再生数急上昇ソング定点観測 (2026年4月3週目) [バックナンバー]
ちゃんみなは自分の価値を自分で更新し続ける / 「最初はキュン!」に見る中島健人の自己演出力 / 「未完成婚姻論」なぜ国境を越えて支持された?
今、盛り上がっている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2026年4月17日 18:30 1
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月3日から4月9日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、13位に
timelesz「4分間だけ時間をください」ミュージックビデオ
15位には
BTS「Hooligan」ミュージックビデオ
18位に登場したのは
NiziU「Too Bad」ミュージックビデオ
29位には
アイナ・ジ・エンド「ルミナス - Luminous」ミュージックビデオ
多種多様な新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
ちゃんみな「FLIP FLAP」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場27位
発売予定のニューアルバム「LEGEND」からの先行シングルとして2月に配信リリースされた「FLIP FLAP」。この楽曲は、
「She’s a genius / She looks like a goddess」(彼女は天才、彼女は女神のように見える)といった誇張された賛美も、単なる自己肯定ではなく、外部から与えられるイメージへのアイロニーとして機能している。「本当のとこは誰も見てない」「小指の爪くらい」といったラインが示すのは、消費される“ちゃんみな像”と実像との乖離であり、表層だけがひとり歩きする現代的なアーティストの苦悩である。
その一方で、攻撃的な言葉遣いは単なる反発ではなく、自身を守るための防御であると同時に主体的に自分を定義するための手段でもある。否定や偏見を受けてきたからこそ、あえて強い言葉で“CHANMINA”という像を誇張し、評価の主導権を自ら握ろうとしている。つまり本作は、周囲の評価に揺さぶられながらも、そのすべてを飲み込み、自分の価値を自分で更新し続けるという意思を描いた作品であり、ちゃんみなという存在の現在地と覚悟を鋭く映し出している。
中島健人「最初はキュン!」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場59位
一方で「出逢わなければ始まらない この物語」や「君はヒロインで 僕はヒーローなんだ」といったフレーズからは、自分たちの恋を“物語”として捉える視点が際立つ。「フィクションなの?」という問いかけには、その恋が演出されたものではないかという不安と、それでも信じたいという願いが同時に込められているのだろう。
さらに、ストロベリーやチョコレートといった甘いイメージの反復は、恋の初期衝動の純粋さと、どこか作り込まれた理想像の両面を浮かび上がらせる。歌詞・サウンド・振付が一体となることで、“キュン”という感情は単なる言葉ではなく、体験として立ち上がるのだ。楽曲全体として、恋愛のリアルとフィクションの境界を遊びながら、その曖昧さごと楽しもうとする作品であり、中島健人という表現者のセルフプロデュース力が色濃く反映された1曲と言える。
Dannie May「未完成婚姻論」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場95位
その背景には、歌詞の“断片的に使える強さ”と“解釈の余白”がある。象徴的な「未完成なままでいい」は、恋愛にとどまらず自己肯定や未熟さの受容としても機能し、短尺動画やテキスト投稿に転用しやすい。また、「正しさなんていらない」といった価値観を揺さぶる言葉も、文脈を離れてなお成立するため、ネタと本音の双方で消費されやすい。さらに、“婚姻”という制度的で重い語と、“未完成”という不安定さの結びつきが強い違和感を生み、このギャップが拡散のフックとなっている。
なお、この曲は国内だけでなく韓国でもバイラルチャートの上位にランクインしている。これは「未完成でもいい」というメッセージが、完璧さを求められがちな社会的空気の中で共感を呼びやすいことに加え、日本語のままでも“雰囲気で理解できる言葉”として機能している点も大きいのではないだろうか。意味を厳密に把握せずとも感覚的に扱えるため、翻訳を介さず広がり、国境を越えて支持を獲得していると考えられる。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
バックナンバー
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音楽ナタリー @natalie_mu
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