藤田晋

サイバーエージェント藤田晋が考える配信ライブの可能性

ABEMA PPV ONLINE LIVEでオンラインライブのある日常を作っていく

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今一番重要視しているのは海外

──配信ライブをやっても、アーティストによっては集客が難しいという話もよく聞きます。

配信ライブで売れているアーティストというのは、BTSとかそうですけど、普段チケットが取れないアーティストなんですよね。サザンオールスターズの配信ライブがあそこまで売れたのもそう(サザンオールスターズ、22曲熱演に込めた感謝とエール!横アリからライブ配信「暑い夏を乗り越えよう」 )。正直、普段の集客が弱いアーティストが配信ライブをやっても難しいとは思います。

──ABEMAがPPVで取り扱うライブの基準についてはどうお考えでしょうか?

プラットフォームによっては、自由にどんどん使ってくださいというスタンスのサービスもあると思いますが、我々はそれぞれのライブにおいてきっちり宣伝をしたりマーケティング活動をしたりするので、そういう意味では規模が大きいものが中心にはなります。取り扱い数を増やすよりは、ドームクラス、アリーナクラスの公演を中心にしていかざるを得ない。個人的に好きなのはヒップホップなので本当はもっと増やしたいんですけど、事業としては当然そうなってしまいます。

──ABEMAは全世界からの視聴に対応しているのも強みですか?

いえ、そこはまだ弱いと思っていて、今一番重要視している部分です。海外からの視聴や課金を強くしないといけないなと。先ほど7~9月で25億円売り上げたという話をしましたけど、報道によるとBTSは単独で35億円売り上げたそうです。それは世界を相手にしているからであって、当然世界にマーケットを求めたほうが効率がいい。そのために海外の人も見つけやすいし見やすいサービスにしておかないといけないので、そこを一番強化しているところです。

──世界のマーケットを意識しているLDHとのタッグは強力な武器になりそうですね。

当然そうです。LDHと非常に強固な取り組みをしているので、どこの国からのリーチが多いのかをリサーチして、対応を進めています。

──課金してもらうには、LDHに限らずいかに面白いコンテンツを用意できるかが重要になってくると思いますが、魅力的なコンテンツを作るために取り組まれていることは?

リアルな現場でお金を払うものは当然オンラインでも課金されやすいですよね。ライブは当然お金を払って観に行くもので、逆にバラエティ番組はタダで観られるということにユーザーが慣れているので課金してもらうことは難しい。そう考えていくとマーケットが見えてきます。今、いろんな分野でPPVに耐えうるコンテンツの開発を進めているんですが、実はRTDリーグという僕が昔やっていた麻雀リーグを復活させてほしいという話もあって。

──それはぜひ観たいです。

「やるなら社長がプレイヤーとして参加するのは必須です」と言われて、それはキツイなと(笑)。麻雀に向き合うと仕事に支障をきたすんですよ。リーグに参加するからには真剣に取り組まなければいけないので。RTDリーグは根強い人気コンテンツなので、月額制のABEMAプレミアムのプランにお金を払って加入してでも観たいと思う人がいる。

──そうやってお金を払ってでも観たいと思わせるコンテンツを作る秘訣というのはあるんでしょうか?

僕にとって麻雀や将棋がそうですけど、自分が得意な分野のコンテンツや企画作りをすると強いんですよね。もちろんほかの社員であっても、格闘技に精通している人は格闘技コンテンツを成功させます。ちゃんと“中の人”になってないと、オリジナルを作ってもうまくいかないですよね。

──勘どころがわかるわけですね。

ABEMAはアニメや声優のジャンルにおいても強いですが、中のメンバーがどっぷり浸かって企画、制作、編成しているので。にわかでは通用しないということですね。

藤田晋

藤田晋

厳しいときは耐えるのみ

──新型コロナウイルスの影響でほかの業界同様に音楽業界も大打撃を受けました。藤田社長も、過去にはITバブルの崩壊など、数々の逆境をくぐり抜けてきたと思いますが、どういうマインドで乗り越えてきたのでしょうか?

よく経営者としてのインタビューで同じことを聞かれますが、「耐えてました」としか答えていません。でもそれが真実なんです。だいたい悪い時期というのはそんなに長く続かないし、我々で言うとITバブルの崩壊があってもインターネット産業が伸びることはわかっていた。音楽産業も、形は変わるかもしれないけどなくならないのはわかってますよね。なんとか乗り切れば、今度はプレイヤーが減って残存者益が発生するので、苦しいときはひたすら耐えるのみですね。

──その「耐える」というのがなかなか難しい気もしますが……。

厳しいときは現実逃避できるものにハマって忘れるのが一番いいんじゃないですかね。時間をやり過ごすことが耐えることなので、熱中できる何かをしているのが一番よくて、僕のオススメは麻雀です。頭の中が空っぽになってひたすら時間を消費できる。ほかのことを考える余裕がないくらい集中するので。

──麻雀をしていると、気が付いたら8時間くらい平気で経ってますからね。

そういうことなんですよ。

──ちなみに、逆境のときに音楽が果たした役割はありましたか?

僕はヒップホップが好きなので、「今にみてろ」みたいな曲を聴くことで救われたというか、昇華されていた部分はありますね。RHYMESTERとかキングギドラとか、彼らがまだ何者でもなかったときに反骨心あふれる曲を作っていて、そういう曲を聴きながら僕も会社を大きくしてきました。節目節目でいい曲にハマっていますけど、最近は8月に出たAK-69の「LIVE : live」をよく聴いています。

自分が楽しいことばかりやっている

──最後に、ABEMAおよびABEMA PPV ONLINE LIVEの今後の展望をお聞かせください。

みんな生のライブに飢えていると思うんですが、僕はコロナが収束してもオンラインライブはなくならないと思っています。ライブというのは当然現場で観たほうがいいに決まってる。だけど、チケットが手に入らなかったり、地方に住んでいて会場に行けなかったりする人にとってオンラインライブはとても価値があるので、併存すべきだと思うんですよね。オンラインライブもある日常を作っていくというのが、我々がこれからやらなければいけないことだと思っています。

──サイバーエージェントとしては、PPVも含めてABEMAに引き続き力を入れていくという認識でよろしいですか?

もちろんです。まだ発表してないものもけっこうありますけど、11、12月のラインナップもかなりすごいですよ。

──一方で、去年プロサッカーチームのFC町田ゼルビアを買収してクラブ経営に乗り出し、大きな話題となりました。MリーグもABEMAの1コンテンツにとどまらない広がりを見せています。そういうものを同時に手がける経営者としての原動力みたいなものはどこから生まれてくるのでしょうか?

でも三木谷(浩史)さんは東北楽天ゴールデンイーグルスのオーナーで、ヴィッセル神戸もやり、携帯事業を立ち上げ、医療分野ではがんの治療薬の承認を厚生労働省から得ている。僕は、もちろんビジネスとして成り立たせることが大前提ですけど、自分が楽しいことばかりやっていると思います。Mリーグのチェアマンをやり、町田ゼルビアのオーナーで、ABEMAを立ち上げていたらそりゃ面白いですよね。

藤田晋

藤田晋

記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

藤田晋

サイバーエージェント代表取締役社長。株式会社インテリジェンスでの勤務を経て1998年に起業し、2年後の2000年に東証マザーズに上場する。直後のITバブル崩壊を乗り越え、2014年に東証一部上場を果たす。2016年にテレビ&ビデオエンターテインメントABEMA(スタート時:AbemaTV)を開始。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」のチェアマン、FC町田ゼルビアオーナーの顔も持つ。「渋谷ではたらく社長の告白」「藤田晋の仕事学」「仕事が麻雀で麻雀が仕事」など著書多数。

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Yusuke Mitsumoto 光本勇介 @Yusuke_Tokyo

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