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上村聡史演出「岸 リトラル」開幕、父子の壮大なロードムービー

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世田谷パブリックシアター「岸 リトラル」より。(撮影:細野晋司)

世田谷パブリックシアター「岸 リトラル」より。(撮影:細野晋司)

「岸 リトラル」が東京・シアタートラムにて昨日2月20日に開幕した。

「岸 リトラル」は、レバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワドの戯曲。2014・17年に同劇場にて上演された「炎 アンサンディ」を含む、“約束の血4部作”の1作目で、今回が日本版初演となる。演出は「炎 アンサンディ」に続き文学座の上村聡史が担当し、出演者には岡本健一亀田佳明栗田桃子小柳友鈴木勝大佐川和正大谷亮介中嶋朋子が名を連ねた。

高い灰色の絶壁に挟まれた閉塞的な空間で、物語は展開する。生き別れになっていた父・イスマイルの死を突然宣告された青年・ウィルフリードは、自分を産んですぐに亡くなった母・ジャンヌの墓に父を埋葬しようとして、母の親族たちから猛反対される。そこでウィルフリードは、父の遺体を埋葬するのにふさわしい場所を求め、内戦の傷跡が残る父の祖国へ向けて旅を始めるのだが……。

生きる意義が見出せず、空想にとらわれがちな青年・ウィルフリードを演じるのは文学座の亀田佳明だ。さまざまな出来事に振り回されつつも、徐々に成長していくウィルフリードを亀田は丁寧に演じている。そんな息子を見守る父・イスマイルには岡本健一。死が受け入れられず、魂となって息子に語りかけ続ける姿は、死してもなお人間臭く愛嬌を感じさせるが、ラストに向かってより大きな存在となり、物語を包み込む。なお岡本は2017年に行われた戯曲リーディング「岸 リトラル」で父と息子の2役を兼ねて演じた。

彼らを軸に、そのほかの俳優たちは、あるときは実在の人物として、またあるときはウィルフリードの空想上の人物として、複数の役を演じ分けている。恋人を殺された女や父親を殺した息子、親の死を目の当たりにした男や親に捨てられた男、そして死んだ人たちの名前を全部記憶しようとする女など、戦争の傷を抱えたさまざまな人たちと出会いながら、ウィルフリードは“岸”を目指すのだった。

虚実入り乱れる複雑な構造だが、ワジディ・ムワワドのストレートで鋭く、熱を帯びたセリフが胸を打つ。湖岸と彼岸を行き来する壮大な父子のロードムービーを、ぜひ目撃してみては。公演は3月11日まで東京・シアタートラムにて行われたのち、3月17日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。

「岸 リトラル」

2018年2月20日(火)~3月11日(日)
東京都 シアタートラム

2018年3月17日(土)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

作:ワジディ・ムワワド
翻訳:藤井慎太郎
演出:上村聡史
出演:岡本健一亀田佳明栗田桃子小柳友鈴木勝大佐川和正大谷亮介中嶋朋子

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