東京・歌舞伎座で上演される「四月大歌舞伎」の夜の部で「連獅子」に出演する
「連獅子」は2人の狂言師が獅子の親子の情愛を伝える前半から、獅子の精が毛振りを披露する後半と見どころに満ちた歌舞伎舞踊。右近と眞秀は2024年に右近の自主公演「研の會」で同配役にて共演しており、今回初めて歌舞伎座の本興行で披露する。なお、歌舞伎座での実の親子以外での「連獅子」は、2020年に片岡愛之助が狂言師右近後に親獅子の精、中村壱太郎が狂言師左近後に仔獅子を演じて以来、6年ぶりとなる。
会見冒頭で右近は「『研の會』でやらせていただいたこの2人の『連獅子』を、今回歌舞伎座でかけさせていただくということをうれしく思っております。親子でない『連獅子』、そして、親獅子も仔獅子も、親が歌舞伎俳優ではないという組み合わせの『連獅子』というのは珍しい一幕になると思います。この2人だからこそ出せるカラーを追求して、お客様にお楽しみいただける一幕にできるよう一緒に勤めたいと思っております」とあいさつ。眞秀は「今回『連獅子』で仔獅子を務めます。以前、『研の會』でやらせていただき、いつか歌舞伎座でできたらいいなと思っていたので、今はすごくうれしいです」と笑顔を見せる。
2人が想定している「連獅子」のカラーとは?と記者が尋ねると、右近は「以前、眞秀さんが『連獅子』を観ない理由として、『親子でやっている姿を観て、寂しい気持ちになるから』と聞いたことがあり、すごく懐かしい気持ちになって。というのも、僕もそういうところがあったんですよね。でも考えてみたら先輩お1人おひとりが兄や親代わりの存在で、そういうご縁に恵まれて引き上げられて今がある。また役者としては、寂しい気持ちも表現のエネルギーになると思っているので、眞秀さんには『歌舞伎がお父さんだと思えばいいんじゃない?』とアドバイスしました。僕自身は4人の先輩方と『連獅子』をご一緒して、そういう意味では本当にいろいろな方に親代わりとなって引き上げてもらったと実感しています。ですので、寂しさを克服した親獅子と、寂しさと向き合いながら演じる仔獅子が、踊りの中で親子の対話を感じ合う……そういうカラーになっていくんじゃないのかなと思います」と話す。
右近の言葉をうなずいて聞いていた眞秀は「前は寂しさがあったのですが、『研の會』で右近さんと『連獅子』の稽古する中で、『連獅子』って親子かどうかは関係ないんだ、と思ったんです。そこから楽しく稽古ができるようになりました。『研の會』のときはまだ緊張と言いますか、慣れないところもありましたが、今回は2回目なので、前より1ステップ、2ステップくらい上がった状態でやりたいなと思っています」と意気込んだ。
前半、後半でそれぞれ大切にしていることは問われると、右近は「前半は狂言師として親子の獅子の物語を体現し、後半は獅子になるので、重要なのはやっぱり前半。伝説上の獅子という生き物の子育てのありようを、踊りを通じてセリフのようにお客さんに語りかけて伝える、それが重要だなと思います。また松羽目物なので、どこか厳格な空気というか、親子のリアルな情だけを表現するのではなくて、日本人ならではの伝統文化を感じるような空気感、日本人の肉体表現としての品格みたいなものを大事に踊りたいなと思います。後半は、崖から這い上がってくる仔獅子を迎えるときの親獅子の抑えられない思いを、お客様にも感じていただけたら。型からはみ出すような抑えられない衝動を表現できたらと思います」と述べた。
眞秀は「前半は“きっちり”というか“基礎”っぽいイメージがあって。基礎の踊りをちゃんとやるからこそ、後の獅子が生きてくるのかなと思っています。後の仔獅子は元気に。衣裳が起きくて自分が思っているより5倍ぐらい身体を大きく使わないと小さく見えてしまうので、スタミナが大事だなと思っています」と力強く語った。
仔獅子を演じた経験から眞秀に何かアドバイスはあるかと問われると、右近は「一緒に舞台に立つということが、日頃のどんなコミュニケーションよりも分かち合えるということは確実に言えること。親獅子をやらせていただいたときは、今まで先輩たちがいかに愛情を持って仔獅子である僕を迎え入れてきてくれたかということを感じました。親獅子は、仔獅子が自分の想像を超えてきてくれることによって、喜びを感じることがあると思うんです。自分が仔獅子を演じたときにそのように勤められたかどうかは別として、眞秀さんにはそういうことを期待しますし、今の段階で、眞秀さん自身が『ステップアップして』ということを口にして、自分自身にまず期待している姿が感じられたことをすごくうれしく思っています。1カ月一緒に、遠慮なく『連獅子』を磨き上げていくなと感じます」と真摯に答えた。
また記者が、眞秀から見た右近の印象について問うと、「明るくて……優しいけど厳しくて……話し出すと長くなる」と眞秀。会場中が大きな笑いで包まれると「いや本当にその通りですね、恥ずかしい」と右近が恐縮するひと幕も。逆に右近は「研の會」の千秋楽で、いつもよりも毛を振る時間を長くする眞秀に提案した際、本人が「やる」と答えたことについて、「歌舞伎俳優らしいなと感じました。そして実際、見事に毛が振れて、本当にガッツがあるなということを確認しました」とエピソードを披露した。
最後に右近は「歌舞伎は人と人との関わりの中で紡がれてきた、コミュケーションの伝達こそが伝統であるということを『連獅子』を通じて感じていただけると思いますので、人の温もり、人のバイブスを感じに歌舞伎座に足を運んでいただけたら」と述べ、眞秀は「『連獅子』という作品は、コアな歌舞伎ファンでも初めてご覧になる方でも楽しめるわかりやすい演目で、わかりやすいけれど面白いし迫力もある演目です。観たあとに胸が熱くなる作品だと思いますのでぜひ観にきてください」と観客にメッセージを送った。
「四月大歌舞伎」は4月2日から27日まで行われ、チケットの一般前売りは3月14日10:00にスタート。
「四月大歌舞伎」夜の部
開催日程・会場
2026年4月2日(木)〜27日(月)
東京都 歌舞伎座
スタッフ
二、「連獅子」
作:河竹黙阿弥
三、「浮かれ心中」中村勘九郎ちゅう乗り相勤め申し候
脚本・演出:小幡欣治(井上ひさし 作「手鎖心中」より)
演出:大場正昭
出演
一、「本朝廿四孝」十種香
息女八重垣姫:中村時蔵
腰元濡衣:中村七之助
原小文治:中村歌昇
白須賀六郎:中村萬太郎
長尾謙信:中村芝翫
花作り簑作実は武田勝頼:中村萬壽
二、「連獅子」
狂言師右近後に親獅子の精:
狂言師左近後に仔獅子の精:
浄土の僧遍念:中村歌之助
法華の僧蓮念:中村福之助
三、「浮かれ心中」中村勘九郎ちゅう乗り相勤め申し候
栄次郎:中村勘九郎
三浦屋帚木:中村七之助
おすず:八代目尾上菊五郎
大工清六:中村橋之助
栄次郎妹お琴:中村玉太郎
佐野準之助:片岡市蔵
伊勢屋太右衛門:市村萬次郎
太助:中村芝翫
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【会見レポート】尾上右近と尾上眞秀、2年ぶりの「連獅子」に熱い思い語る
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