ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。
こないだライブを観に行ったんだけど、パーカッショニストがいる編成でカッコよかったなあ。やっぱコンガのリズムって体が勝手に踊り出しちゃうよね。あれ、ボンゴだっけ? いや、ジャンベだったかな……。考えてみたらそのへんの違いがよくわからなかったので、YouTubeチャンネル「TAKAFUMI PERCUSSION CHANNEL」でパーカッションにまつわるさまざまな情報を発信しているTAKAFUMIさんのもとへ聞きに行ったよ! 実際にTAKAFUMIさんにパーカッションを叩いてもらった動画もあるので、最後まで楽しんでね!
取材・
コンガとボンゴの違いは
──今日はよろしくお願いします! それにしてもとんでもない数のパーカッションですね……!
学生時代から興味を持って、20年近く集めていたらこうなったよ(笑)。数えたことないけど、しまってあるのも入れたら100種類以上あるんじゃないかな。
──そんなに持ってるんですね! そもそもパーカッションってドラムとは別の扱いのことが多いと思うんですけど、どう違うんですか?
パーカッションは打楽器──手や道具を使って叩く、こする、振るなどして音を出す楽器全般を指す言葉で、ドラムも広義にはパーカッションに含まれるんだ。ただドラムセットとしてバスドラムやスネア、タム、シンバルなどある程度決まったフォーマットがあるから区別して呼んでいるんだね。パーカッションはコンガのように叩くものもあればウインドチャイムのようにキラキラした音を鳴らすものもあるし、かなり幅は広いと思うよ。
──今コンガの名前が出てきましたけど、いつもコンガとボンゴとジャンベがごっちゃになっちゃうんです……。それを教えてほしくて今日はやって来ました!
じゃあまずコンガとボンゴを解説していくよ。この2つはラテン由来の楽器で、樽のような形をしているのがコンガ、2つでワンセットになっているのがボンゴだよ。ボンゴは太鼓の径が小さい方がマッチョ(男)、大きいほうがエンブラ(女)と言って、径が小さいほうが高い音を鳴らせるんだ。
──へえ、ボンゴって“男と女”でワンセットなんだ。ラテンってことは中南米ですか?
うん、キューバだね。諸説あるんだけど、コンガはアフリカがルーツとも言われている。パンロゴっていう西アフリカの楽器なんて、見た目はコンガそっくりだよ。奴隷として中南米に連れてこられたアフリカの人たちにはもともと太鼓を叩くカルチャーが根付いていて、だけど楽器がなかったから現地にあった樽に皮を張って代用したんじゃないかと言われているんだ。なのでコンガはよりプリミティブで、コード楽器を使わないような、それこそ即興で踊るルンバで使われてたりする。一方、ボンゴの原型はもともとキューバにあったと言われていて。キューバにトレスっていうギターによく似た弦楽器があるんだけど、それとボンゴで演奏するミュージシャンがたくさんいたんだ。カホンと同じで、ボンゴは歌モノの伴奏という位置付けだね。
Tresero Pablo Reyes No.1 | Tres Cubano | Cuban Tres
──コンガとボンゴってセットで使われることが多い印象があったんですけど、同じキューバの楽器でもルーツはまったく違うんですね。
そうだね。その後、ルンバにジャズ要素を加えたマンボっていうダンスミュージックが1940年代にキューバで流行って、2つが一緒に使われるようになっていったんだ。
”Mambo Medley" from 熱帯JAZZ楽団 in さぬき 2019.4.15
──ライブだとコンガを2台とか3台並べて使うパーカッショニストも多いですよね。
ボンゴが径の大きさの違いでマッチョとエンブラに分かれる話をしたけど、コンガも一緒で、径の小さい方からレキント、キント、コンガ、トゥンバ、レトゥンバと5種類あって、それで音程の違いを出しているよ。昔は1つひとつ区別して呼ばれていたらしいんだけど、キューバに来たアメリカ人が現地の人に「これはなんだ?」って質問したところ、それがたまたまコンガだったから「コンガだ」と答えたら総称してコンガと呼ばれるようになったっていう説があって。
──え? じゃあもしそのキューバ人が持っていたのがキントだったら?
今頃「コンガ」じゃなくて「キント」と呼ばれていたかもしれない(笑)。
──面白い!
スピッツ「チェリー」に使われているのは
──コンガやボンゴのヘッド部分、ビンテージ感があってすごく味わい深いですけど、なんの皮を使っているんですか?
一般的に多いのは水牛かファイバー製だね。
──どう違うんですか?
単純に利便性の問題があって、本革だと湿度で伸び具合が変わるからチューニングが安定しないんだ。ライブでコンガやボンゴを使う人は安定性重視でファイバー製を選ぶことが多い。サウンド面では本革のほうが太くて温もりのあるトーンで、ファイバー製のほうがくっきりした音という印象かな。パーカッションがバンド編成に加わるときは大所帯なことが多くて、それだと帯域の被り合いがあるので、そういう理由もあってパキっと高音に抜けやすいファイバー製を使っている人もいると思う。でも僕はけっこうレアケースで、牛の皮を使っていて。
──水牛とは違うの?
水牛はバッファローのことで、バッファローのほうが皮が柔らかくて加工しやすいという特徴があって。牛は主にオスの皮を使うんだけど、オスって成長するとめちゃくちゃ硬くなる。ティンパニのようなクラシック音楽に使われる太鼓は子牛の柔らかい皮を使っているんだけど、僕が使っているのは去勢した牛。去勢すると加工できるくらいの柔らかさで、かつテンションがあるんだよね。けっこう厚みがあるからうまく使いこなすのが難しいんだけど、鳴らせるようになるとこっちのほうがパワーがあるんだ。あと楽器は日々触るものなので手触り感も大事だと思っていて。手で直接触った感覚に快楽を覚えるというか、叩いてるときの幸福度が違うんだよね(笑)。
──なかなかマニアックな世界ですね(笑)。ちなみに、ボンゴやコンガが使われてる曲でTAKAFUMIさんオススメの曲があれば教えてください!
めちゃくちゃディープな曲もあるんだけど、わかりやすいところで言うとアニメ「カウボーイビバップ」のオープニングテーマとして書き下ろされた
不朽の名作 - カウボーイビバップOP | カウボーイビバップ | Netflix Japan
スピッツ / チェリー
──ホントだ! 今まで1万回くらい「チェリー」を聴いてきたけど、言われたら確かにコンガの音がする……!
もとは通信手段!? ジェンベの知られざる歴史
──ジャンベについても教えてください!
樽型のコンガに対して、上が広がっていてだんだん細くなるゴブレット型なのがジェンベだよ。西アフリカが起源の太鼓で、アフリカには文字の文化がなかったからいつからあるのか正確なことはわかっていないんだけど、少なくとも1200年頃にはあったと言われていて。最初は王様が街から街へ移動するときに、太鼓を叩いて「今出発したぞ!」って隣の街の人に伝える通信手段の道具だったみたい。それが時代を経て冠婚葬祭などの儀式でも叩かれるようになっていったんだって。気分を高揚させる音だからみんなで踊ったり歌ったりするのに向いていたんだろうね。
──あ、ちょっと待ってください! 「ジャンベ」ではなく「ジェンベ」が正式名称なんですか?
ジャンベのほうが一般的に広まっていると思うけど、REMOっていうドラムヘッドなどを作っている会社が「ジャンベ」を商標登録しているらしくて。実は僕も最近知って「パーカッション・マガジン」の連載などでは「ジェンベ」と書くようにしているよ。
──ヤマハが商標登録している「ピアニカ」みたいな感じですね。鍵盤ハーモニカに言い換えるっていう。
ちなみにジェンベのつづりは「djembé」で、これは実はフランス語だよ。アフリカでは「ジンベ」とか「ジェンベイ」とか「ディンベイ」って呼ばれていたんだけど、1800年代にフランスが植民地化したときにフランス人に認知されて「djembé」と呼ばれるようになり、それが世界のスタンダードの呼び方になったんだって。
──まさかフランス語だったとは……! アフリカ音楽はラテンミュージックほどは世界で流行ってないと思うんですけど、なんでジェンベはこんなに普及してるの?
それはなんと言ってもママディ・ケイタの存在が大きいね。彼は3年ほど前に亡くなってしまったんだけど、ギニア国立舞踏団としていろんな国をツアーしたり、ワークショップを開いたりしてジェンベを世界中に広めた功労者。日本にも何度も訪れていて、1990年代にジェンベブームが起きたりもしたんだよ。
──ジェンベのヘッドはコンガやボンゴより白っぽいですけど、これはなんの皮?
チューニングしやすいファイバー製もあるのは同じだけど、本皮は水牛ではなくヤギの皮なんだ。ヤギの皮ってすごく薄くて、抜けのいいパキッとした音に聴こえるのが特徴だよ。あとやっぱり野性味というか“アフリカ味”があるので、そういうのを出したいシチュエーションと出したくないシチュエーションによって使い分けてるパーカッショニストが多いかな(と言って叩く)。
──コンガと全然違う! 血湧き肉躍るようなサウンドですね……!
だよね。この曲でもジェンベが使われているよ。
平井 大 / Slow & Easy(Music Video)
ラテンパーカッションが世界中に広まった理由
大阪 どらむ村(ドラムショップACT) @ACT_DRUM
この夏、どらむ村の半日店長としてお越し頂いた、パーカッショニスト TAKAFUMIさんが、あの「音楽ナタリー」に!
パーカッションの事を基礎知識から楽しく、アツく語ってくれて面白いですよ! https://t.co/B5ZroLm9X6