LiSA「LACE UP」インタビュー|15年分の思いをまとめて編み上げた7thアルバム

2011年4月、ミニアルバム「Letters to U」を引っさげてソロアーティストとしての歩みを始めたLiSA。デビュー15周年を迎えた彼女が、通算7枚目のオリジナルフルアルバム「LACE UP」を完成させた。アニメ「鬼滅の刃」シリーズの主題歌「紅蓮華」「炎」などで広く知られる存在となった今もLiSAの音楽への貪欲な姿勢は止まることを知らず、新作でもケンモチヒデフミ、GLIM SPANKY、水野良樹(いきものがかり)といったアーティストとの新たな出会いを通して、音楽的な振り幅をさらに拡張している。

常にリスナー=LiSAッ子たちのことを考え、巻き込み、楽しみながら進んできたLiSAの15年。記念すべきアニバーサリーイヤーは例年以上にさまざまな楽しみと驚きを与えてくれるだろう。音楽ナタリー通算25回目となる今回のインタビューでは、ワクワクが詰め込まれたアルバム「LACE UP」や東京・日本武道館で幕を開ける15周年ツアー「LiVE is Smile Always~15~(iCHiNiTSUiTE GO)」の話題を軸に、LiSAがLiSAとして生きるそのエネルギッシュなパワーの源泉に迫った。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 森好弘

15周年に向けてLiSAの核を固めた1年間とその手応え

──2025年は5月の日本武道館公演「RiP SERViCE」、そして9月から今年1月まで続いたホールツアー「PATCH WALK」がありました。デビュー14周年であった去年の動きは、15周年に向けて進んでいくような、すでに今年の展開を意識したようなところがあったと思うのですが、実際はどうだったのでしょう。

14周年に入る前、2024年末にアリーナツアー「COCKTAiL PARTY」を終えたとき(参照:LiSAが酸いも甘いも味わった東京で「COCKTAiL PARTY」、刺激たっぷり“SOUR”編レポート)……なんというか、キレイになった世界を、すごい勢いで駆け抜けすぎちゃったなと思ったんですね。

LiSA

──コロナ禍以降の、ようやく以前のようなライブが可能になった時期ですよね。

はい。それまでの数年できなかったことを取り戻しに行かなきゃ、みたいな気持ちで駆け抜けたら、なんだかちょっと疲れちゃって。そう思ったのが2025年の頭頃。これは1回ちゃんと考えて走り出さないと、15周年なんてあっという間に過ぎてしまいそうだから、自分の足元をしっかり確認しておこうと。少し休みをもらって、15周年をどうやって走っていこうかと見つめる時間に充てました。15周年になったら、嫌でも歴史を振り返らなくてはいけないタイミングが来るから、その前に自分がライブで作った核の部分を固めておきたい。そう思って作ったのが「RiP SERViCE」と「PATCH WALK」というライブでした。

──15周年に向けて弾みを付けるというよりも、しっかり足元を確認するような。すべての公演を終えて、それは成功したと感じられた?

成功しました。「RiP SERViCE」の時点でけっこう手応えがあって。アリーナなど大きな会場でのライブは、たくさんの方に届けるための演出を増やしたり、しっかりとした段取りが必要ですよね。大きな会場では機構が動くとか段差を作るとか、音楽だけでは誘導できない演出を加えていくことも大事。でも「RiP SERViCE」は武道館という空間のよさもあって、自分たちだけで届けられる精一杯を表現できたという自信にもなった(参照:切り裂いて形を変えて…LiSAが武道館で繰り広げたサプライズ満載の「RiP SERViCE」)。

──「RiP SERViCE」では「明け星」や「炎」は歌われたものの、「紅蓮華」や「Rising Hope」などおなじみのシングル表題曲はなく、いわゆるB面曲の多い構成でした。

武道館2DAYSをB面まみれでやるのもどうかなと思ったんですけど(笑)。

──最近LiSAさんに興味を持ってライブに来た人はびっくりしたかもしれませんけどね。

そうそう。知ってる曲が1曲もない、みたいな(笑)。「PATCH WALK」ツアーもほぼB面というくらいの内容で。自分がライブで育ててきた曲たちの力を信じる、曲の力でお客さんを巻き込むことができると信じながら全18公演をやって、しっかり手応えを感じることができました。

──2025年の締めくくりとして「NHK紅白歌合戦」への4年ぶりの出場もありました。この会見でLiSAさんは「今年の漢字」として「繋」を挙げていて、「今年はパッチワークというテーマでいろんな思い出や足跡をつないでいくことをテーマに活動してきました。そして『つなぐ、つながる、大みそか。』というテーマを持つ紅白歌合戦ということですごく運命を感じています」とコメントされました(参照:LiSAが「鬼滅の刃」無限城編の主題歌携え4年ぶり紅白出演、今年を表す漢字は「繋」)。きれいな着地でしたね。

そうですね。2025年の初めに感じていた不安はなくなって「大丈夫だな」って。

LiSA

自分自身でLiSAのことが好きだと思えた

──そうやって足元を固めながら、ニューアルバム「LACE UP」の制作に取りかかっていたわけですね。「LACE UP」は「編み上げ」というニュアンスでしょうか?

はい。私は「RiP SERViCE」からもう物語を勝手につなげていて。裁断(Rip)して、パッチワークして、全部結び上げる、みたいな。洋服を作る過程のように、アルバムにつながっていく1年になればいいなと思いながら作っていました。

──デビュー10周年ミニアルバム「LADYBUG」(参照:LiSA「LADYBUG」インタビュー)あたりから顕著に広がっていた音楽性の幅が、このアルバムでさらに拡張された印象を受けました。ジャンル的な広がりはもちろん、得意であろうロックの分野でも、まだやっていなかったロックを推し進めているような。

おっしゃる通り、既発のシングルを並べるだけでもすごくいろんな方向に広がっていたから、こりゃ1つにまとめるのは大変だぞと思いました。ここまで広げてきたものを、LiSAという1つの軸で結び上げるために、その間を埋めていく作業というか。最初にお話しした、去年の頭に一度お休みをもらったタイミングでできたのが「Patch Walk」という曲で。そこから「LACE UP」というタイトルにもつながっていく、1つの流れが見えてきた。その時点でこのアルバムはもう大丈夫だなって思いました。

──「Patch Walk」はアルバムのラストに収められています。ある意味今作のテーマソングと言える楽曲だと思いますが、最初に聴いた印象として、この曲のスケール感は「Another Great Day!!」でコラボしたB'zのTak Matsumotoさんとの出会いによって獲得したものだなと感じたんですね。

はいはい。わかります。

──同時に「“好き”を縫い合わせて 仕立てた私」というフレーズには15年の実感が詰まっているんだろうし、「歩き続けて また会いましょう」というのはまさにこのタイミングでのLiSAさん自身の所信表明なんだろうなと。

一度お休みをもらったとき、自分自身がLiSAの音楽と向き合って、この先どんなふうに歩いていくべきかを考えたんですね。それは自ずと自分の過去を紐解かなくちゃいけない時間でもあって。そのうえで「大丈夫だな」と思えた理由は、ただサボらずに進んできたらこんなすごいところにいて、選んできた道も間違ってなくて、自分自身でLiSAのことが好きだと思えたから。そんな気持ちをつらつらと書いたら「Patch Walk」になりました。そこでアルバムのテーマも見えてきて……私はアルバムタイトルを「L」縛りで作っているので(笑)、いろんなLが付くフレーズを考えているうち「LACE UP」が浮かんで、これでもう大丈夫だなと。

LiSA

──まさにアルバムの核と言える曲ですね。「Patch Walk」の作曲は堀江晶太さんとの連名で、編曲も堀江さんです。

晶太くんはLiSAのストーリーをずっとそばで見てきてくれた人だから、これからLiSAがやるべきことはなんなのか、身近なところで会話できる唯一の音楽家で。休みのときに一緒にアメリカに来てもらったんです。アコギを持って「一緒にこの景色を見て」って(笑)。広々とした大地とカラッとした空気の中で、私がやりたいのはこういうことなんだと会話をしながらこの曲を作りました。

──この曲は「PATCH WALK」ツアーでひと足早く届ける形で披露されていました。

みんなはライブの会場で初めてこの曲を聴くわけじゃないですか。ちゃんと歌詞を伝えたいなと思って、ライブのエンドロールとして流す映像に歌詞を入れて聴いてもらったんです。15年LiSAのことを信じてついてきてくれたみんなが、「LiSA、いなくなったりしなさそうだな」「15周年に向かってみんな一緒にワクワクできそう」という気持ちになるといいなと思い、ライブで終盤に歌って、さらにエンドロールでも聴いてもらった。だからきっと伝わってるんじゃないかと思います。