スピラ・スピカ「アオとキラメキ」|“好き”を貫いた先に見えた新たな世界

幹葉(Vo)のソロユニットとして活動中のスピラ・スピカが、10枚目となるシングル「アオとキラメキ」をリリースする。

シングルの表題曲はテレビアニメ「その着せ替え人形は恋をする」Season 2のオープニングテーマ。スピラ・スピカは2022年に放送されたSeason 1でもオープニングテーマを担当しており、今回は二度目のタッグとなる。

Season 1のオープニングテーマ「燦々デイズ」は、テレビアニメ「その着せ替え人形は恋をする」を通してスピラ・スピカの名が知れ渡るきっかけとなり、もはや代表曲の1つと言える。幹葉はスピラ・スピカにとって大切なアニメ作品にどのように向き合い、新しい物語を紡ぎ上げたのか? 幹葉が笑顔で語ってくれた。

取材・文 / 森朋之撮影 / 梁瀬玉実

涙が止まらなくなりました

──スピラ・スピカは2022年に幹葉さんのソロユニットになり、シングル「私の物語」で再スタートを切りました。昨年2月には“応援歌”をテーマにしたミニアルバム「未知の設計図」をリリースしましたが、この2年間は幹葉さんにとってどんな期間でしたか?

もう2年も経ったんだってびっくりしてます。いろんな方の力を借りながら、なんとか活動を続けてきて……話し始めたばかりなのに、もう泣いちゃいそうです(笑)。本当にがむしゃらにがんばってきたんですけど、「今のスピラ・スピカでアニメのタイアップ曲を担当する」ことを目標の1つにしていたんです。

──ニューシングル「アオとキラメキ」の表題曲はテレビアニメ「その着せ替え人形は恋をする」Season 2のオープニングテーマです。まずは目標達成ですね!

ありがとうございます。私がすぐ泣いちゃうってスタッフの皆さんもわかっているので、アニメのタイアップが決まったことをどのタイミングで伝えたらいいか、いろいろ考えてくれたんです。とあるライブが終わったときに「大事な話があります」と言われて、「なんだろう?」とドキドキしていたら、「『着せ恋』Season 2のオープニングテーマを担当することが決まりました」と。やっぱり涙が止まらなくなりましたが、めちゃくちゃうれしかったですね。

スピラ・スピカ

──スピラ・スピカは「着せ恋」Season 1のオープニングテーマ「燦々デイズ」も担当していましたからね。

そうなんです。だいぶ前に「着せ恋」Season 2の放送が決まってから、どなたがオープニングテーマを担当するのかずっと気になっていて。もちろんまた歌いたいという気持ちはあって、「もうほかのアーティストに決まっているのかな……」と不安になったり。けど、しっかり活動を続けていないと、候補にも入れてもらえないと思ったので、とにかくがんばろうと思っていました。

“好き”という気持ちを大切にしていれば、青春はずっと続いていく

──「アオとキラメキ」の作詞は幹葉さんが担当しました。制作のプロセスはどうでしたか?

候補曲に仮の歌詞を付けながら、「着せ恋」チームの皆さんとも相談して作っていきました。前作のオープニングテーマ「燦々デイズ」はメインキャラクターの喜多川海夢ちゃん、五条新菜くんの関係性にフィーチャーした楽曲で。恋愛というより、2人が好きなコスプレに夢中になってキラキラしているというイメージでした。今回の「アオとキラメキ」ではそこにプラスして、クラスメイトやコスプレ仲間だったり、人の輪がどんどん広がっていくところを表現したかったんです。歌詞だけではなくて、サウンドやメロディでもそういう部分を出したかったので、作曲の清家寛さんにもそのイメージをお伝えして、みんなで歌えるところを作ってもらいました。歌詞を書くのは大変でしたね。最初に書いた歌詞はあまりにも「着せ恋」に寄りすぎていて、アニメの説明みたいになってたんです。

──「着せ恋」の要素を入れすぎた?

そうなんです。一度提出したところ、アニメの監督さんとの打ち合わせで「この曲で僕たちをもっと想像もできないような世界に連れて行ってほしい」と言われて。そこで海夢ちゃん、五条くんのことを考えつつも、「人との出会い、好きなものを見つけることによって視界が開ける」というところに焦点を当ててみようと思って、書き直しました。あとは自分自身のことですね。「スピラ・スピカとして私が歌う意味ってなんだろう?」ということも考えながら、歌詞を書き直していきました。

──幹葉さん自身の経験も反映されているんですね。「アオとキラメキ」というタイトルはどういうふうに付けたんでしょうか?

タイトルは歌詞を書いたあとに付けたんですよ。歌詞ができて、レコーディングを終えたときに「そろそろタイトルを決めて」とスタッフさんに言われて(笑)。ディレクターさんも作曲家の清家さんも一緒に考えてくれて、歌詞にある「終わらないアオを 一瞬のキラメキを」というフレーズから取って「アオとキラメキ」がいいんじゃないかという話になりました。

──この曲には「青春は終わらない」というイメージもある?

そうですね。去年、母校の徳島市立高等学校の文化祭に呼んでいただいて、ライブをやったんです。そこで青春真っ最中の生徒さんたちを目の当たりにしたんですが、みんなめちゃくちゃキラキラしていて。ちょうどそのあとに「着せ恋」のオープニングテーマを担当させてもらうことが決まったので、歌詞を書くときも生徒さんたちを思い浮かべていました。青春って“限られた時間の一瞬のきらめき”という感じもあるけど、好きという気持ちを大切にしていれば、青春はずっと続いていくんじゃないかなって。「アオとキラメキ」の歌詞には生徒の皆さんから受け取ったもの、今の自分が感じていることの両方が入ってます。リアルタイムで青春を過ごしている人はもちろん、「青春が過ぎ去って早何年……」という方にも聴いてほしいし、明るい気持ちやみずみずしい感覚を思い出してもらえたらうれしいですね。

──幅広い層のリスナーが青春を感じられる楽曲ですね。母校でのライブはどうでした?

ドキドキしました(笑)。「今時の高校生ってどうなのかな? みんな大人っぽくて、ライブ中にシーンとなったらどうしよう?」と心配してたんですけど、すごくピュアな子たちが待っていてくれて。ライブ中にじゃんけんをする楽曲「じゃんけんキング」にも恥ずかしがらずに参加してくれたり、阿波踊りを取り入れた「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」ではみんなステージに上がって踊ってくれたり。うれしかったですね。

──幹葉さんも高校時代のことを思い出したり?

めちゃくちゃ思い出しました。校舎も変わってなかったし、私も友達とバンドを組んで、文化祭で歌ってたんですよ。aikoさんの「ボーイフレンド」とか、PUFFYさんの「渚にまつわるエトセトラ」とか。みんなで地元のスタジオで練習しました。そのスタジオにチャットモンチーさんのサインが飾ってあったんですよ。

──そうか、地元が一緒なんですね。

その縁でデビュー曲の「スタートダッシュ」の歌詞を高橋久美子さんと共作させていただいて。高校生のときはそんな未来があるとは思ってなかったです。スピラ・スピカとして母校の文化祭に出させてもらえたのも感慨深かったですね。

スピラ・スピカ

初めての「THE FIRST TAKE」

──「アオとキラメキ」のボーカルのレコーディングはどうでしたか?

とにかく空回りしないように気を付けました(笑)。どうしても気合いが入っちゃうし、「緊張して前の日、眠れなかったら嫌だな」とか。あとはもう「着せ恋」が好き、歌うことが好きという気持ちをストレートにぶつけようと。「アオとキラメキ」はそれだけでいいんじゃないかなと思って、レコーディングに臨みました。

──すごく躍動感があって、生き生きした歌声ですよね。

うれしいです! 「燦々デイズ」もそうなんですけど、1曲を通して駆け抜けるような歌にしたくて。ただ、かなり難しかったんですよ(笑)。「突然の出会いで生活が変わる」という要素を作曲に入れてもらったので、1番と2番のAメロのリズムが違ったり、Bメロで急に3拍子になったり、2番のサビのあとでガラッと曲の雰囲気が変わったり。それを自分の体に入れ込むのにだいぶ時間がかかりました。でも、サビのメロディがバシッと決まるとすごく気持ちいいので、ぜひ皆さんにも歌ってほしいです。

──「アオとキラメキ」のリリースに伴い、「THE FIRST TAKE」への初出演も実現しました。

「燦々デイズ」と「アオとキラメキ」を歌わせていただきました! 「燦々デイズ」はバンドメンバーと一緒に歌ったんですけど、めちゃくちゃ緊張しましたね。出演したことがある友達のアーティストに「録れるのは本当に1回だけ?」と一応聞いてみたら、「本当に1回だよ」って(笑)。自分が出られるなんて思ってなかったので、すごくうれしかったですね。「アオとキラメキ」に関しては、レコーディングの次に歌ったのが、ライブとかではなく、まさかの「THE FIRST TAKE」だったんです。みんなで一緒に歌えるパートもあるので、どなたかにコーラスで参加してほしいなって話している中で、REAL AKIBA BOYZのメンバーの方が出てくれることになって。「“好き”を貫けば、大人になっても青春できるんだ!」と思ってもらえる映像になっているので、ぜひ観てほしいです。

──「着せ恋」の2曲を届けられるのは、幹葉さんにとっても感慨深いのでは?

はい。CDをリリースできるのも、「THE FIRST TAKE」に出られたのも「着せ恋」からパワーをもらったからで。もちろんファンの皆さんの力も大きいし、「本当にありがとうございます」と大きな声で言いたいです。