左からMC正社員、DOTAMA、KEN THE 390。

ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390 EPISODE.4(後編) [バックナンバー]

MCバトルイベント、ブレイクスルーの瞬間:MC正社員&DOTAMA

お前たちが俺をこんな化け物にしたんだぞ!

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お前たちが俺をこんな化け物にしたんだぞ!

左からMC正社員、DOTAMA、KEN THE 390。

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KEN 今は多くのバトルが配信も含めてアーカイブに残るようになっていますが、それについてはどう思いますか?

DOTAMA 大会数が増えて、試合の進行も速度が上がって、消費もライトになる一方で、映像としてアーカイブされることで記憶に残りやすくなったと思うんです。こんなにいい音質、いい映像、いい画質で、何回も好きなところで繰り返し見られるなんて、十数年前は考えられなかったわけで。

KEN DOTAMAくんはパブリックな仕事も多いから、ポリティカルコレクトネスが求められる場面も多いと思います。それは「バトルのアーカイブ化」とかなり食い合わせが悪いですけど、気にしてます?

DOTAMA 最近はそんなにヒドいこと言ってないと思うんだけどな~。

MC正社員 いや、近年の方がヒドいですよ(笑)。

DOTAMA 昔から申し上げておりますが、観客判定にしろ審査員判定にしろ、「MCバトルはより盛り上げたほうが勝つもの」だと考えてます。「今の切り返しはうまい」「そのリリックは面白い」と思っていただかないと、盛り上がらないし、楽しみにしてるお客さんにも失礼だしと思うところがあって。だから「人でなしディス男!」「サイコパスメガネ!」みたいなコメントもときどき……いや、かなりあるんですけど、「それはあなたたちが望んだことですよね?」と思ってるんですよね(笑)。

KEN 一番怖いやつじゃん!(笑)

DOTAMA 「お前たちが俺をこんな化け物にしたんだぞ!」みたいな(笑)。責任転嫁してるわけじゃないんですよ。でもそれが仕事だし、求められている表現をしてるんだから。「これを言ったら喜んでいただけますか」「こういうサービスはいかがでしょうか」って気持ちです。そこにキャラとスキルを乗せて、お客さんが盛り上がる技を見せるっていうのがMCバトルでの役目だと思ってるので、おこがましいんですが、楽しんでもらえるよう徹しようと。

MC正社員 「求められてるから」は絶対ある。だって、エンタテインメントだから求められてないと成立しないし、求められるからエスカレートさせたり、新しい切り口を考えるわけで。それはイベントの制作側も考えてることですね。MCバトルは根本的には変化が乏しいジャンルではあると思うけど、それでもやっぱり新しい打ち出し方はしないといけないと思うんです。

──「戦極」に芸人さんやアイドルが出場するのも、そういうことですか?

MC正社員 こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、バトルはある意味ではヒップホップという枠組みを超えちゃってるから、専業のラッパー以外の人も出られるんだと思うし、そういう広まり方がこれからは必要なのかなって。これも昔の自分なら絶対思わなかったことだと思います。

DOTAMA 「今のバトルはエンタメ化しすぎ」という意見を見ると、ちょっと待ってと。自分は20年もMCバトルを見てるからか、今のバトルMCのスキルってめちゃくちゃ凄いと思うんですよ。みんなレベルが高いじゃないですか。リスナーもプレイヤーも、感覚が麻痺してると思うんですよね。スキルだけで言ったら、とんでもないレベルのラップが日常レベルで行われていると、僕は思います。

バトルシーンは進化していく

左からMC正社員、DOTAMA、KEN THE 390。

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KEN 最後に、これからのバトルシーンはどうなっていくと思いますか?

MC正社員 バトルで食える人を出したいし、尊敬を勝ち取りたい。だから、そのへんを今後どうしていくかが課題なのかなって。お客さんやエントリーする人を増やす大会やシステム作りをしていかないと、バトルを目指す人は少なくなっていくと思うし。一方ではもっと“バトルヲタ”みたいな人も喜ばせられるような内容、大会を作らないといけないのかもな、と思っています。でも、これは昔なら少ない大会でやってたけど、今は多くの大規模大会がある。各大会ごとに役目があると思うし、「戦極」は「戦極」でほかの大会にできないこと、今後も入り口のような役目をしていきたいですね。個人としては企業や文化祭でMCバトルをやりたい方のために代行して主催してる大会もいくつあるから、そっちもがんばりたいです。この記事を読んでいる企業の皆様、ぜひお仕事ください!

DOTAMA 今までと同じで、バトルシーンは進化していくと思ってます。さっきも話したように、次のスター選手も必ず出てくる。自分も出場MCとして、楽しんでもらえるよう全力で臨みます。あと、若手の皆さんと手合わせしてもらえるのが楽しいです。音楽的にも、最近だとドリルみたいな、複雑なビートや速いビートに若手の子がうまい乗せ方をしてるのを聴くと、やっぱり驚きがあるし、自分はそのビートで何ができるかなとワクワクするんですよね。そういう音楽家としての喜びが、バトルへのモチベーションになってるので、精進していきたいと思っています。

MC正社員(エムシーセイシャイン)

MCバトルイベント「戦極MCBATTLE」のオーガナイザー。2008年よりラッパーとして活動を開始し、2012年1月に同イベントを立ち上げた。2021年10月には東京・日本武道館で過去最大規模となる「戦極MCBATTLE 第24章」を開催。22歳以下限定のMCバトル大会「U-22 MC BATTLE」、女性ラッパー限定の大会「CINDERELLA MC BATTLE」などの監修・プロデュースも手がけ、日本のMCバトルシーンのオーソリティとして活躍している。

戦極MCBATTLE 公式 (@sengokumc) | X

DOTAMA(ドタマ)

栃木県出身のラッパー。2017年の「ULTIMATE MC BATTLE」で優勝したほか、数多くのMCバトルで好成績と大きなインパクトを残している。テレビ朝日にて放送されたMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」には初代モンスターとしてレギュラー出演した。現在までに12枚のアルバムを発表。音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」などの楽曲プロデュースも手がけている。“音楽の社交の場”をテーマに掲げたイベント「社交辞令」を定期開催中。

DOTAMA

KEN THE 390(ケンザサンキューマル)

ラッパー、音楽レーベル・DREAM BOY主宰。フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年、アルバム「プロローグ」にてデビュー。これまでに11枚のオリジナルアルバムを発表している。全国でのライブツアーから、タイ、ベトナム、ペルーなど、海外でのライブも精力的に行う。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員として出演。その的確な審査コメントが話題を呼んだ。近年は、テレビ番組やCMなどのへ出演、さまざまなアーティストへの楽曲提供、舞台の音楽監督、映像作品でのラップ監修、ボーイズグループのプロデュースなど、活動の幅を広げている。

KEN THE 390 Official

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音楽ナタリー
MCバトルの歴史をKEN THE 390とゲストが語る「#ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE」

MC正社員、DOTAMAをゲストに迎えた第4回。後編では、“MCバトルイベント、ブレイクスルーの瞬間”やバトルシーンの未来について語り合う。
https://t.co/QDixxbGz3B

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