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TOMOO LUCKY
凝らした視線のその先に──「CITY THE ANIMATION」エンディング主題歌で描く“幸運”
文 / 石井佑来
TOMOOの新曲「LUCKY」は、そのタイトル通り肯定的な力に満ちあふれている。「ビビッときたの すぐさま 君はぜったい面白い 気づかないのは惜しいよ 見つけたわたしはラッキー」というフレーズで幕を開けるこの曲では、ほかの人であれば見過ごしていたであろう“君”の面白さ、そしてその面白さに気付けたこと、それ自体への喜びが歌われている。これまでもTOMOOが音楽を通してやってきたのは、つまりそういうことだった。スーパーボール、グレープフルーツ、ベーコンエピ……ともすれば見過ごされがちな、普遍的な存在に鋭く目を向け、そこに何かしらの意味を見つける。TOMOOというアーティストはそんな行為を幾度となく繰り返してきたのだ。そういった日常や表現における営みを、自ら「ラッキー」とたたえてしまう。そんなさりげない感動がこの曲にはある。そして、その普遍的な物事への鋭い視線は、「LUCKY」をエンディング主題歌として使用したアニメ「CITY THE ANIMATION」の「“普通のCITYで続く日常”から“普通じゃない人々の生活”を掬い出す」という作品の在り方と、深いところで共鳴しているのではないだろうか。
絶妙な上がり下がりを繰り返すブリッジを経て、華やかなホーンサウンドに乗せて放たれる「何回でも言いたい! 君は君がいい!」という、あまりにあっけらかんとした肯定の言葉。その後カメラは「今日も 明日も 100年後も」といきなりロングショットに切り替わり、かと思えば「ジュース飲んだら」と、グッと手元にズームアップする。この、極めてシンプルで大胆な、マクロとミクロの切り替え。そして100年後という膨大な時の流れを歌ったうえで、それでもカメラが映し出す、今この瞬間過ぎ去っていく夏。限られた時の中で、眼前の物事に目を凝らし、そこに素晴らしさを見つけ出すこと。それこそが何より“LUCKY”なのだと、この曲は強く優しく表明している。
TOMOO - LUCKY【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
TOMOO(トモオ)

1995年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。6歳の頃にピアノを弾き始め、大学進学後に本格的に音楽活動をスタートさせた。2016年8月に1stミニアルバム「Wanna V」を発表。2021年8月に発表したシングル「Ginger」がさまざまなアーティストから注目される。2022年8月にポニーキャニオン内のIRORI Recordsより配信シングル「オセロ」でメジャーデビューし、翌年9月にメジャー1stアルバム「TWO MOON」をリリース。2025年5月に初の東京・日本武道館公演を行った。
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