KIRINJI堀込高樹インタビュー|初のフルオーケストラ公演で生まれ変わる名曲たち

KIRINJIが8月28日に東京・サントリーホール 大ホールで初のフルオーケストラ公演「billboard classics KIRINJI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2026」を開催する。

1996年の結成以来、日本のポップス・ロックシーンに独自の存在感を築き、近年は堀込高樹のソロプロジェクトとして進化を続けているKIRINJI。フルオーケストラとの共演は、30年の活動の中で今回が初であり、指揮者の齋藤友香理、東京フィルハーモニー交響楽団を迎えて、さまざまな楽曲を披露する予定だ。

音楽ナタリーでは堀込高樹にインタビュー。選曲のポイントや普段のライブとの違い、本公演への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 油納将志撮影 / 石阪大輔

公演情報

「billboard classics KIRINJI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2026」

2026年8月28日(金)東京都 サントリーホール 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
チケット一般発売 2026年4月11日(土)10:00

<出演>
KIRINJI
指揮:齋藤友香理
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
編曲:山下康介 / 萩森英明

公演公式サイト

<主催>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
<企画制作>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)、ホリプロ
<後援>米国ビルボード、J-WAVE

オーケストラは考えたこともなかった

──今年の2月に千秋楽を迎えたバンド編成でのツアーは、躍動感あふれる最新アルバム「TOWN BEAT」の楽曲群を中心に、観客が総立ちになるほどの圧倒的な熱狂を生み出しました。そこから一転して、今回はビルボードクラシックスからの企画によるフルオーケストラ公演となります。お話が来たときは率直にどう思われましたか?

意外でしたけど、ここで受け入れてもらえるんだっていうのは非常にうれしかったです。

──以前からオーケストラと一緒にやってみたいという構想はあったのでしょうか?

いや、全然考えたことがなくて。これまでもドラムやベースがいて、そのコンボ形式の上にいろんな管弦楽器が乗るような、ライブの形態を拡張する形はやってみたいなと思っていたんですけどね。今回のようにリズム隊がいない、ドラムがいないという、いわゆる完全なクラシックの編成でやるというのは考えたことがなかったです。

堀込高樹

──近年のKIRINJIの作品は、まさに先のツアーでも体現されていたように、ビートを重視して作られたものが多いですよね。そこからバンドの要であるビートが抜けてしまうことに対して、どのようにアプローチしようと考えたのでしょうか?

ビートが抜けるとなると、選曲はけっこう限定されるんですよね。最近の曲とかはやりづらいなと思って。ただ、過去にはいわゆるビート方面に重きがあるわけではない曲もいっぱい書いていたので、そういう中から「これだったらオーケストラでやったらいい感じに仕上がるんじゃないかな」というものを選んでいきました。

気になる選曲のポイント

──そうした視点で過去の楽曲を振り返ってみて、最初にパッと「これはいけそう」とイメージできた曲はなんでしたか?

「真夏のサーガ」と「早春」ですね。このあたりはすごくオーケストラっぽいなと。あとは人気のある「Drifter」なども押さえたほうがいいだろうということで選んでいきました。

──選曲にあたっては、アレンジャーやスタッフとも話し合われたそうですが、高樹さんの中でボーカリストとしての条件もあったそうですね。

僕のボーカル1人でオーケストラとやることを考えたときに、コール&レスポンスがある曲は除外したんです。主メロがあって、別の追っかけのフレーズがあって……というふうに、コーラスの人がいて初めて成立するタイプの曲は、歌がクロスしてしまってやりづらい。だから、「1人で完結できる曲」ということを基準にふるいにかけました。

──一方で、これまでのKIRINJIのイメージからは意外な選曲もありそうです。

「これ、どうやってやるんだ?」っていう曲もないとつまらないと思ったので、エレクトロニクス中心の曲や、直線的なビートとトロンボーンのアンサンブルが印象的な曲なども選びました。ああいう曲を大編成でやったら面白そうかなって。また、オリジナル音源で冨田恵一さんに管弦アレンジをお願いした曲なんかもオーケストラ編成でやれたらいいかなと思っています。

──「時間がない」も現時点でのセットリストで選ばれています。この曲もかなりグルーヴィな印象がありますが、オーケストラでどう生まれ変わるのか非常に楽しみです。

原曲はファンキーですけど、アメリアッチみたいな「つんたんつんたん」っていう感じのビートに直してやるといいかなと思って、今デモを作っている段階なんです。とにかくファンキーなビートのままオーケストラでやるのはきっとやりづらいと思ったので、それは避けてということもありますね。

頼もしいアレンジャー

──そうした新たなアレンジのアイデアは、今回編曲を担当される山下康介さんと萩森英明さんともキャッチボールをしながら進めているのでしょうか?

そうですね。候補曲を聴きながら「これだったらできそうだな」みたいな話をしていって。お二人は「なんだってやりますよ、できなかったことないから」みたいな頼もしい雰囲気が出ていましたね。アレンジャーの人ってやっぱりスキルがありますし、場数も違いますから、なんとかしてくれるんですよ。原曲のハーモニーとメロディを生かして、いい感じにしてくれると思います。

──山下さんと萩森さんは映像音楽やオーケストラアレンジで数々の実績をお持ちです。クラシックのフィールドで活躍される方々との協業で、何か新鮮な驚きはありましたか?

すでにいくつかデモが上がってきているんですが、すごくいい感じでした。例えばある曲で「ホルンで始まるといいな」と僕が勝手に思っていたら、その通りホルンで入ってきていたり。細かい打ち合わせとか全然していないんですけど、クラシックの方って、情景を音楽的に表すような、写実的というかスケッチ的なことをされるじゃないですか。それがとてもよかったので、「ここ、おいしいからもうちょっと伸ばしてくれませんか」みたいなリクエストもさせてもらいました。

──情景を描写するという点では、高樹さんの書く詞の世界観とオーケストラの表現はすごく相性がよさそうです。

ポップス以上に、歌詞の反映をしてくれそうな気はしますよね。ポップスってオケを全部作ってから歌詞を書くこともざらですけど、今回はすでに詞がありますから。オペラや歌曲がストーリーに準じて総合的に作られるように、今回もしっかり齟齬がないようにやってくれているんだと思います。

堀込高樹

オケの中でも埋もれない発声の練習中

──今回は齋藤友香理さんの指揮のもと、総勢約60名の東京フィルハーモニー交響楽団を背にして歌うことになりますが、いつものバンド編成のときと歌う感覚はどう違いそうですか?

ドラムやベースを聴きながら歌う癖が染み付いているので、それが取っ払われてどんな感じになるか、まだピンと来ていない部分はありますね。バンドだと均一のリズムに乗るか、基本的にはリズムからずれないでやろうとしますが、弾き語りやオーケストラは、そのあたりがフレキシブルというか。ここを伸ばすとか、ここを縮めるとか、より有機的な表現になると思うんですよ。だからその点では、大編成でのオーケストラ公演というのは、語弊があるかもしれないけど、バンド編成よりも弾き語りを延長させた感覚に近くなるのかもしれませんね。

──KIRINJIはここ数年、全国のユニークな会場で弾き語りツアーを行われていますが、そこでの経験が今回の大舞台にも生かされるのではないでしょうか。

そうですね。弾き語りだと歌うしかなくなるので、歌の切れ際まで神経を抜かないようにするとか、歌に対する姿勢が昔よりもシビアになりました。自分の体をどうしたらいいのかとか、声をコントロールすることにすごく意識的になったんですよね。もし弾き語りを始める前とかにこのお話をもらっていても、きっと「無理です」とお断りしていたと思います。その経験があったからこそ、今回お受けできたんだと思います。

──オーケストラの中でご自身の声が埋もれないための、特別なボイストレーニングもされているとお聞きしました。

はい。生楽器が60個もあるわけで、その中で声が埋もれないようにするトレーニングをちょうどやり始めたところです。ベルカントのようなクラシック的な歌い方は僕にはできないし、曲にも合わないので、普段の歌い方のまま、オケの中で埋もれないパリッとした声が出るように、真ん中より低い声の帯域をしっかり鳴らす練習をしています。

丁寧に曲を作ってきたと実感

──今回の公演概要には「ポップスとクラシックの垣根を超えた特別な夜」と掲げられていますが、高樹さんがイメージする「最高の化学反応」とはどのような状態だと考えていらっしゃいますか?

アントニオ・カルロス・ジョビンのような形じゃないですかね。近代的なクラシックの和声とサンバの新しい解釈。クラシックの人が聞いてもシームレスに入れるし、大きな編成でやっても原曲のよさがしっかり伝わる。あれは1つの理想なんじゃないかと思います。

──結成から25年以上が経ち、常に新しい挑戦を続ける中で、今回のシンフォニックコンサートはKIRINJIの歴史においても非常に大きな意味を持つステージになりそうです。最後に、公演に向けた意気込みをお願いします。

今回、編曲者の方に細かく書いたコード譜をお渡しする中で、改めて自分の曲を振り返って「丁寧に作ってきたな」と実感したんです。元となる楽曲の解像度が粗かったら、オーケストラでやったときにガビガビになってしまいますからね。曲を作る際に積み上げてきたその細部が、オーケストラによって拡張されて伝わると思うので、曲の魅力がより増幅されるんじゃないかなと思います。歌もこれからしっかりと仕上げて臨みますので、ぜひ楽しみにしてください。

堀込高樹

公演情報

「billboard classics KIRINJI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2026」

2026年8月28日(金)東京都 サントリーホール 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
チケット一般発売 2026年4月11日(土)10:00

<出演>
KIRINJI
指揮:齋藤友香理
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
編曲:山下康介 / 萩森英明

公演公式サイト

<主催>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
<企画制作>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)、ホリプロ
<後援>米国ビルボード、J-WAVE

プロフィール

KIRINJI(キリンジ)

1996年10月に堀込泰行(Vo, G)、堀込高樹(G, Vo)の兄弟2人でキリンジとして結成される。1997年のインディーズデビューを経て、1998年にメジャーデビューを果たす。2013年に堀込泰行が脱退し、同年に新メンバー5人を迎えバンド編成のKIRINJIとして再始動。2021年からは堀込高樹のソロプロジェクト・KIRINJIとして活動しており、2026年1月に最新アルバム「TOWN BEAT」をリリースした。同年5月29日の金沢を皮切りに弾き語りツアー「KIRINJI 弾き語り ~ひとりで伺います」を、8月28日に東京・サントリーホール 大ホールで初のフルオーケストラ公演「billboard classics KIRINJI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2026」を開催する。