Suspended 4th、名古屋・栄の路上ライブに密着!古民家スタジオ紹介も

Suspended 4thが7月23日に2ndシングル「Advance」をリリースした。

昨年11月の「STORMED」、今年4月の「SLEEPLESS」に続く新作で、昨年12月に吉村建太郎(Dr)を正式メンバーに迎えたサスフォーの“過渡期”が詰まっている。DISC 2には名古屋・栄で行われた路上ライブの音源も収録。スタジオ音源&ライブ音源で彼らの“今”を閉じ込めたこの新作は、リスナーの魂を揺さぶるようなエネルギーに満ちた1枚となっている。

本特集では、メンバー鷲山和希(Vo, G)が経営するレコーディングスタジオ・ALUM SKY STUDIO訪問レポートおよびフィールドレコーディングが行われた当日の路上ライブの模様をお届けする。

取材・文・スタジオ撮影 / 田中和宏ライブ撮影 / イノコシゼンタ

ロマンと実用性が詰まったALUM SKY STUDIO

ALUM SKY STUDIOは愛知県名古屋市にあるレコーディング、プリプロダクション、ゲネプロスタジオ。鷲山が発起人となり、仲間たちとともにクラウドファンディングにて資金を調達し、2023年に完成させた。スタジオの通称は“村”で、Suspended 4thの作品を制作するのみならず、レコーディング、ミキシング、ライブミックスなどの依頼も広く受け付けている。

機材の多くは鷲山がスタジオ構想を練る前から買い集めていたもので、オーディオインターフェース、AD / DAコンバーター(アナログ↔デジタルを変換する機器)、マスタークロックジェネレーター(複数のデジタル機器を同期させるための機器)、モニター、マイクプリアンプ、ヘッドアンプ、ミキサー、マイクなどプロユースの機器が充実している。

1階にはスタジオとなる防音ルーム、ロビーと機材保管庫を兼ねた通称“チルルーム”、そして喫煙部屋などがある。やや狭めながらも居心地のよい喫煙部屋には大型のテレビが置かれ、メンバーやスタッフたちがゲームをしたり、YouTubeを観たり、雑談をしたりと常ににぎやか。機材はスタジオを利用するサスフォー以外のバンドのものも保管されている。この古民家はもともと呉服屋だったらしく、アンプヘッドなどが置かれている棚は備え付けのものをそのまま流用しているそうだ。また大きな川沿いに面した立地のため、鷲山は川へ釣りをしに行くこともあるという。

古めかしい玄関をくぐり、2階に上がるとまず鷲山の作業部屋があり、ギターやパソコン、スピーカーなどが並ぶ。その横には広めのコントロールルームがあり、この日はエンジニアの細川尚弥(KADOMACHI)らが作業を行っていた。各部屋は古民家の和室を改装したもので、コントロールルームの後方に置かれたソファとテーブルではエンジニアたちが会話を交わしていた。壁はもともと砂壁だったため漆喰を塗ったそうだが、古い建物のため、壁や屋根の断熱効果は望めず、2階は特に室内の寒暖差が激しいという。

建物の中央に位置する1階の防音ルームは、ALUM SKY STUDIOにおいて唯一エアコンがしっかりと効いている部屋で、鷲山いわく「夏はここが避暑地になる」とのこと。生ドラムをフルパワーで叩いても外に漏れ出る音はほんのわずか。逆にスタジオ内が車の通る音など環境ノイズにさらされる心配もほとんどない。

防音ルームの内装にも鷲山のこだわりが。天井には溝がありつつ勾配も付いており、壁には等間隔で縦にスリットが入っている。室内の壁や天井が平行、平面だと音が反復反射を繰り返すため、防音室は学校の音楽室と同様の波型の天井や壁を採用することが多い。しかし、この防音ルームの壁にあるスリットの多さは珍しく、スリットの下部が低音を、上部が高音を効率よく吸収することで、余計な反響を防ぎつつ、音が室内で均一に回るようになっている。反響を防ぐことはレコーディングブースにおいて必須要素だが、吸音しすぎると音が回らなくなる。このスタジオはアンプで爆音を鳴らさずとも各メンバーの演奏がしっかりと聴き取れる、“適材適所”な設計になっている。

1階の防音ルームと2階のコントロールルームは、それぞれ壁に多数の端子のジャックがあり、LANケーブルやスピーカーケーブルなどがつながっている。また防音ルームにあるカメラの映像を2階のコントロールルームに表示することもできる。この物件は賃貸だが、大家によるとリフォームに制限がないため、普通の賃貸物件では難しい壁の裏側への配線なども問題なくできているそうだ。

まったりと準備してゆったりと現場へ

路上ライブは名古屋市の栄エリアで20:00に開始予定。夕方の時点でまだセットリストがメンバーに共有されておらず、澤田から「セットリストどうするの」と鷲山に質問があったが、鷲山は「普段は(路上ライブエリア付近の)駐車場に着いてから考えてるからなあ」とつぶやいた。

18:30頃、スタジオを出る前にやっと軽い打ち合わせのような会話が。澤田誠也(G)が「最近、途中で演奏を止められるから今日はどうなるかなあ」と若干の懸念をつぶやくも、吉村が「まあ、なんとかしましょう」と返す。そんな中、鷲山は「何が起きても全部面白いんですよ」と、路上ライブへの心持ちを教えてくれた。メンバーのやりとりからは、“ゆるさ”だけでなく“落ち着き”も感じられた。このメンタルは路上ライブをするうえで重要な要素だと、のちに気付くことになる。

この日はライブの模様をレコーディングするため、メンバーはエンジニアらスタッフとともに名古屋市内の栄エリアへと向かった。そんな中、澤田はほかのメンバーとは別に自身の車で現場に向かい、途中ガソリンスタンドで発電機に給油する。この発電機がストリートでのサスフォーサウンドを支えているのだ。

現場では機材車から次々にドラムセット、ギターアンプ、ベースアンプなどが運び出され、あっという間にセッティングが進められていく。サスフォーの路上ライブはゲリラ的に行われることが多い。そのため名古屋近郊にいる人でなければ目撃することは難しい。セッティングが始まったそばから周辺には人が集まっていた。

バンドの横にはライブレコーディングのためのパソコンやミキサーが置かれた。セッティングの合間には、現場でメンバーと合流した福田裕務(B)がファンクラブ向けの生配信を行い、メンバーやスタッフを巻き込みながらリスナーとコミュニケーションを取っていた。