Galileo Galilei×アニメ「クジマ歌えば家ほろろ」|運命的なコラボが生んだ、“真の理解者”への贈り物

Galileo Galileiがテレビアニメ「クジマ歌えば家ほろろ」のオープニングテーマ「木漏れ日坂」を配信リリースした。

「クジマ歌えば家ほろろ」は、中学1年生の鴻田新とロシアから渡ってきた謎の生物・クジマとの出会いが、家族に少しずつ新しい風を吹き込んでいくホームコメディ。Galileo Galileiが原作者・紺野アキラからの熱烈なラブコールに応えて作り上げたのが「木漏れ日坂」だ。

ロシアが身近な稚内出身の尾崎雄貴(Vo, G)と尾崎和樹(Dr)を中心に結成されたGalileo Galilei。彼らはこの物語にどんな思いを抱き、ノスタルジックで温かな「木漏れ日坂」を生み出したのか。また、昨年秋にDAIKI(G)が正式加入したことでバンドに現れた影響は? 音楽ナタリーでは雄貴、和樹、岡崎真輝(B)、DAIKIの4人に話を聞いた。特集最後には、体調不良でインタビュー欠席となった岩井郁人(G)のコメントを掲載する。

取材・文 / 森朋之メインカット撮影 / Hajime Nohara
スタイリスト / So Matsukawaヘアメイク / Asahi Sano

「マルチエフェクター買った」「すげえ」みたいな感覚が戻ってきた

──Galileo Galileiは昨年秋にDAIKI(G)さんが正式加入し、新体制初ツアー「TRITRAL TOUR」を開催しました(参照:Galileo Galilei新体制初ツアーにあふれた祝福と感動、5匹のくじらは突き進む)。5人体制になったGalileo Galileiについてどう捉えていますか?

尾崎雄貴(Vo, G) ツアーは遠い昔のように感じますけど、音楽的なところよりも「友達なんだな」ということを再認識しましたね。ツアー中もみんなで神社に行ったり、この5人でいる時間が楽しくて。すごくいい友情ムードが流れているなと思います。

左からGalileo GalileiのDAIKI(G)、尾崎和樹(Dr)、尾崎雄貴(Vo, G)、岡崎真輝(B)、岩井郁人(G)、サポートメンバーの大久保淳也(Sax)。(Photo by SHUN ITABA)

左からGalileo GalileiのDAIKI(G)、尾崎和樹(Dr)、尾崎雄貴(Vo, G)、岡崎真輝(B)、岩井郁人(G)、サポートメンバーの大久保淳也(Sax)。(Photo by SHUN ITABA)

岡崎真輝(B) DAIKIさんには正式加入前から長くサポートしてもらっているし、バンドの体制自体は大きく変わってないんですよね。でも、5人で過ごす時間が増えたことで、さらにまとまった演奏になっている感覚があって。それは自分だけではなくて、スタッフやファンの皆さんも感じてるんじゃないかなと思ってます。京都ではみんなで二条城にも行ったんですよ。

尾崎和樹(Dr) ステージに立っていて感じるのは、DAIKIくんを見るお客さんの目の輝きですね。キラキラがさらに増したイメージがあって(笑)。

DAIKI(G) (笑)。みんなが言っているように、もう10数年サポートをやらせてもらってきましたから。「正式加入した実感はまったくない」と言えばウソになってしまうけど、演奏感みたいなものはあまり変わってない気がします。これまでも「サポートだから」的な扱いを受けたことはないし、お客さんも温かいので。

雄貴 DAIKIくんが入ってくれたことで、いろいろいい影響があるんですよ。さっき話した「友達として過ごす時間」にも関係してくるんですが、楽器の話をよくするようになったり。高校生の頃の「マルチエフェクター買ったんだよ」「すげえ」みたいな感覚が戻ってきたのは、DAIKIくんのおかげだと思います。DAIKIくんもそうだと思うけど、学生の頃ってスタジオに入っても普通にダベって、何もしなかったりするじゃないですか。そういう感じですごく自然体でいられるんですよね。

──5人で一緒にいるのが自然なんですね。

雄貴 この前、BBHFの制作でDAIKIくんがわんわんスタジオに来て1週間くらい過ごしてたんですけど、そのときの感じもすごくよかったんですよ。みんなで山岡家(ラーメン屋)に行ったのもめっちゃ楽しかった(笑)。

DAIKI 確かに学生時代のバンドって、友達との遊びとの延長で始まってましたからね。趣味が合う友達と一緒に楽器を持ったときの気持ちは今も鮮明に覚えているし、その感覚は忘れたくないなと。そういう気持ちをメンバー同士で共有して、鼓舞し合えるのが一番いい。今はまさにそういう感じだし、言い方が合ってるかわからないですけど、すごくラクですね。レコーディング期間もガツンとやるときは集中してるけど、2、3時間くらいずっとしゃべってたり。

雄貴 ずっとゲームの話してました。いい年なのに(笑)。

尾崎雄貴(Vo, G)(Photo by SHUN ITABA)

尾崎雄貴(Vo, G)(Photo by SHUN ITABA)

紺野アキラ先生はGalileo Galileiの“真の理解者”

──では新曲「木漏れ日坂」について聞かせてください。テレビアニメ「クジマ歌えば家ほろろ」のオープニングテーマ曲ですが、制作の始まりはどこからですか?

雄貴 「アマデウス」(アニメ「青のオーケストラ Season2」オープニングテーマ)のときと一緒というのかな。書き下ろしの場合、作品をよく知ることが一番大事なので、まずは原作のマンガを読ませてもらって。ストーリーや設定以前に絵柄が好きだなと思ったし、「いい曲を作れそうだな」と感じました。作者の紺野アキラ先生はもともとGalileo Galileiを好きでいてくれて、「クジマ歌えば家ほろろ」はGalileo Galileiを聴きながら描いていたそうなんですよ。すごくシンパシーを感じたし、オープニングテーマは「クジマ歌えば家ほろろ」に向けてというより、紺野先生に書こうと思って。

──原作者の紺野先生の思いとリンクするような感覚?

雄貴 そうですね。楽曲を提供するときは、必ず相手の方と話をさせていただくようにしているんです。声優さんでもVtuberの方でもミュージシャンでも、「今、何を考えてますか?」とお聞きしていて。アニメも同じで、制作者側の気持ちを知らないといけないと思ったんですよ。それは僕の信念だし、自分に設けているルールでもありますね。紺野先生、僕らのライブにも来てくれたんです。すごく物静かな方で、手描きのポストカードをくださいました。「SPIN!」のミュージックビデオに出てくる“すずめちゃん”というキャラクターが森林の中に妖精みたいに漂っているイラストで、もう感激してしまって。そのイラストを見たときに「この人はGalileo Galileiの真の理解者だ」と思いました。ポストカードはライブ中もずっと自分の見えるところに置いてます。

ステージに置かれた“すずめちゃんぬいぐるみ”。(Photo by SHUN ITABA)

ステージに置かれた“すずめちゃんぬいぐるみ”。(Photo by SHUN ITABA)

もう、音楽を武器にして戦わなくていいんだ

──必然的なコラボレーションだったのかもしれないですね。制作は具体的にどんなふうに進められたんですか?

雄貴 メンバーと一緒にゼロから作りましたね、今回は。

岡崎 制作過程としては、まず雄貴さんがアコギでコードを弾いてワンコーラス作ったんですが、その時点で「青春感があるな」と。学生時代にベースを弾き始めた頃の雰囲気を感じて、当時聴いていた音楽を思い出しながらフレーズを考えました。

岡崎真輝(B)(Photo by SHUN ITABA)

岡崎真輝(B)(Photo by SHUN ITABA)

──確かに青春のイメージがありますね。懐かしさや切なさ、キラキラした感じだったり。どこか日本的な情緒も感じられて。

雄貴 そうですね。僕らが敬愛しているくるりやKIRINJIの音楽は、日本の風景にすごく合うと思っていて。例えばツアーで東京に行くとき、飛行機で羽田空港に着いてモノレールに乗ったときの風景と、くるりの「東京」がすごくしっくりくる。そういうことがけっこうあるんです。Galileo Galileiの音楽はずっと海外音楽ライクだったので、「日本の風景に合う曲は作れてないかもね」という話をメンバーとしてたんですよ。「木漏れ日坂」は日本の風景にフォーカスしたところがあるし、挑戦というほどではないけど、やってみたいことではあったんです。

──雄貴さんが思春期に聴いていた音楽のイメージとも重なっているのかも。

雄貴 和樹と僕は音楽を聴き始めた時期がほぼ同じで。MDに好きな曲を入れてたんですよ。例えばレミオロメンの「朝顔」(2003年発表)とか、スネオヘアー、ミドリカワ書房とか。

和樹 うんうん。

雄貴 それと同時にRadioheadなんかも聴いてたんですよ。その間にthe pillowsがいて、もちろんスピッツもいて。人生で初めて観たライブはスピッツなんですけど、その頃の感覚が戻ってきてるのかもしれない。昔を懐かしむときって、今にちょっとした寂しさや不安があるときだったりするけど、僕らはそうじゃなくて、すごく自然に戻ってきてる感覚があるんです。あと、音楽を武器として扱ってないんですよね、今は。

──音楽を武器として扱ってない、というのは?

雄貴 ずっと音楽は自分たちを表現するための武器だと思ってたんですよ。でもDAIKIくんが加入して、みんなで過ごしていくうちに、そうじゃなくなってきた。音楽を、自分たちを知ってもらうための武器にしなくてよくなったし、攻撃性もなくなって、「もう武器を持って戦わなくていいんだな」と思えるようになったというか。今は「芸術をやっている」という感覚が強いです。もっと言うと、メンバーとの関係や紺野先生の存在も「全部アートだな」と思ってますね。「この人はこういう作品なんだな」とか「自分たちが置かれている状況を作品として捉えると、こういう感じだな」みたいなこともよく考えるようになって。美術館に行っても、絵画は何も語りかけてくれないじゃないですか。いろんな手を使って、僕らから取りに行くしかない。それをすべてのことに対してやってる感じがありますね。それはたぶん僕だけじゃなくて、メンバーもそうだと思ってます。

和樹 さっきもちょっと話しましたけど、みんなでゲームやマンガ、映画の話をしているのも大きいと思います。「木漏れ日坂」の制作のときも、まず雄貴が原作を読んで、いつもと同じような感じで「このマンガはこういう設定で、こんなあらすじで、自分はこう思った」と話してくれて。そのイメージを共有することによってスムーズに制作に入っていけたと思います。