第26回読売演劇大賞の贈賞式が、昨日2月28日に東京・帝国ホテル東京で実施された。
読売演劇大賞は、演劇文化の振興のために1992年に創設された賞。このたび大賞・最優秀演出家賞を受賞したのは、パルコ・プロデュース「チルドレン」、こまつ座「母と暮せば」の演出が評価された
読売演劇大賞では、各賞の最優秀賞を前年受賞した人物が、翌年の同賞プレゼンターを務める。杉村春子賞のプレゼンターの温泉ドラゴン・
「母と暮せば」「スリル・ミー」の演技で杉村春子賞を受賞した松下は、2作を演出した栗山との出会いを「2011年3月12日、東日本大震災の翌日、『スリル・ミー』のオーディションだった」と振り返り、「あれから栗山さんとたくさんの作品を作りました。栗山さんがいなければ今の自分はいない」と栗山に視線を送る。また「井上ひさしさんにもお礼を言いたい」と言う松下は、「もしここに井上さんがいたら聞きたいことがたくさんある」「今後も多くの方に井上さんの作品を届けられるよう務めたい」と笑顔を浮かべた
選考委員特別賞を受賞した「『ザ・空気 ver.2』~誰も書いてはならぬ~」からは、代表して二兎社の
最優秀スタッフ賞の上田は、昨年2018年に参加した「プルートゥ PLUTO」「百年の秘密」「メタルマクベス」を挙げ、それぞれを演出したシディ・ラルビ・シェルカウイ、
女優賞の贈賞では、前回大賞と最優秀女優賞を獲得した
橋爪功から最優秀男優賞のブロンズ像を受け取った岡本は、19歳のときの初舞台「唐版 滝の白糸」で初めて“演劇人”に出会った印象を「普通じゃないというか……変わった方ばかりだと思った(笑)」と明かし、「彼らに触発されて『自分もそうなりたい』と思い、30年経ちました」と感慨深げに話す。さらに岡本は「日本が今平和だからこそ過酷な作品に向き合えるのだと思います。新元号に変わっても、平和の中で舞台を続けられたら」と願いを込めた。
最優秀作品賞のナイロン100℃「百年の秘密」からは、主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が登壇した。KERAは逆立てた髪を示して会場を和ませながら、「今回は1票差で『百年の秘密』が選ばれたと伺っています。それ以外を推された方はすみません。でもしょうがないです、ルールだからね!」と場内を笑わせる。今年19年にナイロン100℃が25周年を迎えることに言及するKERAは、「
優秀演出家賞のプレゼンターは、自身も受賞者である永井が担当。永井は今回演出家賞を受賞した5名中3名が女性であることに触れて「私が芝居を始めた頃、女性の演出家はほとんどいなかった。男性の俳優に『女の指図は受けるのは嫌だ』と言われ、言い返せなかったことを覚えています。でも今回は私を含め、女性が3人。
芸術栄誉賞の木村光一には、選考委員の1人でもあるアナウンサーの中井美穂がインタビューを行った。木村は「“芸術”とか“栄誉”とか嫌な言葉ですね! 早く家に帰ってソバでも食べたい」と茶目っ気たっぷりに述べ、来場者たちの笑いを誘う。さらに若者たちにメッセージを求められると、木村は「若い演劇人が演劇で生きていくためにも、皆さんに観劇していただけたら」とコメントした。
最後は大賞と最優秀演出家賞を受賞した栗山が登場。自身がドイツ・ベルリンを訪れた際のエピソードを語る栗山は、ドイツの劇場の副館長にベルリンの演劇に力がある理由を尋ねると、「ベルリンの壁があった頃は秘密警察の監視の中で生活していたけど、我々は夜には劇場に向かった。なぜなら劇場には真実があるから」と回答されたと言う。続けて栗山は副館長の「誰がシェイクスピアやチェーホフ、モリエールの言葉を書き換えられるだろうか? 劇場とは、あらゆる真実と出会える場所」という言葉を挙げ、「このことを信じながら、もうしばらくこの仕事に携わっていくことをお許しください」と締めくくり、会場は拍手喝采に包まれた。
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第26回読売演劇大賞
大賞・最優秀演出家賞
最優秀作品賞
最優秀男優賞
最優秀女優賞
最優秀スタッフ賞
杉村春子賞
芸術栄誉賞
木村光一
選考委員特別賞
・オフィスコットーネプロデュース「夜、ナク、鳥」
・「岸 リトラル」
・
優秀女優賞
優秀演出家賞
優秀スタッフ賞
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