GADOROインタビュー|夢の武道館を終えて進む第2章、見せたいのは"生身のまま這い上がる姿"

ラッパーのGADOROがライブDVD「四畳半から武道館 at 日本武道館」とニューアルバム「HOME」を同時リリースした。

長年の目標であった東京・日本武道館単独公演を今年3月に成功させたGADORO。ライブDVDにはライブ本編の模様とともに、本人やスタッフへのインタビュー、リハーサルを含む当日までの舞台裏などを織り交ぜたドキュメンタリーが収録されている。一方、GADOROの自主レーベル設立後3作目となるアルバム「HOME」には、客演に般若、紅桜、ハシシ(電波少女)、FORK(ICE BAHN)、ポチョムキン(餓鬼レンジャー)、街裏ぴんくが参加した全14曲を収録。韻を固く踏みつつも、メロディアスでキャッチーなGADOROの魅力が詰まった作品となっている。

音楽ナタリーでは、GADOROに初の武道館公演について振り返ってもらいつつ、ニューアルバム「HOME」の制作経緯や、今後目指していく姿などを語ってもらった。

取材・文 / 渡辺志保撮影 / 斎藤大嗣

武道館でGADOROの第1章は完結

──ニューアルバム「HOME」と同時にライブDVD「四畳半から武道館 at 日本武道館」もリリースされるということで、まずは今年の3月に行われた日本武道館の公演について聞かせてください。手応えはいかがでしたか?

DJやスタッフの家族もみんな来てくれて、今回初めてライブを観た方もいたんですが、武道館をきっかけにファンになってくれたとあとから聞いて、すごくうれしかったです。母ちゃんからも「めっちゃ感動したわ」と言われました。武道館が終わって、GADOROの第1章が終わった。なので、今は「第2章の始まりやな」っていう気持ちです。武道館って、今となっちゃラッパーたちの登竜門くらいになっていますけど、そのステージはクリアしたなと思うし、もっとでかいステージに立っていきたいなと思いました。

──私も実際に武道館でライブを観たのですが、周りの客席にはおそろいのTシャツを着たカップルもいれば、仕事帰りに駆け付けたような、ワイシャツの袖を捲ってGADOROさんのリリックを全部被せながら歌っている方、まだ高校生くらいの若い男の子など、本当にいろんな方がいたんです。GADOROさんのリリックが、こんなにもたくさんの人たちの心の支えになって、日々の糧になっているんだなあ、とか思うとめちゃくちゃ泣けてきて。

それはうれしいですね。舞台にいる俺は、ぶっちゃけ自分のことで必死でした。正直なことを言うと、お客さん1人ひとりの目ん玉を見て「こんな子がいるんだ」とか見る余裕はなかった。「GADORO、泣くだろうな」とも言われていたんですけど、泣く暇もない。本番中に、リリック飛ばしたり変なミスしたりすることがあったらこえーなってビクビクしていました。

GADORO

──これまでにもいくつものステージを踏んでこられましたが、やはり武道館でのワンマンは別の緊張感があった?

やっぱりちょっと特別でしたね。DVDには本番5分前くらいの状況で座っている俺の姿が映っているんですけど、(背を縮めて)こんなんなりながら、めっちゃ丸~くなっていて。でも、そんなふうに緊張している自分のことも好きやったりしますね。それぐらいガチで向き合ってるし。もしここでウンコみたいなライブをしたら、初めて観る人にとってはウンコのままで終わってしまう。そういうことを考えたら、正直緊張します。衣装チェンジのときも、「水、水! どこ!?」って焦ってたしなあ……。ピリピリしてましたね。でも、終わったあとの爽快感がすごくて。楽屋に戻って、みんなとマンガみたいなハイタッチとかして。お酒もずっと我慢してたんで、終わったあとに飲もうと用意していたお酒が死ぬほどうまかった。

しっかりカマせたから自分でも観れる映像になった

──武道館のライブでは、2時間半、ブレずにラップしきるGADOROさんのスタミナにもびっくりしました。何か特別な準備などしていた?

ずっと外を歩くとか、毎日腕立て伏せを10回するとか……でも、それくらい。「2時間半、歌い切れるか」ということが一番怖かったですね。そんなに長い時間のライブはしたことがなかったので、「途中で声が出なくなったら終わりやな」とか。反省点とかもいっぱいあるんですけど、最後までやり切れたことは自信になりました。

──武道館でのライブ中、印象的だった場面は?

最初にステージに出てくるとき、裏は地味なんですよ。持ち上げる人がおって、手動でステージにせり上がっていくんです。待つときも絶妙な角度を保ったまま、膝をブルブルさせながら中腰で待ってる状態なんですけど、リハのときはずっと失敗していて、失敗続きのまま本番を迎えた。だから、そこから緊張しっぱなしだったんです。そこは印象的ですね。あと、般若さんは俺がラップを始めたきっかけの人なので、般若さんとの新曲「RUNNER」を披露したあとに「俺、ラップやっててよかったよ。お前と出会えたから」って言ってもらえたときだけは本気で泣きそうでした。あのときだけ、緊張がパッとなくなったというか、ファンに戻った瞬間でしたね。ヘッズに戻って、思わずステージ上で「死ねる」って言うてしまって(笑)。

GADORO

──武道館のライブ映像を自分で観て、改めてどう思いました?

「こいつ、硬えな」とか「このサビの高いキー、よう歌えたな」とか、いろいろ思いますね。カマせたライブっていうのは、あとからちゃんと自分の姿を見れるんですよね。それが武道館でできた、というのはすごくよかったです。

──これからの第2章は、どんなGADOROになる?

ラップスタイルとかは正直そんなに変わらずに、ブレずに一緒のスタイルではあるんですけど、この状態のスタイルをもっといろんな人に知ってほしいなっていう気持ちはあります。韻をめちゃくちゃ踏みながら歌ったりメロディを付けたりするスタイルに変化したのは、「リスタート」(2023年2月発売アルバム)をリリースしたあとの「TAKANABE」(2024年4月発売アルバム)からなんです。わりと最近なので、第2章からはこのスタイルをさらに研ぎ澄ませて行きたいな、と。

──このあとは、全国5カ所を回るZeppツアーも控えています。

アルバムを作ったばかりなので、その楽曲たちを早く歌いたいなと思ってます。そもそも、武道館前にアルバムを出そうと思っていたんですけど、やっぱり終わったあとに出してよかったね(ライブDJ、A&R・HITOSHIの方を向きながら)。