テレビアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」4th seasonの放送が4月8日にスタートし、その凄絶なストーリーが早くも話題を集めている。
「リゼロ」の略称で親しまれる小説を原作とした本作は、異世界へと召喚され、死ぬと時間が巻き戻る“死に戻り”の能力を身につけた高校生ナツキ・スバルの物語を描くファンタジー。テレビアニメシリーズは2016年に放送がスタートし、今年で10周年の節目を迎えた。
国内外で熱狂的なファンを持つアニメの新シーズンの放送に合わせて、音楽ナタリーでは主題歌アーティストを軸にした特集を連載形式で展開。第1弾では、1st seasonの「Redo」にはじまり全シーズンのオープニング主題歌を担当する鈴木このみと、ナツキ・スバルの声をあてる小林裕介による対談をお届けする。言わば作品の“顔”として「リゼロ」を初期から盛り上げてきた2人によるトークは、「リゼロ」愛、スバルへの共感、4th seasonのオープニング主題歌「Recollect」を含む歴代主題歌のエピソードなど多岐にわたった。
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取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 星野耕作
「リゼロ」は困難を一緒に乗り越えた“仲間”
小林裕介 「Re:ゼロから始める異世界生活」という作品は、僕にとって間違いなく声優人生の転換点の1つになった大事な作品で。キャラクターに魂を吹き込むことの大変さと面白さをこれでもかというほど教えてくれる作品だし、ここで学んだことがそれ以降の作品にも生きている自覚があります。
鈴木このみ 私にとっては、困難を一緒に乗り越えてきた“仲間”みたいなイメージですね。自分の歌手人生の中で何か壁にぶち当たったときには、「リゼロ」のキャラクターたちが何度でも立ち上がっていく姿にすごく励まされてきました。そのおかげでこの10年間を一緒に走り続けてこられたのかな、と思っています。
小林 それと、たぶん世間の人たちには「小林裕介と言えば『リゼロ』のナツキ・スバル」くらいに思ってもらえているんじゃないかと感じているので、そういう意味では代表作と呼べるものなのではなかろうかと。それくらい、特別な存在とも言えるかな。
鈴木 私もそうです。「『リゼロ』の主題歌を歌っている人」と言われることも多いし、はじめましてのフェスとかに出るときは「Redo」(1st seasonオープニングテーマ)で殴り込みをかけることが多かったりするので(笑)。ライブで海外に行かせてもらうことが増えたのも「リゼロ」に出会ってからですし……南米とかに行くと、でっかいスピーカーを持って「Redo」を爆音で流しながら待ってくれている人が空港にいたりするんですよ(笑)。
小林 すごい!!
鈴木 あんな遠い国にまで曲が届いているのは作品のパワーもあってできることなので、自分にとってはすごく特別な出会いです。
小林 僕からしても、このみちゃんは「リゼロ」を引っ張ってくれている存在、という印象です。やっぱりオープニングってアニメの顔とも言えるものだから……流れない回も多いんだけど(笑)。
鈴木 確かに(笑)。
小林 でも、オープニングが省略される回が多いにもかかわらず「Redo」しかり「Realize」しかり、皆さんの印象に強く残っている。力強いシンガーというのは世の中にいっぱいいると思うんだけど、その中でもこのみちゃんの“ぶん殴って前へ進む”みたいな推進力はめちゃくちゃ強い気がしていて。どんなにつらい中でも、あのオープニングを聴けば「きっとこの先に光があるんだ」と信じられる、不思議なパワーがあるなといつも感じています。ありがとうございます。
鈴木 わあー、めちゃくちゃうれしいです……! たぶん「リゼロ」という作品と出会わなければ、小林さんが体当たりで演じられているスバルの姿に触れていなければあの歌は生まれていないと思うので、こちらこそパワーをもらっているという感謝の気持ちでいっぱいです。
死が軽いものに見えたら終わり
鈴木 今言っていただいたように、確かに「リゼロ」曲での私は“ぶん殴り”がちではあって(笑)。でもこの作品のキャラクター……特にスバルは、決して最初から強い人ではないじゃないですか。ちっぽけで情けないけど、ボロボロになりながら意志の力だけで何度でも立ち上がる。なので歌ううえでは、いわゆる“俺TUEEE”にならないようには意識していますね。
小林 スバルはまったく“俺TUEEE”ではないもんね。いまだに戦えないですから(笑)。
鈴木 ですね(笑)。
小林 役者からすると「リゼロ」のキャラクターって、どれだけ感情を全部さらけ出せるかが魅力を引き出す一番のポイントだと思っていて。中でもスバルは怒りも悲しみも喜びも、全部をフルで出しても足りないくらいなので、演じる際には一切遠慮をしないし、喉のことを考えない。あと一番重要なのは、スバルの“死に戻り”を一度たりとも楽にさせてはいけない、ということで。少しでも死が軽いものに見えてしまったら、この作品は終わりだと思うから。
鈴木 それは本当にそうですよね。でも「喉のことを考えない」っていうのはすごいなあ……そこまでしないと、あのお芝居は生まれないんですね。
小林 スバルが毎回の死に対して同じ苦しみ方をしていたら、観てる人も慣れてきちゃうから。1つひとつの死に一番見合った声をちゃんと生み出してあげたい、というこだわりはずっと持っています。
鈴木 その“死のバリエーション”って、どういうふうに作り上げていくんですか?
小林 例えば大量の大兎にやられるシーンでいえば、痛みとかよりも嫌悪感やパニックが先に出るべきだと思ったんで、昆虫に置き換えて「あれだけの昆虫が押し寄せてきたら?」というふうに考えたり。俺、昆虫大っ嫌いだからさ(笑)。
鈴木 なるほど!(笑)
小林 あと、過去に意外といろんな痛みの場を経験してきてるんだよね。空手をやっていたときのことを思い出すこともあるし、ほかにも骨折をしたときのこととか、スキーのリフトから落ちて九死に一生を得たことなんかもあったりするから、そういう経験をかき集めてきてなんとかお芝居に詰め込んでるって感じ。使えるものはなんでも使う(笑)。
「自分がやらなきゃいけないんだ」
鈴木 3rd seasonで、スバルの演説シーンがあったじゃないですか。あのシーンを観たとき、まるで自分があの街にいて直接スバルに訴えかけられているような気持ちになったんです。それくらい、すごく言葉が生きてたなって。それも小林さんが今おっしゃったような意識があってこそのものなんだな、って今強く感じました。
小林 スバルは最初の頃こそ「俺は“死に戻り”の力を使ってエミリアたちを救ってやれていた」とどこかおごっていた部分があったけど、その自信を全部打ち砕かれて、「やっぱり自分1人ではまるで無力だ」という気持ちが今でも強いんだよね。それとは裏腹に周りの人たちはスバルのことを実は認めていて、でもスバルはそれを飲み込めずにいる。
鈴木 そうなんですよね。だから周りのみんなから「演説をするのはスバルしかいない」と言われて、最初は戸惑ってしまう。
小林 そう。あのときのスバルは「絶対に自分より適任がいるはず」と心の底から思っているはず。なので「みんなを奮い立たせる」とかじゃなくて、「とにかく熱い思いをぶつける」ぐらいのひとりよがりな感じを出したほうが伝わるものがあるだろうな、と思って演じた。ただ、あのシーンって8分ぐらいずっとひとりでしゃべるから、家で練習してるときに息が全然持たなくて。本番で息が続くかどうかは出たとこ勝負で臨んだんだよね(笑)。それがあの体当たりなシーンと合致して、結果的によくなったんじゃないかなと。
鈴木 なるほど、それであの説得力が……めっちゃ納得しました。私も実は、あのシーンには自分と重なるものを感じたというか。
小林 へえー!
鈴木 「Redo」を歌っていたときの私は19歳とかで、まだ何者でもなかったスバルと自然とシンクロしたんですけど、そこから何年も歌い続けていくうちに、いつの間にかアニソンシンガー界で中堅みたいな立ち位置になってきて。3rd seasonの「Reweave」くらいの時期になってくると、同業の先輩方から「もっと行けよ! 頼むで!」みたいなことを言われる機会もすごく増えたんです。そういう経緯もあって、去年1年は「自分がやらなきゃいけないんだ」と腹を決める年になったので、その意味であの演説シーンのスバルにはシンクロするものをすごく感じました。
小林 なるほどね。言うて俺も中堅みたいな立ち位置になってきちゃってるし、なんなら3rd seasonからは「『リゼロ』を観てこの業界に来ました」という人がキャストに入ってきたりもしていて。そうなると「この人たちの信頼を裏切りたくない」という気持ちが自然と芽生えるし、それはきっとスバルもまったく同じように思っていることなんだろうなと。ありがたいことに皆さんが「座長、座長」と尊重してくれて、そこにはもちろんプレッシャーもあったけど、改めてみんなに支えてもらっていることを実感してるというか。
鈴木 スバルと同じように、ってことですよね。
小林 うん。「リゼロ」の現場ではそういう信頼みたいなものをみんながちゃんと言葉にしてくれるし、態度でも示してくれるから。そのことをちゃんとありがたく思えるように、今ようやくなってきたのかな。
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鈴木このみって歌手はやべえな


