってみてどんな1年でしたか?

2024年から引き続きたくさんの方に出会えたんですけど、それ以上に自分が思ってもみなかったところにさとう。の音楽が届いているんだと実感した1年だったなと感じておりまして。テレビアニメ(「花は咲く、修羅の如く」)の主題歌を初めて担当したり、二宮和也さんが私の「ピアス」をカバーしてくださったり、いろんなアーティストの方が私の曲をラジオで流してくださったり、そういうトピックが一気に増えました。中でも、特に印象に残っているのが年に3回もツアーを回れて、秋冬の弾き語りツアーの最終日にホールでの初ワンマンを行えたこと。初めての場所も含めていろいろな会場に行けましたし、はじめましてのはずなのに皆さんさとう。のことを詳しく知ってくださっていて、うれしかったですね。

さとう。

──過去に「3%」がSNSを通じてバズったことがありましたが、二宮さんが「ピアス」をカバーしたことでご自身の曲がさらに思いがけない広まり方をしたのかなと思います。

きっと、さとう。のファンの方もすごくびっくりしたんじゃないかと思います。自分自身もうれしさやありがたさ半分、今でも現実なんだろうかと信じられない気持ちが半分なんですけど、二宮さんがアルバム「〇〇と二宮と2」でカバーされている曲のラインナップを見ると、シングル以外の曲も含まれていて、ちゃんと聴き込んでる方じゃないとできないセレクトだなと。そこにさとう。の曲も選んでいただけたことは、今でも夢のようなお話で、すごくありがたい経験でした。

──そうした広がりが、複数回にわたる全国ツアーや年末のホール公演につながったと。

秋冬の弾き語りツアーでは「さとう。さんのライブを観るの、今日が初めてです!」という方とたくさんお会いしましたし、「3%」やアニメの主題歌「朗朗」だけじゃなくて、二宮さんがカバーした「ピアス」がさとう。を知ったきっかけだとおっしゃっていた方もいて。いろんな曲を入り口にしてライブにたどり着いてくれた事実がすごくありがたかったですし、自分は何よりもライブに重きを置いているので、これからも「さとう。のライブに行ってみたい」と思わせられる楽曲を作り続けていきたいなと実感しました。

──音楽との触れ合い方がこれだけサブスク主流になると、そこで完結してしまう人も少なくないと思うんです。でも、曲を聴いてライブにも行ってみようと行動を起こさせるだけのパワーが、さとう。さんにはあるんじゃないかと。

これはいろんなところで言ってますけど、さとう。のライブを観た方が「さとう。のライブっていいよ」といろんな方に言ってくれたり、SNSに投稿してくれたり、そういう積み重ねの結果がホール公演のソールドアウトにつながったと思っています。技術をもっともっと磨くのはもちろんなんですけど、ライブに来てくれている人に対する感謝の気持ちを常に忘れないでいたいですね。

2025年12月に行われた「さとう。LIVE TOUR『この芽の色を知る人へ』」東京・三井ホール公演の模様。(撮影:スエヨシリョウタ)

2025年12月に行われた「さとう。LIVE TOUR『この芽の色を知る人へ』」東京・三井ホール公演の模様。(撮影:スエヨシリョウタ)

熱量のある曲をそろえたかった

──そんな中、昨年7月から6カ月連続で新曲が配信リリースされました。ミニアルバム「とあるアイを綴って、」から時間を置かずに、毎月新曲を1つ届けていくことはご自身にとって大きなチャレンジだったのではないでしょうか。

6カ月連続リリースはチームの方からの提案だったんですけど、2024年の1stアルバム「産声みたいで、」のときも7カ月連続配信に挑戦していて。そのときは7月のワンマンライブに向けた企画で、チームのみんなやファンのみんなと一緒に走っていけた感覚が自分をすごく奮い立たせてくれたので、2025年のときも12月のホールワンマンに向けた形でチャレンジしてみました。

──1stアルバムのときは全曲ギター弾き語りだったのに対し、今回はバンド編成でのアレンジも加わったことで、振り幅が大きくなったのではないでしょうか。1曲に対するこだわり方も、以前とは違ったものがあったんじゃないかと思います。

7カ月連続配信のときはどちらかというと、ライブでたくさん愛されてきた曲の“念願のリリース”みたいな気持ちのほうが大きかったけど、今回は比較的新しめの曲だったり書き下ろしの新曲も多数収録しましたしね。かつ、それまで弾き語りで披露してきた楽曲で、リスナーの皆さんをいい意味でどう裏切っていくか、「弾き語りもいいけどバンド音源もめっちゃいいね」と思わせるかの勝負でもあったので、曲ごとのアプローチについてはチームみんなでかなり考えた記憶があります。

──と同時に、2ndアルバム「窓越し、その目に触れて」に向けての準備も進めていたかと思います。

そうですね。6カ月連続リリースの楽曲を含めたアルバムを作ろうと思う、みたいなことはけっこう最初の段階から言っていたんですけど、まさかこんなボリューミーになるとは思っていませんでした(笑)。作業を進めていくうちに「あの曲も入れたいな。いや待って、あの曲もあったよね」みたいな話になって、最終的に「ええい、全部入れちゃえ!」ってことでCDのボーナストラックを含めると全14曲になりました。

──だって、新録曲のほうが多いですものね。ボリューミーではありながらも多彩さで起伏もあるので、最後までワクワクしながら楽しめましたよ。

よかった。ありがとうございます!

──アルバムの制作に取りかかる際、どんな作品集にしたいと考えていましたか?

6カ月連続リリースの楽曲が全部決まった時点で、どの曲からもシングルとしてリリースできるくらいのパワーを感じていたので、アルバムには同じくらい熱量のある曲をそろえたかった。もちろん、アルバムの流れとして多少熱の上げ下げは必要ですが、ゆったり聴かせる曲でも聴き手に没入感を与えるような曲を入れたいなとは、漠然と思っていました。

──1曲1曲のテンションは異なるけど、結果的には収録されたどの曲もリード曲みたいな仕上がりですよね。

すごく“強強な曲”が集まりましたね(笑)。1時間くらいあるアルバムですし、場合によってはつなぎの曲とか隙間を埋めるような曲が求められるのかもしれないけど、どこから聴いても、どこを切り取ってもさとう。のベストな状態が伝わったらいいなと思いながら作りました。そういう意味では、全曲しっかりと自分の血が通っているなと思っています。

2025年12月に行われた「さとう。LIVE TOUR『この芽の色を知る人へ』」東京・三井ホール公演の模様。(撮影:スエヨシリョウタ)

2025年12月に行われた「さとう。LIVE TOUR『この芽の色を知る人へ』」東京・三井ホール公演の模様。(撮影:スエヨシリョウタ)

リード曲を終盤に置きたかった

──これだけ個性の強い曲が多いと、曲順も相当悩まれたんじゃないかと思います。

そうなんです。曲順に関しては収録曲が全部出そろった時点で、チームのみんなで「こういう曲順がいいんじゃないか」という案をまず3つ出しました。そこから「1曲目はそのアルバムの顔にもなるので、だったら『ネバーランドより』がいいよね」という話になり、リード曲に関しても……“大人な話”をすると序盤にあったほうがいいという声もありますけど、自分的には今回のリード曲「通過する故郷」はアルバムの終盤に置きたくて。もちろん頭のほうにあっても、しっかり印象に残るぐらいのパワーがある曲ですが、このアルバムを聴き終えたときにより色濃く残っていてほしいなという気持ちがあったので、その意見をスタッフの方々に汲み取っていただき、最終的にこの曲順に決まりました。

──6カ月連続配信の幕開けを飾った「ネバーランドより」で始まり、その後は既存曲がほぼリリース順に並んでいますが、その間に新曲がバランスよく配置されていき、終盤の一番盛り上がるところで「通過する故郷」が来る。すごく聴きやすい流れだと思いましたよ。

ありがとうございます。「ネバーランドより」についても、3つの案の中には1曲目じゃないパターンもあったんですけど、曲冒頭の「やあ、元気にしているかい」というフレーズがアルバムを聴いている人に向けて問いかけているようですし、それがリスナーにとって没入感を高めることにつながるんじゃないかなと。それ以降も自分なりのギミックじゃないですけども、例えば「地平線」に向けて進んでいく中で「逃避行ハイウェイ」へと移り、そこから目的地の公園にたどり着く。で、「Saturday park friend」はピクニックの歌だから、何か食べたくなるよなと思って「ドーナツホール」へとつなげる。そうやって曲と曲のつながりを見つけながら並べて、配信では最後の曲となる13曲目の「風の便り」を聴き終えたら、また1曲目の「ネバーランドより」へと戻っていくわけです。どこからともなく吹いてくるこの風がネバーランドから届いたものなんだとしたら、アルバムの幕開けとエンディングがつながるのもアリじゃないですか。そうやっていろいろ考えながら決めた曲順なので、それぞれ思いを馳せてもらえるとうれしいです。

──緩急の付け方を含めて、どこかライブのセットリストに近いものがある気もします。

確かにそうですね。基本はバンドセットだけど、要所要所に弾き語りを入れて波を作ったりする流れは、ライブと同じかもしれません。