コクーン アクターズ スタジオ第2期生の「アンサンブルデイズ」稽古場レポート / 松尾スズキ・ノゾエ征爾対談

3月19日に、コクーン アクターズ スタジオ第2期生による発表公演、COCOON PRODUCTION 2026 Bunkamura オフィシャルサプライヤースペシャル「アンサンブルデイズ─彼らにも名前はある─」の幕が上がる。コクーン アクターズ スタジオ(以下CAS)はBunkamura シアターコクーン芸術監督の松尾スズキが主任を務める“若手を対象とする演劇人の養成所”。松尾が書き下ろした「アンサンブルデイズ」は、CAS生たちの思い、舞台業界の現状などを織り交ぜたミュージカル。今年、第2期生による公演ではノゾエ征爾が演出を担当する。

ステージナタリーでは2月下旬、「アンサンブルデイズ」稽古場に潜入。蔵田みどりによる歌唱指導、振付稼業 air:manによるダンスレッスンに奮闘する第2期生の様子をレポートする。また特集後半では、かつて講師と生徒の関係にあった松尾とノゾエが、過去から現在までさまざまなエピソードを織り交ぜながら、CASについて、そして「アンサンブルデイズ」について語っている。

取材・文 / 熊井玲撮影 / 藤田亜弓

歌にダンスに奮闘する、第2期生の稽古場レポート

歌唱指導・蔵田みどりが導く「歌を届かせるように!」

2月下旬、「アンサンブルデイズ」初日の3週間前、稽古場を取材した。CAS生たちにとっては稽古場であり、本番のステージとなるシアターコクーンの舞台上にはキーボードが置かれ、歌唱指導の蔵田みどり、音楽を手掛けた杉田未央が見守る中、歌のレッスンが行われていた。「よみがえれ○○」という歌詞が繰り返される後半のナンバーで、蔵田は「全部をベタッと同じように歌わないように、『よみがえれ』の後にくる○○の部分を、それぞれちゃんとイメージしながら歌いたい」と説明する。CAS生たちを鼓舞するように、蔵田の指揮にも力が入るが、あまり劇的な変化はない。

3回目、蔵田は舞台上からパッと降りて客席の中通路まで駆け上がり、「ここに届かせるように!」と言わんばかりにそこで指揮を執り始めた。するとCAS生たちの歌声がそれまでよりも大きく鮮明に届くようになり、蔵田と杉田も「いい! いい!」と笑顔を見せる。もう一度蔵田が同じ場所で指揮を執ると、声はさらに明瞭に。その歌声を聴いて蔵田と杉田はうなずき合い、今度はWキャストの別バージョンで同じシーンを繰り返した。

初演時、脚本と演出の良さはもちろん、音楽や振付の面白さも注目を集めた「アンサンブルデイズ」。杉田が作り出す音楽はメロディアスで美しく、観客として聴く分にはとても心地よいが、非常に繊細な音の連なりでできているので、歌うのは非常に難しそう。低音から急に高音に上がるところで苦戦していたCAS生に「もうちょっと早く、ここまで音を上げてほしい」「今のはちょっと早すぎるかな、でも心意気はいいよ!」と蔵田と杉田はかわるがわる声をかけ、CAS生たちに歌のポイントを叩き込んでいった。

何回か繰り返したのち、最後は綺麗なハーモニーが生まれて、その日の歌稽古は終了。しかし終わるや否や蔵田と杉田の元にCAS生3人が駆け寄り、レッスン中の疑問点を聞いたり、動作と歌唱をどう絡ませたら良いかを相談したりと、そのまますぐには終わらなかった。

細やかでダイナミック、振付稼業 air:manのダンス指導

ほかのCAS生たちは、次のダンスレッスンの準備のため舞台奥へ。そして大きな鏡が貼られた衝立を何枚も稽古場に運び込む。ちょうどそのとき、振付稼業 air:manとノゾエ征爾が稽古場に姿を現した。ダンス稽古の開始時間になると、振付稼業 air:manが「ではまず仰向けで寝ます」と言って、CAS生たちの名前を呼び上げ、それぞれが寝る場所を指示する。さらにカウントに合わせて手脚の振りをつけていった。すぐにその振りを覚えてしまうCAS生がいる反面、手脚がバラバラな動きについていけないCAS生もいる。何度か繰り返して全員がその動きをマスターしたところで、寝た状態から立ち上がる動きも付け加えられた。本来の音楽のスピードで一連の動きをやってみると、立ち上がった瞬間によろけてしまうCAS生たちが多く、苦笑い。さらに何度かその動きを繰り返すと、ようやくスムーズに立ち上がれるようになってきた。

続いて、登場人物の1人である虎井を中心に、みんなが忙しく動き回るシーン。「忙しい忙しい……」という歌詞の通り、歌いながら忙しく動くCAS生たちは、振りの細かさとスピードの速さについていくのがやっとで、踊っている間は真剣な表情、止まった瞬間に破顔する。横並び一列で前進するシーンでは、ゆっくりやるとなんともない動きなのに、本来のテンポで動こうとした瞬間、列がガタガタに崩れてしまう。air:manは「列を意識しよう」と声をかけつつ、まずは全員が全体の動きをマスターするまで何度か同じシーンを繰り返した。

続けて箱馬を使ったダイナミックな動きへ。……が、よく見るとこの稽古場、箱馬が多すぎるのでは? しかも使い込まれた箱馬もあるけれど、まだ木の香りがしそうな、真新しい箱馬も多い……そう思ったちょうどそのとき、ノゾエがスッと隣に来て「ちょいネタバレなので知らずに観たい人はご注意ですが、今回舞台美術は、舞台資材界のアンサンブルリーダー的な箱馬を舞台美術の主役として使おうと思っているんです。ただちょっと足りなかったので、追加で作ってもらいました。追加で……“100個くらい”(笑)」と教えてくれた。

あるシーンでは箱馬を空中でパスして、それをタワー上に積み上げていった。歌、踊り、さらに別の人と連携した動きを行うのはかなり大変な作業で、CAS生たちの表情も真剣さを増す。air:manはCAS生たちから出た意見を取り入れつつ、動きの微調整を繰り返していったが、何度目かでピタッと動きがハマり、「良き良き良き!」とair:manが笑顔を見せ、CAS生たちもパッと明るい表情を見せた。air:manがノゾエに「箱馬いいですね。動きにスピード感が出て、とてもいいです」と笑顔を向けると、ノゾエも笑顔で大きくうなずいた。

ノゾエはシンプルな空間で箱馬を使った今回の演出について、「情報過多になっていくからこそ、“想像”や“余白”にはこだわりたくて、この大きさの劇場でも、簡素でアナログな舞台の豊かさを実践したい……いや、次世代の彼らとだからこそ“成功させないといけない”と思ってます」と言葉に力を込め、「2期生にはこれだけシンプルな空間、シンプルな状況でも上演できた、という自信を持ってほしいんですよね」と、はっきりと落ち着いた口調で語った。

そんなノゾエの思いに後押しされて、CAS第2期生の「アンブルデイズ」への挑戦は続く。