再生数急上昇ソング定点観測 (2026年3月1週目) [バックナンバー]
Snow Manが“聴く曲”を“体感する曲”へ変える / 大森元貴の「風が吹くように」発言の意図とは / 「ループザルーム」が描く、堂々巡りの不安感
今、盛り上がっている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2026年3月6日 18:30 4
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月20日から2月26日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeミュージックビデオランキングでは、30位に
IVE「BLACKHOLE」ミュージックビデオ
32位には
Mr.Children「Saturday」ミュージックビデオ
44位に登場したのは、
Hearts2Hearts「RUDE!」ミュージックビデオ
46位には
XG「ROCK THE BOAT」ミュージックビデオ
人気ガールズグループの新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
Snow Man「オドロウゼ!」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場2位
まず印象的なのは、思わず体が動いてしまう高揚感あふれるビートだ。低く響くグルーヴに「PO-PO-POPなステップで / Yeah Yeah Yeah Yeah」や「Don't you worry / ギラギラのFighter」といったキャッチーなフレーズが組み合わさり、聴くだけで気分が上がる。また「今日は踊ろう」と語りかける歌詞が、迷いを吹き飛ばすスイッチのような役割を果たしている。
さらに、この曲の魅力はSnow Manならではのダイナミックかつ緻密でコミカルなパフォーマンスにある。フォーメーションの美しさ、緩急のあるダンスブレイク、メンバーそれぞれのキャラクターが際立つパート割りなど、楽曲のエネルギーと9人の身体表現が重なることで、“聴く曲”が“体感する曲”へと昇華されている。ミュージックビデオでは9人がカラフルでポップな空間を舞台に躍動感あふれるダンスを披露しているので、この映像でSnow Manならではのダイナミックな身体表現を確認してみよう。
大森元貴「0.2mm」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場27位
この映画では難病に苦しむシングルマザーと、その母親を介護する高校生の息子が描かれている。大森は以前から映画のプロデューサーと交流があり、ある日そのプロデューサーから「ヤングケアラーを題材にした映画を作ろうと思っている」と聞いた際、企画書もまだない段階で自ら主題歌を担当したいと申し出たという。YouTubeで公開されているレコーディング時のビハインド映像では、曲に込めた思いを次のように語っている。
「本当にちょっとだけ風が吹くように、ちょっとだけ(聴いた人の)背中を押せればいい。主人公の気持ちを明確に描こうとか、この映画の主題歌としてふさわしい曲を書こうとか、そういうことではなくて。(映画の中に)吹いているものとは、流れているものとは何かを考えました」「僕がいち視聴者としてこの映画を観たときに、どんなイントロが流れたら温かい感情で映画館を出られるかを考えました」
大森元貴「0.2mm」Recording Behind the Scenes
大森の「ちょっとだけ風が吹くように」という発言は、実際に曲を聴くと深く頷ける。親子の日常を淡々と描きながらも、「愛の本質とは何か」の明確な答えを示すのではなく、景色や会話の中に人の温もりを感じさせる絶妙な温度感が「0.2mm」の魅力なのではないかと思う。2月28日発売のインターナショナルモード誌「Numéro TOKYO」4月号特装版(増刊)で、筆者は大森にインタビューしており、今作の制作秘話にも触れているのであわせてチェックいただきたい。
ルシノ「ループザルーム feat. 初音ミク」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場92位
「リミナルスペース」という言葉をご存知だろうか? 本来は廊下、階段、ロビーなど場所と場所をつなぐ「境界的な(中間の)空間」を指す建築用語だが、現在はインターネットを中心に「どこか見覚えがあるのに、なぜか不安になる“境界的な空間”」という意味で認知されている。
その代表例が「The Backrooms」である。2019年、匿名掲示板4chanに投稿された1枚の画像が、ネット上で大きな話題を呼んだ。そこに写っていたのは、蛍光灯に照らされた黄色い壁紙、湿ったカーペット、人気のないオフィスのような空間。「現実世界の裏側にあるとされる無限に続く異空間」という設定が拡散され、クリーピーパスタ(ネット発の都市伝説)として語られるようになった。そこから多くの派生コンテンツが生み出され、今年5月には「The Backrooms」を元にした、人気映画スタジオA24が製作する映画の公開も控えている。
ルシノの新曲「ループザルーム feat. 初音ミク」には、このリミナルスペース的な要素が色濃く表れている。2025年11月に開催されたボカロPが匿名で楽曲を投稿するイベント「無色透明祭3」に投稿された本作は、その後に海外のホラー好きを中心に支持を集め、ショート動画でも数多く使用されるようになった。
歌詞では“どこまで進んでも同じ場所に戻ってしまう”ような感覚が巧みに描かれている。リセットや迷路、ダルセーニョ(楽譜で「戻ってまた繰り返す」を意味する演奏記号)といった言葉が示すのは、前に進んでいるはずなのに抜け出せない状況だ。「くりかえす」や「ふらくたる」の連呼も、その終わらないループを強く印象付けている。
ドアの先に“自分の背中”を見る場面は、今の自分が過去の延長線上にいることや、変わりたいのに変われないもどかしさを感じさせる描写のように思える。また「鉄臭い酸素 / 届かないSOS」といった表現からは、息苦しいほどの閉塞感が伝わってくる。今作はホラー要素だけでなく、「抜け出せない日常」や「堂々巡りの不安」を音と言葉で見事に表現した楽曲だと言える。ミュージックビデオでも、誰もいない無機質な空間をさまようような映像演出が用いられており、楽曲の持つリミナルスペース的な不安感を視覚的にも強調している。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
バックナンバー
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真貝聡 Satoshi Shinkai @shinkai3
【連載コラム】今週は下記3曲について書きました。
・Snow Man「オドロウゼ!」
・大森元貴「0.2mm」
・ルシノ「ループザルーム feat. 初音ミク」
Snow Manが“聴く曲”を“体感する曲”へ変える / 大森元貴の「風が吹くように」発言の意図とは / 「ループザルーム」が描く、堂々巡りの不安感 https://t.co/JVDZ08YssA