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木村徹二 風神雷神
ド演歌の皮をかぶった、何かまったく別のもの── 強烈な違和感の秘密は異例なリズムと懐の深さ
文 / ナカニシキュウ
ド演歌の皮をかぶった、何かまったく別のもの──そんな強烈な違和感で殴りつけてくる、極めて挑戦的な1曲だ。パッと聴いただけではそうは感じられないかもしれないが、無意識下で「どこか普通ではない」という奇妙な感覚を誰もが得るのではないだろうか。
何しろ初見の印象はひたすらド演歌である。津軽三味線や篠笛、鼓などの和楽器と、ストリングスやドラムス、エレクトリックベース、エレクトリックギターといった洋楽器が混然となった和洋折衷サウンドで勇ましく幕を開け、ハードロック / ヘヴィメタル直系の“泣きのギター”がそれに続く。イントロを数秒聴くだけで「ド演歌をやろうとしているんだな」と、作り手の意図が伝わりすぎるほど伝わる構造となっている。
歌パートに入ってからもその思想は継続される。まずAメロで歌世界への導入をじっくりと行い、調性感がマイナーからメジャー寄りになるBメロでは視点を変えてイメージを拡張。サビでは楽曲のメッセージを象徴的に凝縮させたシンプルなメロディと言葉が、木村の特徴的なアイアンボイスとともに確信をもって畳みかけられる。実父である鳥羽一郎を彷彿とさせる“海の男”を描いた力強い歌詞も含め、非常に演歌らしい演歌としてまずは響くであろう楽曲だ。
要するにほとんどの要素がとことんド演歌なのだが、唯一にして最大かつ大胆な逸脱点が歌メロのリズムにある。Bメロやサビの入り方に顕著なように、“拍の裏の裏”から始まる16分音符のシンコペーションが執拗なまでに多用されており、これは演歌としては極めて異例といっていい。
演歌とは基本的に民謡由来の“節の音楽”であり、“リズム音楽”ではないというのが一般的な考え方。つまり歌い手による“タメ”や“揺らぎ”が表現として重要視されるため、16分音符リズムの正確性を要求する本楽曲の西洋音楽的な考え方は、極端にいえば演歌歌手の創造性を奪うことにもつながりかねないのである。これを違和感なく“演歌”として自然に聴かせてしまう木村徹二というシンガーの異常なまでの大らかさと懐の深さを、嫌というほど味わえる楽曲と呼んで差し支えなかろう。
木村徹二「風神雷神」MUSIC VIDEO
- 木村徹二「風神雷神(タイプA)」
- 2026年2月11日(水)発売
/ 日本クラウン
[CD] 税込1500円 / CRCN-8823
- 木村徹二「風神雷神(タイプB)」
- 2026年2月11日(水)発売
/ 日本クラウン
[CD] 税込1500円 / CRCN-8824
木村徹二(キムラテツジ)
1991年7月11日に歌手・鳥羽一郎の次男として生まれる。幼い頃から演歌に惹かれ、高校生時代から多くのステージに立つようになり、2016年に実兄の竜蔵に誘われる形で兄弟ポップスデュオ・竜徹日記を結成。2022年11月にシングル「二代目」を発表し、演歌歌手としてソロデビューを果たす。2023年のTBS「第65回輝く!日本レコード大賞」で新人賞を受賞。2026年2月に4thシングル「風神雷神」をリリースした。
木村 徹二 - アーティスト情報 | 株式会社クラウンミュージック
木村徹二 (@kimura_tetsuji_) | Instagram
