ももいろクローバーZのニューシングル「Event Horizon」がリリースされた。
表題曲「Event Horizon」は、アーケードカードゲーム「機動戦士ガンダム アーセナルベース FORSQUAD」の主題歌で、プレイヤーの興奮や熱狂を加速させるようなダンサブルなロックチューン。数多くのアニソンを手がける藤林聖子が作詞、harukaと齋藤大輝が作曲、DJ Mass MAD Izm* & B36(LEONAIR)が編曲を担当した。
このほかシングルには、Spotifyが選ぶ注目の次世代アーティスト「RADAR: Early Noise 2025」に選出された音楽ユニット・PAS TASTA提供の「Cosmic Commotion」、ももクロの所属レーベル・EVIL LINE RECORDSの兄弟レーベルにあたるHEROIC LINEに所属する小林私の提供曲「可視光線」も収録。どの楽曲も結成18年目のももクロが歌うことで特別な意味や説得力が生まれている。音楽ナタリーではシングルのリリースに合わせてももクロの4人にインタビューし、この3曲に対する思いを語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一
「Event Horizon」は“ももクロらしい”曲
──「Event Horizon」は、ももクロにとって昨年8月発表の「レナセールセレナーデ」以来およそ1年ぶりのCDシングルです。表題曲の「Event Horizon」を最初に聴いたとき、どんな印象を受けましたか?
佐々木彩夏 正直、私たちはガンダムのドンピシャ世代ではなくて、スタッフさんなど周りの人から聞いた情報から作品に対するイメージを持っていたんですけど、そんな私たちでもガンダムが動いているところがこの曲から想像できました。すごくカッコよくて、宇宙が広がっていくような壮大な曲だなって。
高城れに 歌詞の中に壮大なワードがたくさん入っていて、聴けば聴くほど、歌えば歌うほどその意味に対していろんな捉え方ができるなと感じました。何よりキャッチーで覚えやすい曲だな、という印象が一番大きかったです。
玉井詩織 私も、すごく疾走感にあふれていて、壮大でカッコいい曲だなという印象を持ちました。英語のフレーズが多いから歌うのが難しそうと最初は思ったんですけど、歌っていくうちに歌詞が頭の中にスッと入ってきました。ガンダムは宇宙を題材にしたお話なので、自分たちの日常からかけ離れた世界という印象がありますが、この曲では宇宙のことを私たちの身近なことにたとえたりしていて。会えなくなってしまった大事な人や、過去に応援してくれていた人のことを宇宙という題材を通して描いているところもあるし、私たちの今までの活動と重なる部分もあります。
百田夏菜子 実はこの曲、独特なレコーディングの仕方で歌を録ったんです。まずゲームで使われる1番の音源が送られてきて、そのパートからレコーディングをしました。なので、最初の時点では2番以降の情報が何もなくて、「この先どんな展開になるんだろう?」とワクワクしましたし、1つの曲のレコーディングを2回やったのがいつもと違って面白かったです。
──僕はこの曲を最初に聴いた瞬間、とてもももクロらしい曲だなと思ったんですよ。こういったデジタル色の強いロックナンバーは過去にも挑戦していましたが、今のももクロがこのタイプの曲を歌うとこういう表現になるのかと、すごくワクワクしました。
百田 私も、最初に聴いた瞬間に自分たちらしいなと思いました。最近は「新しいももクロを表現できる曲」や「今までにないタイプの曲」をいただく機会が増えているんですけど、「Event Horizon」はどこかももクロっぽいうえに、懐かしさも感じました。そういう曲を今の私たちが歌うことにも意味があると思うので、この曲をお届けできることがうれしいです。
──全体的にキャッチーなメロディながら2番以降はサビのメロがちょっと違う展開になるなど、かなりトリッキーな構成ですよね。
玉井 そこも自分たちらしいなと思ったポイントで。思った通りにいかない感じやいろんなメロディがあちこちから入ってくる展開は、初期からヒャダインさんの楽曲などで相当に鍛え上げられましたから(笑)。
佐々木 同じメロディが二度出てこないところとかね(笑)。
玉井 そう。もったいないような、ぜいたくなような(笑)。「Event Horizon」はメロディが変化していく感じが、宇宙の中で彗星が流れていくイメージと合っているなと思いました。
ももクロとガンダム
──サビに出てくる「終わらない物語」や「輝かしい物語」における、「物語」のアクセントの付け方をはじめ、いろんなフックが用意されていて、そこもももクロらしい味付けだなと思いました。
百田 印象的なフレーズがいっぱいありますよね。私たちは初期から玉置成実さんの「Believe」(「機動戦士ガンダムSEED」オープニングテーマ)をカバーさせていただいているので、同じくガンダム関連のテーマソングである「Event Horizon」は曲調的にも自分たちになじむ感じがします。
玉井 「Believe」の存在は大きいよね。初期からずっと歌ってきたから。マネージャーさんがガンダム好きということもあり、17年間の活動の中でガンダムの要素をたくさん刷り込まれてきました。
百田 プロレスネタと一緒で、マネージャーさんから自然と英才教育されてきたのは大きいね(笑)。お台場に実物大のガンダムが設置されたとき、「今からガンダム見に行くぞ!」と、仕事終わりに連れていってもらいました。
高城 多少偏ってはいるんですけど、ガンダムの情報はたくさん蓄積されています(笑)。
佐々木 今回ガンダム関連のお仕事をいただけて、親孝行ならぬマネージャー孝行みたいな気持ちになりました(笑)。
──シングルの初回限定盤のジャケットにはももクロのカラーリングをイメージしたZガンダム、封入特典のイラストやアクリルスタンドには機動戦士ガンダムの世界観をイメージして描き下ろされた4人のイラストが描かれていますし、今作はガンダム尽くしですね。
高城 ガンダムファンの方々に怒られないか心配になっちゃいますけど、ちゃんと受け入れてもらえるようにがんばります。
玉井 今までも、タイアップのたびに数々の有名作品にちなんだ私たちのイラストを描いてもらってきました。これはアニメ作品に関わらせてもらう特権ですよね。
百田 アニメの主題歌を歌わせてもらうと、「あ、ももクロだ」ではなく「主題歌を歌っている人たちだ」という認識のされ方をすることが多くて。それはすごくぜいたくなことだなと思います。
──「Event Horizon」はライブでめちゃくちゃ盛り上がりそうですね。
高城 はい。ダンスもすごくカッコいいし、複雑で細かいフォーメーションも盛り込まれています。
玉井 「Believe」を彷彿させるような振付や、ガンダムをイメージした動きも入っています。
百田 今回は、歌いながらずっと動いているような、エネルギッシュな振付になっています。
高城 両手を使ったダイナミックな振付も多いよね。この曲もライブで何度も歌っていくうちにどんどん成長していくと思うし、モノノフ(ももクロファンの呼称)さんがどんなコールを入れてくるのか、今から楽しみです。
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繰り返され、続いていくことの大切さ