.ENDRECHERI. / 堂本剛インタビュー|新章に向けて架ける虹、リスナーとの共鳴を願い紡いだ「Heart of Rainbow」

4月10日に誕生日を迎え、47歳になった堂本剛。そんな彼のクリエイティブプロジェクト.ENDRECHERI.にとって14カ月ぶりの新曲「Heart of Rainbow」が4月22日にリリースされた。

8月12日に発売を控えるニューアルバム「new chapter purple」に収録されるこの曲は、80'sサウンドを打ち出した穏やかなミドルチューン。懐かしさと新しさが同居した、これまでの.ENDRECHERI.のディスコグラフィにはなかった存在感を放つ1曲だ。

5月から行うツアーに「NEW CHAPTER」というタイトルを冠し、新章が始まることを示唆している.ENDRECHERI.。これまでもたびたび楽曲に登場させてきた「Rainbow(虹)」をテーマにした新曲が持つ意味とは。

取材・文 / 中野明子撮影 / 笹原清明

「D.U.N.K.」出演で得た発見

──1年ぶりのインタビューとなりますので、まずは近況をお伺いできますでしょうか。

環境が大きく変わった2024年に続き、ファンの皆様、そして演者の皆様、そしてスタッフの皆様が支えてくださったことにより、2025年も新しいことをたくさん経験させていただきました。自分が関わらせていただく仕事の範囲がものすごく増えているので、今回リリースする楽曲もそうなのですが、これまで以上に“ 音楽を作っている実感”がありますね。そういう刺激の中で、日々まだまだ勉強をしながら過ごしています。

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──今回リリースされる「Heart of Rainbow」は14カ月ぶりの新曲となりますが、その間にはツアーやテレビ番組への出演、2年ぶりとなった京都・平安神宮での奉納演奏、大ファンを公言している「ストレンジャー・シングス」とのコラボレーション、さらにはホットケーキミックスの開発と、実に多彩な活動を展開されました。その中で印象に残っていることは?

本当に全部が印象深いです。例えば平安神宮様での奉納演奏は、通常のライブよりも規模が大きく、機材の数や関わってくださるスタッフの皆様の人数も多くて。環境が変わって、僕自身がそれらをまとめさせていただく立場になったことで、1つひとつの現場がより大きな経験として自分の中に蓄積されています。あと、呼んでいただいたイベントに関しては、新しい環境にいる僕にお声がけいただけるということが非常にうれしいですし、今までアプローチすることが難しかった場所に手が届いていく実感もあります。先日出演させていただいたイベント「D.U.N.K.」はSKY-HI(日高光啓)くんが去年からお声がけくださっていて。日高くんと僕はもともと同じ環境にいましたし、以前から僕に対する愛を熱く語ってくれていたのもありまして(笑)。いろんな思いを乗せてフェスに参加させていただきました。

──それは「ENDRECHERI MIX AND YOU FES」(2025年2月開催の.ENDRECHERI.主催イベント / 参照:.ENDRECHERI.フェスで堂本剛が三浦大知、SKY-HI、C&K、げんじぶ、BREIMENと濃厚コラボ)のステージでもうかがえました。

そんな彼とのつながりで「D.U.N.K.」に出演することになり、イベントで出演者同士のコラボメドレーをやりたいというリクエストも受けまして、STARGLOW、BE:FIRST、Da-iCEの皆様とセッションさせていただいたんです。一緒にステージを作り上げる中で、世代を超えて、僕が今までやってきたことが彼らの記憶に刻まれて、何かしらの影響を与えたことがあったんだ、という発見もありました。皆さん僕からの影響を熱く語ってくださるので、感謝しかなかったですし、ここまで続けてきて本当によかったなと。環境が変わっても自分は変わらないし、同時に新しいことにチャレンジし続けられる幸せを強く感じました。

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──「D.U.N.K.」直後のSNSはコラボの話題で盛り上がってましたね。

スタッフさんが教えてくれたんですけど、「昔の推しと今の推しがコラボしてる世界線、ヤバい!」みたいなコメントが多くあったらしくて。面白かったですね(笑)。昔、僕を応援してくださっていた方が、今は違うグループの方を推していて、でもこうしてまた1つのステージで再会できた。そういうことも日高くんに「D.U.N.K.」に誘っていただかなければ叶わなかったことですから。環境が変わったことで、今まで伝えられなかった「ありがとう」を違う形でたくさん伝えられる機会をいただけているな、と感じています。

──2024年にお話を伺ったときは、どこか緊張されていた雰囲気がありましたが、今はのびのびと活動されている印象を受けます。

体のことも調整しながらでしたからね。あれからいろんな経験を積ませていただきましたが、今は緊張の種類が変わった気がしています。

──というと?

歌を歌うとき1つとっても、“自分の人生”というステージの上に立って歌っているような感覚と言いますか。以前は特定のステージというか、一点に集中していたのが、今はつながりを意識しながら歌えるようになった。少し前までは無意識だったのですが、最近ハッと気付いたことですね。例えるならオープンワールドのゲームをプレイしているようなイメージに近いかもしれません。

音楽をやっている間だけは自分らしくいたいし、自分らしくいられる

──ゴールのないシームレスな世界ですね。2024年以降大きな変化を体験されている一方で、愛や平和、自分らしくいることの大切さといった.ENDRECHERI.として伝えているメッセージは一貫しているように思います。

そうなんですよ。昔からシンガーソングライターとして歌っているテーマはずっと変わらないですね。誰もが生きている中で痛みも苦しみも感じるし、その一方で幸せや喜びを感じたり、「がんばろう」とポジティブになったりもする。その両面が合わさることこそが人生だと思うんです。だから僕は、ポジティブで情熱的な赤と、人生で経験してきた痛みや孤独を表現する青が混ざり合った紫を.ENDRECHERI.のテーマカラーにしていて。そのテーマを掲げて、僕の人生と関わってくださるすべての人の人生を共鳴させることが少しでも多く生まれたらいいなと思いながら音楽を作ってますね。

──その共鳴の仕方は以前より深まっている感覚はありますか?

あります。今はいろんな価値観があって、それぞれが大切であり、正解も不正解も出しづらい時代です。そんな中、年齢や性別の垣根を超えたイベントに出演させていただくと、自分の音楽がいろんな人と共鳴している瞬間を目の当たりにすることができて、すごく幸せだなと感じるんです。

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──.ENDRECHERI.の音楽が時代とリンクしていると。そうやって多様性への関心や理解が深まる一方で、今も昔も.ENDRECHERI.がメッセージとして伝えている「自分らしくいる」ことというのは難しいなと私は感じるのですが、その点はいかがでしょう。

自分らしくいることって、本来はとても簡単なことなんですよ。

──そうでしょうか?

僕は、列に並んでいたほうが生きやすい、波風が立たないんだよと時代に思わされているだけだと感じているんです。自分らしくいることを選択しづらい風潮があるだけ。

──要は自分で自分に足枷をはめている可能性もある?

そう。もちろん、僕も常に自分らしくいられているかと言われたらそうじゃないとは思います。でも、音楽をやっている間だけは自分らしくいたいし、自分らしくいられる確信があります。音楽に触れているときはシビアな時代の中でも、僕にとって一番生きやすい時間であり、文章としてはおかしなことになりますが、呼吸のしやすい宇宙なんです(笑)。

今っぽいけど、どこか懐かしい謎の聴感体験を目指して

──その呼吸のしやすい宇宙で新たに生まれたのが、14カ月ぶりの新曲「Heart of Rainbow」です。ここ数年の.ENDRECHERI.の音楽は、リズムを重視したファンクサウンドを打ち出していましたが、「Heart of Rainbow」は趣が異なりますね。80年代のAORを彷彿とさせるゆったりしたサウンドで、リバーブがかかったボーカルや音がとても柔らかい印象を残します。初めて聴いたとき「懐かしい」という感想を抱きました。

サウンドに関しては、感じていただいた通り「懐かしさ」をキーワードに作っていきました。ただ、僕にとって懐かしいものは、今の若い世代の方々には古いという感覚じゃなく、新しいものとして変換されて届くんです。これは面白い時代だなと思っていて。

──ただ単に懐古的にはならないように意識した?

はい。今の若い世代の方々の古き良き時代の楽しみ方って、すごく面白いんです。例えば、フォント1つ取っても、あえて平成っぽいデザインを使って、新しいものと融合させてみたり。単に古着を手に取るのとは違う、ビンテージギターを鳴らすのとは違う、懐かしいものと今のものを融合させて生まれる新しさ。そういう感覚を、僕も自分の音楽に落とし込みたいなと思ったんです。

──それは若い世代の方々と交流する中で生まれたものでしょうか。

そうですね。全体としては70年代から80年代のバラードの構成を踏襲していますが、そこに現代の音楽表現をプラスオンしています。僕と同世代や上の世代の方は懐かしく感じるし、若い世代の方は「今っぽいけど、どこか懐かしい不思議な聴感体験だな」と思う。そのあたりを狙って作りました。

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──そもそも「70年代から80年代のバラード」というテーマは曲を書き始めた段階で決めていたんですか?

ざっくりとは。ただ、イメージはあったけど、さじ加減が難しくて。一歩間違えると単に古めかしい曲になっちゃうから、リバーブをどれぐらい深くするか、キック、スネアの固さ柔らかさの微細なところまでを現代へどうアウトプットするかは相当こだわりましたね。

──この曲では、ボーカルにも特徴的なエフェクトがかけられていますね。

今回はあえてあまり感情的に歌いすぎないようにして、ボーカルから少し人間味を削ぐようなアプローチをしました。ボコーダー的な響きを持たせたり、うっすらとオートチューンをかけたり。でもそれらは全部、髪の毛1本分を変化させる程度の“ふりかけ”レベルなんです。

──その“ふりかけ”レベルの細かい調整が新しいニュアンスにもつながっていると。

現代っぽいエフェクトと、そうでないもののバランスで遊ぶ感覚ですね。歌もちゃんと届くけど、サウンドにもどっぷりと浸れる。そういうアレンジを心がけました。

──サウンドスケープの大きさ、音の奥行きなども意識しましたか?

はい。今の時代はイヤフォンやスマートフォンのスピーカーで音楽を聴く人が多いと思うんですが、僕としては音の広がりが感じられる卓上スピーカーやヘッドフォンで聴いてもらいたい曲でもあって。スマホでは聞こえてこないキラキラした音がたくさん潜んでいるのがわかるはず。もちろん僕たち作り手は、どんな環境で聴いても満足してもらえるように仕上げなきゃいけないことも理解しています。なので今回は、ボーカルの温度感をフラットにしつつも、バッキングの音に埋もれないよう、絶妙なバランスを意識しました。