上段左から野村萬斎、朴ろ美、東啓介、平間壮一。下段左から藤田俊太郎、BOW、宮崎秋人、美弥るりか、村井良大。

2020年、私を支えたもの Vol.3 [バックナンバー]

野村萬斎 / 朴ろ美 / 東啓介 / 平間壮一 / 藤田俊太郎 / BOW / 宮崎秋人 / 美弥るりか / 村井良大

私たちの日常を支えてくれたアレコレ

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1月30・31日に開催されたオンラインイベント「マツリー」にて先行公開したコラム企画「2020年、私を支えたもの」をお届け。同企画では、総勢26人の“舞台人”たちがそれぞれ、激動だった2020年に自身を“支えたもの”を紹介した。この連載では俳優、ダンサー、作家、演出家たちの日常を支えたさなざまなものを、3週にわたって掲載する。

Vol.1では8名が、Vol.2では9名がさまざまな“支えたもの”を紹介した。最終回となるVol.3には、野村萬斎朴ろ美東啓介平間壮一藤田俊太郎BOW宮崎秋人美弥るりか村井良大が登場。なお掲載は五十音順となっている。

野村萬斎

芸術監督を務める世田谷パブリックシアターでは、生み出すために苦労した作品が日の目を見ずに中止となる状況もあり、携わった方々の気持ちを考えると心を痛めましたが、我が身を振り返ったとき、狂言・能をはじめとする伝統芸術は、数百年という歴史の中で、疫病、天災、戦争など、さまざまな困難に出会っても、生き残ってきたことを示してくれました。

人が生きている限り、文化芸術は滅びない。

そしてこういうときだからこそ、心に栄養を与える芸術こそ必要なのだと胸に秘めて、非常事態もあらゆる対策をとって乗り切り、今後も活動を続けていくつもりです。

野村萬斎(ノムラマンサイ)

野村萬斎

野村萬斎

1966年、東京都生まれ。狂言師。重要無形文化財総合指定者。「狂言ござる乃座」主宰。東京藝術大学音楽学部卒業。国内外で多数の狂言・能公演に参加する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、「敦-山月記・名人伝-」「国盗人」など古典の技法を駆使した舞台の演出、NHK「にほんごであそぼ」に出演するなど幅広く活躍。1994年に文化庁芸術家在外研修制度により渡英。2002年より世田谷パブリックシアター芸術監督。2018年、演出・主演作「子午線の祀り」で毎日芸術賞千田是也賞を受賞したほか、同作に読売演劇大賞最優秀作品賞をもたらした。コロナ禍での2021年版となる演出・主演作「子午線の祀り」が、2月21日に神奈川で開幕。同作はこのあと愛知、福岡、兵庫、そして東京・世田谷パブリックシアターで上演される。

朴ろ美

朴ろ美が2020年3月に出演を予定していた「VOICARION『女王がいた客室』」の会場・シアタークリエの客席。新型コロナの影響で中止となってしまった本公演の座席には、ファンからのメッセージが貼り出され、上演の様子は後日配信となった。

朴ろ美が2020年3月に出演を予定していた「VOICARION『女王がいた客室』」の会場・シアタークリエの客席。新型コロナの影響で中止となってしまった本公演の座席には、ファンからのメッセージが貼り出され、上演の様子は後日配信となった。

2020年春、興行が潰れていき3密芝居大好きな私はモノヅクリの意味を一度失いました。が、才能豊かなクリエイターたちがくすぶっているのを目の当たりにし「一人で悶々とするならこの状況下で彼らと共に“生”を産もう」と再燃。以来、打ち合わせも稽古も若者へのセッションも最も苦手とするリモートに。半信半疑のままやってみると逆にシンプルに新しく見えてくるものがあり、つながることができ、見えないものを信じることができ、不自由さを面白がれる……。偏見は見事に打ち砕かれました。形態は如何様にも変化し、それを恐れる必要はない。“伝えたい想い”はそんなことで死なない。“人”がいる限り……。なので私を支えたものはやっぱり“人”でした。

朴ろ美(パクロミ)

朴ろ美

朴ろ美

東京都生まれ。桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業後、22年在籍した演劇集団円を経て、2017年にLALを設立。舞台、アニメ、吹き替え、ナレーション、プロデュースなど活動は多岐にわたり、2012年には映画「あかぼし」で実写初主演。近年の出演舞台には、VOICARION「孔明最後の一夜」「信長の犬」(作・演出:藤沢文翁)、「『黒世界』-日和の章-」(作・演出:末満健一)、KERA CROSS「グッドバイ」(作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ、演出:生瀬勝久)、LAL STORY-sp-「さけび」(作:テネシー・ウィリアムズ、演出:東憲司)、ミュージカル「レ・ミゼラブル」(演出:ローレンス・コナー、ジェームズ・パウエル)などがある。アニメ代表作は「∀ガンダム」ロラン・セアック役、「鋼の錬金術師」エドワード・エルリック役、「進撃の巨人」ハンジ・ゾエ役、「NANA」大崎ナナ役、「BLEACH」日番谷冬獅郎役など多数。4月からテレビ東京系で放送されるテレビアニメ「シャーマンキング」にて道蓮の声を担当する。

※朴ろ美の「ろ」は王へんに路、「『黒世界』-日和の章-」の「黒」は旧字体が正式表記。

東啓介

2020年、僕を支えたものは、「音楽」です。緊急事態宣言が発令されて、舞台が立て続けに中止になり、身体と心スイッチが急にOFFになり、途方に暮れていました。そんなとき、部屋にあったピアノを見て、適当に鍵盤を叩いたときに、「やっぱり音楽は楽しい! そういえば全然ピアノを弾くことがなかった」と気付いて、その日から何時間もピアノを弾いては、歌ってを繰り返しました。それから機材を集めるようになり、曲をコラボしたりと、ステイホームなりの充実感を味わい始めました。「自分の曲も作ってみたい!」と思うようになり、初めて曲作りもしました。これもこの状況下でなかったら成し得なかったと思います。

中止になったミュージカル「ジャージー・ボーイズ」もコンサートという形で復活したり、自身初のソロコンサートも開催することができて、本当に音楽に支えられた年でした。

東啓介(ヒガシケイスケ)

東啓介

東啓介

1995年、東京都生まれ。テニスのインストラクターを目指すも、けがで挫折。その後、芝居の世界に飛び込み、2013年デビュー。舞台映えする体躯と高い歌唱力でジャンルを超えて活躍し、ミュージカル界の新星との呼び声も高い。近年の出演作に、ミュージカル「ダンス・オブ・ヴァンパイア」ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~」「ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート」などがある。現在、テレビドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」に渉周一役で出演中。3月10日に、自身がセルフプロデュースを手がけた1st写真集「K」が発売される。3・4月にブロードウェイミュージカル「IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ」、6・7月にはミュージカル「マタ・ハリ」に出演する。

平間壮一

平間壮一の相棒となった“2人”組。白いPlayStation 4(左)とiPad(右)。iPadには、平間によるポップでキュートなイラストが。

平間壮一の相棒となった“2人”組。白いPlayStation 4(左)とiPad(右)。iPadには、平間によるポップでキュートなイラストが。

2020年に自分を支えたものはPlayStation 4とiPadです。

この“お2人”には本当にお世話になりました!

自粛中や舞台が中止になったとき、ほかの仕事で絵を少しずつ描かせてもらったので、iPadさん大活躍でした!

そして、時間を気にせず夢中になれるゲーム。気付けば時間が経ってて、おうち生活を楽しんでました!

2021年も引き続き大変な世の中ですが、何か少しでも皆さんの気を楽にしたり、楽しみにしてもらえたりすることができたらいいなと思っています。

今年もよろしくお願いします!

平間壮一(ヒラマソウイチ)

平間壮一

平間壮一

1990年、北海道生まれ。2007年に舞台「FROGS」でデビュー。得意のダンスやアクロバットを生かして数々の舞台作品に参加。近年では「RENT」「ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~」「ロミオ&ジュリエット」「ゴースト」「Indigo Tomato」「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~」などのミュージカル作品のほか、「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 上弦の月」「黒白珠」といった舞台に出演した。3・4月にブロードウェイミュージカル「IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ」に出演。3月14日には植原卓也、水田航生とのユニット・3LDKの1stミニアルバム「Only One」がリリースされる。

藤田俊太郎

※動画は現在非公開です。

どんな状況であっても、希望を持って演劇を続けたいと思い続けているのは、演劇に向き合うカンパニーの存在があったからです。6月以降演出した4本「ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート」「ラヴ・レターズ 30th Anniversary Special」、ミュージカル「VIOLET」、ミュージカル「NINE」でお仕事をした皆さん、観客の皆様との出会い、その1人ひとりと向き合った時間はかけがえのないものでした。そのすべてに感謝しています。

そして「2020年、私を支えたもの」は活動を続けているバンドの存在でした。

自分にとってのホームと呼べる仲間たち、アーティスト集団ナナホシという名前で作品を作ったことが大きな支え、指針となりました。

藤田俊太郎(フジタシュンタロウ)

藤田俊太郎

藤田俊太郎

1980年、秋田県生まれ。演出家。2005年に東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を卒業。在学中の2004年、ニナガワ・スタジオに入り、2015年まで蜷川幸雄作品に演出助手として携わる。ミュージカル「ビューティフル・ゲーム」の演出で第22回読売演劇大賞優秀演出家賞・杉村春子賞、「ジャージー・ボーイズ」の演出にて第24回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、「ジャージー・ボーイズ」「手紙」の演出の成果に対して第42回菊田一夫演劇賞を受賞。主な演出作に「美女音楽劇『人魚姫』」「Take Me Out」ミュージカル「手紙」「ダニーと紺碧の海」ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」「ラヴ・レターズ」ミュージカル「VIOLET」「絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』」ミュージカル「NINE」などがある。絵本ロックバンド・虹艶(にじいろ)Bunnyとしても活動中。第28回読売演劇大賞で最優秀演出家賞に輝いた。3月には演出作「ラヴ・レターズ~Spring Special~」が上演される。

BOW

BOWお手製のソーセージパン。左が焼く前で、右が焼き上がった直後。

BOWお手製のソーセージパン。左が焼く前で、右が焼き上がった直後。

ある日、知人からの「手作りピザに興味ありますか?」との連絡に、(「ごちそう様です」と同義語の)「はい!」と返信した翌日、我が家に自家製酵母と大量の小麦粉が届いた。その日から、私のお家時間はSNSを参考にパンを作る日々。起きたらまず材料を合わせ、ひたすら無心にこね、1次発酵中に着替え、2次発酵中にメイクをする。生地がふっくらとする頃には、我が子のようにいとおしく「おいしくなって帰っておいで」とオーブンの中の我が子に後ろ髪を引かれながらも、その場を離れ部屋の掃除をする。どんな形であれ、おいしい我が子たちと同じく、今は私も発酵中と思って、今まで忙しくてできなかったことをたくさん吸収し大いに胸を膨らませ、私もオーブンの中で輝きたいと思います。

BOW(ボウ)

BOW

BOW

1988年、埼玉県生まれ。ダンサー・振付師。高校時代に映像制作を学び、演技の勉強をしていた際、ダンサー・演出家・振付師であるMIKEYの作品と出会い、バニラグロテスクに参加。MIKEYが2013年に結成したアーティスト集団・東京ゲゲゲイに初期メンバーとして加入する。以降、東京ゲゲゲイの活動のほか、舞台「残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』」、「ロッキー・ホラー・ショー」、テレビドラマ「ハケンの品格」などに出演。現在、PARCO produce「東京ゲゲゲイ歌劇団 vol.IV『キテレツメンタルワールド』」が全国ツアー中。

宮崎秋人

2020年。私を支えてくれたものは第7世代実験室のリモートドラマ「リチャード三世」です。緊急事態宣言の発出により、楽しみにしていた「アルキメデスの大戦」の上演が中止となり大きなショックを受けました。その先に決まっていた作品も上演できるかどうか不安な中で、毎日家で映画を観たり、ゲームをしたりと自分が何者かわからない時間が経過するのをただ呆然と過ごす日々でした。そんなときに、さいたまネクスト・シアターの有志メンバーが集まった第7世代実験室の佐藤蛍さんから「リモートで『リチャード三世』やるんですけど」という連絡が入りました。それからの日々は“役者”として息を吹き返した気分でした。シェイクスピアをリモートで。こんな挑戦に自分も参加させてもらえて、最高の作品と、最高の仲間たちと出会えました。今でも彼らに支えてもらっています。

宮崎秋人(ミヤザキシュウト)

宮崎秋人

宮崎秋人

1990年、東京都生まれ。2011年に俳優デビュー。その後、舞台を中心に活躍。近年の主な出演舞台は、自身が主演を務めた「光より前に~夜明けの走者たち~」(演出:谷賢一)や、「HAMLET ―ハムレット―」(演出:森新太郎)、パルコ・プロデュース「阿呆浪士」(演出:ラサール石井)、「冬の時代」(演出:大河内直子)、音楽劇「銀河鉄道の夜2020」(演出:白井晃)、自身の主演作「その男、ピッグテイル」(演出:寺十吾)、□字ック「タイトル、拒絶」(演出:山田佳奈)など。3・4月には「ロミオとジュリエット」(演出:森新太郎)の公演を控える。

美弥るりか

美弥るりかが育てている、大小さまざまな植物たち。

美弥るりかが育てている、大小さまざまな植物たち。

植物の成長を感じることが日々の楽しみに

家でも緑を感じられたらと思い、植物を育て始めました。日々少しずつ成長する姿を見るのが楽しみになり、いつの間にか家の中は植物だらけになりました!

苦手だった料理に挑戦!

ほとんど料理をしたことがなかったのですが、自粛期間に料理に挑戦してみました。でもなぜかレシピを見て作っても、できあがりは不思議な味に……。料理上手への道は遠いようです(笑)。

家でできるトレーニング

今まではお稽古場でしか身体を動かすことはありませんでしたが、自宅でオンラインでのダンスレッスンやボイストレーニングを始めました。じっくりと自分の身体と心に向き合える充実した時間になりました。

美弥るりか(ミヤルリカ)

美弥るりか

美弥るりか

茨城県生まれ。2003年に男役として宝塚歌劇団に入団。星組配属後、月組に組替えとなり、男役スターとして活躍。2019年6月の退団後はアーティストとして活動を開始し、ライブやディナーショーを行うほか、雑誌や自身のYouTubeチャンネルなどを通じてファッション、ビューティに関する情報を発信している。昨年7・8月には東京・シアタークリエで上演された「SHOW-ISMS」に出演し、同年9月には自身初のスタイルブック「Rurika is」を発売。今年2月にはエンタテインメントショー「the Wonder『MIYA COLLECTION』」に出演した。

村井良大

電子版「週刊少年ジャンプ」を定期購読しているという村井良大。タブレットの画面には「ジャンプ」の表紙がずらり。

電子版「週刊少年ジャンプ」を定期購読しているという村井良大。タブレットの画面には「ジャンプ」の表紙がずらり。

新型コロナウイルスによる日々の不安やストレスで日常の当たり前が姿を消したとき、毎週僕を支えてくれたものは「週刊少年ジャンプ」でした。毎週月曜日に面白いマンガを打ち出してくれて、マンガを読んでいるときだけはすべてを忘れてマンガの世界に没入できる。日々目まぐるしく変わる現実の中で、心を支えてくれて、とてもありがたかったです。

しかし、マンガ家さんもコロナの影響でアシスタントさんを1箇所に集めることが難しくなり、原稿を描くペースがどうしても遅くなってしまったという記事を読みました。そんな中でも「ジャンプ」は休刊を作らずに、マンガ家さんたちの必死の努力で毎週マンガを届けてくれました。詳しい現場の声は僕にはわかりませんが、とてつもない苦労をされたのだろうなと思います。毎週届けられることが当たり前なことではなくなった今、僕は毎週「ジャンプ」に「ありがとうございます!」と礼をしてからマンガを受け取ります。いつも誰かに感動を届けるために描いてくださるすべてのマンガ家さん、スタッフさんへ感謝を込めて。

「2020年支えられました。2021年も毎週の感動を心よりお待ちしております」

村井良大(ムライリョウタ)

村井良大

村井良大

1988年、東京都生まれ。2007年にテレビドラマ「風魔の小次郎」で主演デビューし、以降、「仮面ライダーディケイド」「怪奇大作戦ミステリー・ファイル」「教場」「教場II」などのドラマや、「真田十勇士」「十二単衣を着た悪魔」といった映画に出演。舞台では「弱虫ペダル」「RENT」「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」「アダムス・ファミリー」「ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~」「デスノート THE MUSICAL」「生きる」といった作品に出演し活躍している。現在、小山ゆうな翻訳・演出の「ローズのジレンマ」に出演中。3月6日に配信開始されるラジオドラマ「かたらずの華」では主演を務め、4月から6月にかけては堤幸彦演出「魔界転生」(4月7日から、愛知・刈谷市総合文化センター、福岡・博多座、東京・明治座 ほか)に出演する。

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