7月14日にテレビ東京系ほかでテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」第2クールの放送がスタートした。鈴木祐斗による同名マンガを原作とした「SAKAMOTO DAYS」は、元伝説の殺し屋・坂本太郎が、愛する家族との平和な日常を守るため、迫りくる刺客たちと戦うアクションコメディ。第2クールでは、坂本が営む坂本商店の面々と、「日本殺し屋連盟」直属の特務部隊“ORDER”、そして謎の人物X(スラー)が放つ脱獄死刑囚による三つ巴のバトルがシリアスに描かれる。
音楽ナタリーでは第2クールの放送開始を記念し、オープニングテーマ「Method」を書き下ろしたKroi、エンディングテーマ「ダンデライオン」を書き下ろしたgo!go!vanillasにそれぞれインタビュー。2組は「SAKAMOTO DAYS」から何を受け取り、どう楽曲に反映したのか? 作品の魅力や、主題歌の制作秘話について語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / YOSHIHITO KOBA
OPテーマ担当
Kroi インタビュー
普通に読者として楽しんでいて
──まずは「SAKAMOTO DAYS」の印象から聞かせてください。
関将典(B) めちゃくちゃ面白いな、っていうのが率直な感想ですね。オープニング曲のお話をいただいてからみんなそれぞれ単行本を買って読んだんですけど、それ以来顔を合わせるたびに「お前どこまで読んだ?」という会話があったりして。スタッフも含めて「あそこヤバかったよね」「ちょっとまだそこ読んでないから話さないで!」みたいな、学校の教室のようなやりとりが行われていました(笑)。
内田怜央(Vo) 心地いい王道感がありながら奇抜な設定もありますし、一度読み始めたら止められなくなる作品でしたね。今回のお話自体は1年半ぐらい前にいただいたんですけど、その時点で出ていた10数巻あたりまでを1日で一気に読んじゃったくらい。
長谷部悠生(G) 俺は連載が始まった当初にちょっと読んでたんで、面白い作品だというのはもともと知っていました。個人的に、大佛がすごく好きなんですよ。最初の戦闘シーン、ラボで鹿島の部下を瞬殺するところとかめっちゃ好きです。
関 俺は圧倒的に篁さんが好き。ああいう、“謎が多いけどめちゃくちゃ最強”みたいなキャラクターに惹かれるんですよ。
千葉大樹(Key) 全般的に戦闘シーンの描写がすごいですよね。電車で戦うシーンとか、もっとゴチャゴチャした画になりそうなのに、ちゃんと何が起こっているかわかるじゃないですか。
内田 戦う場所がオモロいよね。
千葉 あとは勢羽・兄の透明スーツとか、背景をちょっと歪ませるみたいな描き方に「へえー!」と思って。とにかく絵のクオリティがすげえなって印象ですね。
益田英知(Dr) 神々廻のネイルハンマーとか、「それで戦うんだ?」みたいな意外性もいいっすよね。もちろん坂本もそうだけど、強いヤツがめっちゃかっけえ武器を使うかと言ったらそうとも限らないっていう。
関 そういうわけで、最初は「どういうアニメなんだろう?」というところから始まったけど、気付いたら仕事のために読むというより普通に読者として楽しんでいて。徐々に「この作品のオープニングテーマをやれるんだ!」と気持ちが盛り上がっていきました。
“2クール目のオープニング”にしたかった
──作品のどんなところにインスピレーションを受けて楽曲制作を進めていきましたか?
内田 単に“「SAKAMOTO DAYS」のオープニング”というだけじゃなくて、明確に“2クール目のオープニング”にしたかったんですよ。なのでこのクールでアニメ化される範囲を徹底的に読み込んで、自分たちのマインドと重なる部分を見つけて書いていくという進め方をしました。具体的には、シンが覚醒するシーンですね。俺、個人的にはここが2クール目最大の見どころじゃないかと思っていて、アニメで観られる日をめっちゃ楽しみにしてるんですけど。
──そのシーンに、どんなふうに共感したんでしょう?
内田 例えば、ある一定期間曲を作らずにいると、作り方を忘れちゃったりするんですよ。「どうやってやんだっけ?」みたいな。で、悪戦苦闘しながら眠れない日々を過ごしていくと、極限状態の中で急に制作に入り込める瞬間があって、そこから一気に1曲できあがっちゃったりするんです。その覚醒の感覚を味わえるのが物作りの1つの醍醐味でもあるんで、そういうところを共通点として書きました。
──アニメの制作サイドからのオーダーは何かあったんですか?
内田 何もなかった気がしますね。なんかあったっけ?
関 「2クール目は原作のこのセクションがアニメ化されます」というのをまず伝えられて、1クール目よりも若干シリアス度合いが高まってアクションシーンも多くなると。「それをもとにお願いします」ぐらいのことしか言われなかったかな。
内田 かなり委ねていただきましたね。作品自体が自分たちのクリエーションと相性がよかったんじゃないかと思っていて、オファーを受けた段階で「自由にKroiっぽい楽曲が書けそうだな」という感触がありました。実際、3曲くらいデモを作ったんですけど、どれも「SAKAMOTO DAYS」のオープニングとして成立しそうな感じで書けましたから。中でも作品の軽快なアクション感にマッチしているということで「Method」を選びました。
関 で、その怜央のデモをもとに各自アレンジを詰めていくんですけど、この「Method」の制作タイミングあたりから、レコーディングの前に一旦全員でスタジオに入って合わせるってことをやり始めたんですよ。それまでは各々で音色やフレーズを固めて録音に臨んでいて、音源としては満足のいくカッコいいものになっていても、ライブで演奏したときに「思っていたほどの迫力が出ない」と感じることも多くて。なので、まずは5人で音を出したときの感覚を共有したうえでレコーディングに取り組もうと。
ロックになりすぎないように
──メンバーそれぞれの具体的なアプローチについても伺いたいんですけど、今回はオルガンがすごく前に出てくるアレンジですよね。パッと聴くと「オルガンの曲」という印象を覚えるくらい。
千葉 ああ、確かに。怜央のデモにオルガンががっつり入ってたんで、オルガンを中心に弾いきました。
──キーボーディストとしては演奏するのが楽しそうな曲だなとも感じたんですが……。
千葉 真剣そのものですね。
関・長谷部 (笑)。
千葉 仕事ですから。
──なるほど(笑)。「楽しそう」で言うとドラムも同様で、ドラマーとしてちょうど一番気持ちいいリズム感、テンポ感なんじゃないかなと。
益田 そうですね。ただ、今回はテーマとして「ロックではなくファンクをやろう」というのがあったんで、あんまり盛り上がりすぎないように心がけました。
長谷部 ギターも「なるべくロックになりすぎない」というのは意識しています。BPM的にもロックになりやすい曲ではあるんで、音作りも含めてなるべくファンキーに、というところは気を付けましたね。と同時に、アニメのオープニング曲としてのインパクトも大事になってくるんで、ミクスチャーロック感のようなものは絶対に必要。その塩梅にはかなり気を使いました。
関 サビは滑らかにコードが移り変わっていくんですけど、それ以外の部分はわりとループっぽいというか、ベースは一定のリズムを刻み続けてドラムと一緒に軸を作っていく感じがあって。そのメリハリも含めて、俺もこの曲は弾いていてすごく楽しいです。
内田 Aメロのベースラインにはトライトーンっていう、ちょっと不安定な音使いのフレーズを入れているんですね。それが「SAKAMOTO DAYS」のダークな側面、殺し屋業界の不穏さを表現するものにちゃんとなっているなと思います。「ロックになりすぎないように」というのはこの曲をこの曲たらしめるうえですごく重要なところで、ファンクビートの軽快なハネ感が坂本のサラッとした戦い方に通ずると思っていて。それでいてバトルシーンの熱さを表すためにロックのプッシュ感も欲しかったんで、ロックを消しすぎてもいけないというか……要は、ロックっぽいファンクなんですよ。
──重そうな体で軽やかに戦う坂本のイメージにも合致しますね。
内田 うん。なんかそういう雰囲気が出せたんで、めっちゃいいなと。ちゃんと「SAKAMOTO DAYS」の世界観にがっつり寄せられた手応えはありますね。
──とはいえ、無理に寄せた感じはまったくないですよね。普通にKroiの曲をやったら自然とぴったりな曲になっちゃった感があるというか。
関 それはそうかも。
内田 相性がいいんですねえ。
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サビは元気に歌いましょう