キニナル君が行く!

キニナル君が行く! 第5回 [バックナンバー]

レコード会社のA&Rってどんな仕事?

Eveやマカロニえんぴつを担当する松崎崇さんに突撃取材!

24

384

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 64 164
  • 156 シェア

「なんとなく売れてる」は仕事じゃない

──今年1月にメジャーデビューしたammoは大阪発のバンドですよね。どうやってこのバンドを見つけたんですか?

ammoはTHE NINTH APOLLOのOrange Owl Recordsという大阪のロックレーベルのアーティストなんだけど、THE NINTH APOLLOにはいいバンドがたくさんいるので、常に新作をチェックしていて。そんな中、ammoの「なんでもない」と「不気味ちゃん」をYouTubeで聴いて、曲の歌詞と世界観に衝撃を受けたんだ。普段からYouTube、Instagram、TikTokで情報収集はしていて、その後実際にライブに足を運んでいるよ。

ammo - なんでもない - Music Video

ammo「不気味ちゃん」

──やっぱり契約する前にライブには足を運びますよね?

もちろん! ライブを観ないとアーティストのキャラクターややりたいことはわからないし、自分なりの好みもあるからね。ammoはライブの内容はもちろん、自分との相性もよさそうだったので声をかけさせてもらったよ。

──ammoはもともとCDでのリリースにこだわっていたバンドですけど、メジャー1st EPはCDのみの「re:想-EP」と配信限定の「re:奏-EP」を同時リリースするという面白い形でしたよね。

やっぱり普通にやるのは面白くないなと思って。ammoだけのオリジナリティのあるリリースを考えて、マネジメント、メンバーと話し合って決めたよ。

──マカロニえんぴつもメジャー最初の作品はEPでしたけど、シングルやアルバムではなく、EPという形態にした狙いはあるんですか?(参考記事:CDや配信作品で使われる「EP」ってなに?

EPの狙いを質問するキニナル君。

EPの狙いを質問するキニナル君。

僕はEPというサイズ感が好きなんだ。作品コンセプトも考えられるし、アルバムよりコンパクトだから入口も広いイメージがあって。

──ammoはライブで「Zeppをゴールにはしない!」と宣言していて、これからどんどん飛躍していきそうですけど、アーティストの人気を計る指標として松崎さんはどんな数字を重視していますか?

うーん、それは本当に難しくて。CDが売れているアーティストもいればサブスクで収益が上がっているアーティストもいるし、ライブがストロングポイントの人もいるからね。それぞれ違うので一概に「この数字が大事」とは言えないんだけど、僕の場合はMVはチェックするようにしてるかな。再生回数だけじゃなくて高評価の数とかコメントの数とか、登録者数がどういう動き方で伸びているのかも。……でもやっぱり、全部かもしれないなあ。MVに伴ってSNSのフォロワー数も全部チェックしているので。僕、具体的な指標もなく「なんとなく売れている」とか「なんとなく盛り上がった」っていうのは仕事じゃないと思っていて。A&Rとしてそこの具体性は持っておかないといけないと思ってるから、常にトータルの数字を気にしているよ。

A&Rに必要な資質とやりがい

──松崎さんが担当する4組についてお話を聞きましたけど、アーティストごとにやることが違って、A&Rの仕事ってひと言で説明できないなと思いました……!

まさに「A&Rの仕事はこれ」っていう明確なものがないんだよね(笑)。でも僕は、A&Rという職業は再現性のないところに仕事の面白さがあると思っていて。アーティストによってやることがカメレオンみたいに変わるし、同じアーティストでもタイミングによっても変わってくる。常にやったことないことに挑戦できるのがA&Rの醍醐味なんじゃないかな。

──幅広い業務がある中で、A&Rに必要な資質ってなんですか? ……なんか就活生の質問みたいになっちゃった(笑)。

大学生なので思わず就活生のような質問をするキニナル君。

大学生なので思わず就活生のような質問をするキニナル君。

ははは。自分の時間をアーティストに全部割けるかどうかと、コミュニケーション能力。この2つは絶対に必要だと思う。まず時間に関して、僕らの仕事って定時が決まっているサラリーマンとは違って、土日のライブに同行することもあれば遅くまでレコーディングに付き合うこともあるし、時には深夜にアーティストから電話がかかって来て相談役になることもある。残業という概念でそれらに向き合うと本当につらい仕事だと思う。だけど自分が大好きなアーティストを担当できていたらそれは全然苦にならないよね。アーティストに割く時間が長ければ長いほどアーティストへの理解や関係値が深まるから、ここに全振りできない人は、できる人にはどうやっても勝てない。まずこれがこの仕事に向いているか向いてないかの基準になると思う。

──仕事を仕事として捉えないということですね。昔のナタリーのインタビューで、サイバーエージェントの藤田晋社長も「自分が楽しいことばかりやってる」と言ってました!

うん、仕事が趣味の延長だと思ってる。そしてコミュニケーション能力だけはスキルとしてめちゃくちゃ重要。「締切は●月●日です」って業務的にアーティストにメールするだけなら誰でもできるよね? 僕らの仕事は言われたことを伝えるだけではダメで、彼ら彼女らにとってどう伝えるのがベストかを考えなきゃいけない。それがコミュニケーション能力。時にはふざけて場がなごんだタイミングで確認したほうが気持ちよくできることもあれば、時には締切日とわかっていてもあえて催促せずに代わりに自分が謝って、次の日にスッキリした状態で伝えたほうがいい場合もある。自分なりのコミュニケーションでアーティストと接することがすごく大事。僕も全然あるほうじゃないと思っていて、毎回試行錯誤しているよ。

──松崎さんがA&Rをやっていてよかったと思うのはどんなときですか?

たくさんあるよ。リリース前の音源を自分だけずっと聴けるのはうれしいし、この仕事の醍醐味だと思う。それで、「この曲は絶対大ヒットする」って想像する時間がめちゃくちゃ楽しい(笑)。やりがいを感じるのは実際にそれが売れたとき。「これはすごいことになる」と思っていた曲が結果として出ると喜びが何倍にも膨れ上がるんだ。もちろん、そう簡単にはヒットは出ないけどね。やっぱり、アーティストからデモが届いたときが一番うれしいなあ。

──マンガ家から原稿が届いたときの編集者みたいですね(笑)。

そうそう(笑)。たまたま自分の誕生日にアーティストからデモ音源が送られてきたことがあって、そのときは最高の誕生日プレゼントだなって勝手に思ったよ。ありがとう!みたいな(笑)。

──うわーそれは最高のプレゼントですね! 今日はありがとうございました!

松崎崇

トイズファクトリー内レーベルのfactorySおよびVIA主宰。Eve、マカロニえんぴつ、りりあ。、ammoのA&Rを担当している。またbayfmで放送中の「78 musi-curate」では水曜日26:00台のDJを務める。

マツザキタカシ (@__electrock__) | Twitter 
factoryS (@factoryS_x) / X 
VIA (@via_label) | Twitter 

バックナンバー

この記事の画像・動画(全11件)

読者の反応

VIA @via_label

【#VIAレーベル】

factoryS/ VIA主催
松崎崇(@__electrock__)のインタビューが
音楽ナタリー (@natalie_mu ) にて公開されました!

音楽業界の仕事A&Rとは...!?
ぜひご覧ください!
https://t.co/ASA6GFUAIe

コメントを読む(24件)

Eveのほかの記事

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 Eve / マカロニえんぴつ / りりあ。 / ammo の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。