THE RAMPAGEのボーカル・吉野北人がHOKUTO名義で今年5月にソロデビュー。7月にはmeiyoが提供したデビュー曲「オパッキャマラド!」も収録されたEP「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」を配信リリースした。タイトルに冠された「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」は、「せっかく自分という人間で生まれてきたんだから、どんな自分でも愛そうよ」という意味を持つ言葉。気取らないナチュラルなキャラクターで愛される吉野を体現したような言葉であり、リスナーへ向けたメッセージともとれる、HOKUTOらしいワードが1st EPに採用された。
「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」のリリースを記念した今回のインタビューでは、本作の収録曲についてはもちろん、ソロ活動を始めたきっかけやHOKUTOとして表現していきたいことなどについてもたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 曽我美芽
バッチリなタイミングでした
──「オパッキャマラド!」をリリースしてから1カ月ほど経ちましたが(※取材は6月下旬に実施)、デビューの実感はありますか?
そうですね。この1カ月、いろいろ発信してきたので、実感はしています。
──ソロデビューの少し前からXとTikTokを始められましたよね。
突然ソロ始動を発表しても、ファンの皆さんは盛り上がってくれるとは思うんですけど、その前に自分のキャラクターを知ってもらうことも必要かなと。段階を踏んで動き出したいなと思って、ソロ始動を発表する前からSNSを使っていろいろやりました。盛り上がってよかったです。
──SNSの中でも最初に始めたXでは、なかなか本人だと気付かれないことも面白く拝見してました。
ファンの間で話題になっていってほしかったんです。なかなか信じてもらえなくて大変でしたけど。THE RAMPAGEのオフィシャルアカウントで取り上げてもらって、やっぱり“公式”の存在ってありがたいんだなって思いました(笑)。でも楽しかったし、皆さんの反応も見られたし、ちゃんと盛り上がってくれたからよかったです。
──そもそもソロデビューすることになったのはどういった経緯だったのでしょうか?
(EXILE)HIROさんからお話をいただきました。ソロは自分としてもやりたかったことなので、うれしかったです。たぶんHIROさんがいろいろな過程も見たうえで、「今だ」と判断してくださったと思うんですけど、自分的にもバッチリなタイミングでした。もうちょっと早かったら、実力や表現の幅が足りていなかったと思う。今だからこそいろんなアイデアが出せるし、いろんなことができていますね。
デモが来たときに戸惑いました
──いざソロとして活動するという話を聞いたときはどう思いましたか?
言われた瞬間から「面白いことをやりたいな」「どういうテイストがいいかな」って考え始めました。THE RAMPAGEではカッコいいことをやれているからソロでは「LDHっぽくないことをやろう」「カッコつけないでいよう」と思ったんです。だからデビュー曲が「オパッキャマラド!」みたいな曲になって。
──とはいえ、カッコつけない姿を見せるって勇気がいることではないですか?
はい。正直、不安でしかなかったです。特に「オパッキャマラド!」は、デモが来たとき、それまでの自分のイメージと違いすぎてちょっと戸惑ったし、リリース直前まで不安な気持ちがありました。だけど自分がやりたい表現を入れ込んで、自分の声で歌ったらちゃんと形になったし、スタッフさんの評価もすごくよくて、「堂々と出そう!」という気持ちになれました。新しい一面を見せた結果、ファンのみんなも楽しんでくれたのでよかったです。
──今年、同じTHE RAMPAGEのボーカリスト・川村壱馬さんが零としてソロデビューされましたが、零はTHE RAMPAGEを煮詰めたようなヒップホップ路線なので、ファンの皆さんもHOKUTOもTHE RAMPAGEの延長線上のようなものが来るだろうなと想像したでしょうしね。
そうですね。壱馬のソロは、僕にはできないことが詰まっていて。「じゃあ僕は吉野北人として何ができるか」を考えたときに、ポップな表現がもっとできるんじゃないかと思ったんです。
──普段からポップスはよく聴かれるのでしょうか?
僕はジャンル問わずいろいろと聴きますし、ソロではいろんなことをやりたいんです。ポップなものもやりたいし、バラードも歌いたい。もしかしたら今後、めちゃくちゃラップするかもしれない。HOKUTOのコンセプトとして「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」を掲げていますが、、これは「せっかく自分という人間で生まれてきたんだから、どんな自分でも愛そうよ」という意味で。だからHOKUTOとして発表する音楽も、ジャンルにこだわらないようにしたいと思っています。
──そもそも「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」というコンセプトは、どこから生まれたものなのでしょうか?
スタッフさんが僕のことを研究して提案してくださったものです。この言葉は、例えば嫌いな自分や弱い自分がいたとして、「それも含めて自分だから、嫌いな部分や弱い部分も全部愛そうよ、それも自分もじゃん」「自分の人生を、自分らしく進んでいこうよ」という意味だと捉えています。「オパッキャマラド!」は“がんばり”を強要しない歌詞で、まさに「LOVE PARADOX, LOVE MYSELF」を体現している曲だなと思います。
「オパッキャマラド!」のレコーディングで表現の幅が広がった
──そんな「オパッキャマラド!」はmeiyoさんによる書き下ろしです。制作はどのように行われたのでしょうか?
まずはmeiyoさんと打ち合わせをしました。「どういう曲調がいいか」ということはもちろん、自分のことを知ってもらったほうがいいなと思ったので自己紹介みたいなこともして。それを踏まえてデモを作っていただいて、「ここはこういうふうにしたいです」「ここの歌詞は自分が書きたいです」とディスカッションを重ねていきました。大きく変わったのはサビの「オパッキャマラド!」のフレーズですかね。メロディ自体は変わっていないんですが、最初はもうちょっとシンプルでリズミカルでした。だけど、このフレーズは一番耳に残る部分だから、もっとポップで派手なものにしたいなと思って、テンションが高い人や声が大きい人など、いろんな人になりきってユニゾンで重ねました。
──実際、サビはすごく耳に残りますよね。
よかったです。ありのままの自分を愛することを歌ったこの曲が人の支えになっているところを見ると、シンプルにリリースできてよかったなと思いますね。自分の自信にもなりましたし、HOKUTOとしてのエンタテインメントで、もっと自分自身を好きになってもらいたいなと思いました。
──その感覚はTHE RAMPAGEのときとはまた違いますか?
そもそも曲のテイストが全然違いますからね。THE RAMPAGEは歌やパフォーマンスで人の心を動かしたり、力強く背中を押したりする感じですけど、ソロは背中を優しくさすってあげるような感覚というか。
──レコーディングはいかがでしたか?
めっちゃムズかったです。脱力しながら歌うことって今までしたことがなかったので。自分は歌い上げるのが癖というか、ちゃんと歌っちゃうんです。だけど、この曲は歌い上げちゃダメ。かといって優しすぎるとのっぺりしちゃうし、リズムを意識しすぎても違うし……バランスを取るのがすごく難しかったです。
──そのニュアンスはどうやってつかんだのでしょうか?
レコーディングではmeiyoさんにディレクションしていただいたんですが、そのディレクションが丁寧で。だんだん自分のものにできるようになっていきました。でもめちゃくちゃ時間かかりましたね。4、5時間くらい続けて録っていたんじゃないかな。だけど、おかげで表現の幅が広がったと思います。
──実際こういった曲もこういう歌い方も初めてなはずなのに、「HOKUTOさんっぽい」と感じました。
そうなんですよ。“っぽい”っちゃっぽいんですよ。結局は、自分が歌えばなんでも正解になっちゃうんでしょうね。自分の声だし、自分がちゃんと歌と向き合って、意味を持ってやっていたらなんでも成立しちゃうんだなと思いました。
──それがわかると、いろんな曲を歌うのがどんどん楽しくなっていきますよね。
そうですね。
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この曲はいけると思えた