muqueが2ndフルアルバム「GLHF」をリリースした。
昨年は年始早々から日本テレビ系「バズリズム02」の恒例企画「今年コレがバズるぞ!2025」での1位獲得、FM FUKUOKAでのレギュラー番組開始、大型フェス出演、単独の全国ツアーは完売と大躍進を遂げたmuque。一方で年末にはメンバーのLenon(B)が卒業し、Asakura(Vo, G)、takachi(Dr, Track make)、Kenichi(G)の3人体制でリスタートするなど、大きな転機を迎えてもいる。
2ndアルバムにはそんなmuqueの快進撃と葛藤をそのまま音楽として表現したかのような、振り幅の大きい楽曲10曲が収められている。音楽ナタリーでは新作のリリースを前にAsakura、takachi、Kenichiにインタビュー。新体制でのアルバム制作の全貌、そこに込められた3人のストレートな思いを語ってもらった。
取材・文 / 天野史彬
「STYLE.」が完成したときに全部のピースがハマった
──2ndフルアルバム「GLHF」、ものすごくパワフルなアルバムですね。1曲1曲、音楽性も表現されている感情も大きな振り幅があると思うんですけど、それでも全体を通して1本筋の通ったmuqueの人間味が伝わってくる。そんなアルバムだと感じました。まずはお一人ずつ、手応えを聞かせてください。
Kenichi(G) まさに2ndアルバム、という作品になったと思います。一昨年に1stアルバム「Dungeon」を出したあとの自分たちの物語があって、今年に入ってからは3人体制になった。そのうえで「新しいmuque、これからもよろしく」と言いたい。その思いはタイトルの由来になった「Good Luck, Have Fun」という言葉に重なるものでもあります。制作中には個人的にいろんな葛藤もありましたけど、それでも最終的にはtakachiとAsakuraが提示してくれる「今一番カッコいいと思うもの」に自分はどう応えるか、というところで自問自答し続けたなと思います。1曲1曲にパワーがこもった、自分たちらしさがみなぎった状態で世に出せるアルバムができました。
Asakura(Vo, G) 2曲目に入っている「Good Luck, Have Fun」はアルバムの表題曲に見合った曲だと思いますけど、私としては最終的に1曲目の「STYLE.」ができた瞬間に、このアルバムタイトルがしっかりと固まった気がしました。制作中はずっと水中に潜りながら、ぼやけた状態の「Good Luck, Have Fun」という言葉を見ている感じだったけど、制作の最後の最後で本当にクリアに見えた感じがして。もちろん、10曲のうちどの1曲が欠けてもこの言葉はぼやけたままだったと思いますが、最後までtakachiが妥協しないで曲作りをしてくれたおかげで、自分の中にあった霧が晴れたというか。自信が持てるアルバムになりました。
──「GLHF」、つまり「Good Luck, Have Fun」という言葉がタイトルになることはアルバムの制作途中でもう決まっていたんですね。そこに対しての確信が「STYLE.」ができたことによって持てたという。
Asakura そうなんです。
──takachiさんは、手応えはいかがですか?
takachi(Dr, Track make) いろんな葛藤があったし、作戦変更もたくさんした、そんなアルバム制作期間でした。「Dungeon」を作り始めた頃に比べてライブの回数も動員も増えたし、経験やスキルもついてきた。今回のアルバムの制作を始めた頃は、同業の人たちに「muque、ヤベエな」と思わせたいっていう気持ちもあったし、ファンの人たちの中のmuque像に応えなきゃという気持ちもあった。いろんな思いがある中で、肩をぶん回しながら曲を作っていたんです。でも、そうやって意気込みながら作った曲もカッコいいけど、なんのプレッシャーもない初心に帰って作った曲を求めているお客さんもいることにだんだんと気付いて。最初はスキルでぶちかまして、ライブでも盛り上がる曲をとにかく作ろうとしていたけど、途中からはもっとラフに、純粋に、自分たちがカッコいいと思うものを作ろうという意識に変わっていった。なので、このアルバムにはいろんな考え方がミックスされていると思うし、「この曲でいいんだろうか?」「このアレンジでいいんだろうか?」──そういうことを悩みまくった制作期間だったなと思います。
──その制作期間を経て、こうして収録曲10曲が並んだとき、悩みが昇華されたような感覚もありますか?
takachi あります。さっきAsakuraが言っていた「STYLE.」が最後にできた曲ですけど、もともとは違う曲が入る予定でした。でも、アルバムの完パケ1週間前くらいに僕から「曲を変えたい」とみんなに伝えて。肩をぶん回して作った曲も、ラフに作った曲もある──そうやっていろんな方向に向かった制作期間の自分たちの感情すべてを総括する曲が1曲あれば、このアルバムが完成すると思ったんです。なので「STYLE.」はまず「これが俺らのスタイルだ、ということを音と歌詞で伝える曲にする」というテーマを決めて、それをメンバーに伝えました。チームには「またtakachiが変なことを言い出した」と思われるかなとも考えましたけど、意外とすんなり「ここまで来たら、やろう」ということになって。Asakuraも同じことを言っていましたけど、「STYLE.」が完成したときに全部のピースがハマった気がしましたね。
──では「STYLE.」がなければ、もっと違う質感のアルバムになっていた可能性もあるんですね。
takachi そうですね。もともと入れる予定だった曲もいい曲ですけど、どちらかと言えばアルバム内のバランスを取るための曲という感じで。でも、もっと攻めた形でバランスを取りたくなっちゃったんですよね。それでできたのが「STYLE.」です。
Kenichiのテーマは「muqueのギタリストとはなんぞや」
──KenichiさんとAsakuraさんは、完パケ直前に「もう1曲作る」と言ったtakachiさんの申し出をどのように受け止めたんですか?
Kenichi 驚きはありましたけど、前向きでした。そのときに「こういうトラックを作りたい」というデモをもらったんですが、その説得力がすごかったので。これはもうやるしかないなと。
Asakura 私も、もともと入れる予定だった曲はアルバムには入らなそうだな、となんとなく思っていて。今思い出したけど、私も「別の曲やっちゃう?」って冗談で言っちゃったんですよ。忙しかったのに。私もtakachiと共犯ですね(笑)。
──Kenichiさんも制作期間中には葛藤があったと言っていましたが、それはどんなものだったんですか?
Kenichi 今回の制作で自分の中のテーマとしてあったのが「muqueのギタリストとはなんぞや?」ということで。楽曲によって自分の携わり方って全然違うんです。ギターでシンセっぽい音を作る曲もあるし、ソロをガッツリ弾いている曲もあるし、まったくギターを弾いていない曲もある。「こういうのってほかのバンドのギタリストはどう思うんだろう?」と考えることもあるんですよね。自分にとって核となるギタリスト像もありつつ、muqueのギタリストとして表現をしていくには一辺倒な考え方にならず、いろんなものを取り入れていかないといけない。そうやって自分の中にあるいろんな軸に向き合う日々でした。でも、いざ曲を作っていく中でtakachiと会話をして、イメージを共有し合いながらトラックの上にギターを重ねていくとなると、やっぱり楽しかったし、何より「トラックがカッコよくなるなら、そのために自分にできることをやる」という、その結論に自分はたどり着くんだなと思いました。
──今回は1曲目「STYLE.」のイントロに始まり、曲ごとにいろんな表情のギターが聴けるアルバムだと思いますが、そういう部分にはKenichiさんの「逃げずに向き合う」という性格が表れているんですね。
Kenichi そうですね。本当にいろんな角度からアプローチしています。それができるのは、takachiがイメージをちゃんと持っていて、それを共有してくれるからなんですよね。自分が触れてこなかった音楽をtakachiは共有してくれるし、そこから見えた新しい世界を、muqueを始めてからたくさん体感してきているので。どんな表情のトラックにでも合わせられるようになりたいし、なんならそれを超えるようなアイデアを出していけるようになりたいです。
フロントマンは引っ張るだけでもダメ、支えることも大事
──去年いっぱいでLenonさんがバンドを卒業されて、今作が3人体制になって最初のフルアルバムになります。3人で今後どのように活動していくか、という部分での話し合いはあったんですか?
takachi めっちゃ話し合いました。根本的な部分ですけど、周りに影響されずに、自分たちがカッコいいと思うものを作り続けることをやっていきたいという、そのスタンスは確かめ合いましたね。
Asakura 私個人としては、フロントマンとして引っ張るときは引っ張らないといけないし、行きたい方向性を含めて客観視することも大事だけど、その全部を踏まえたうえで「下で支えることも大事なんだ」という気持ちを改めて持ちました。ボーカルとして、何事があってもバンドの基盤を揺らがせてはいけない。楽しむことも、ケンカも、全部バンドの基盤の上でやらないといけない。「Dungeon」の頃は「とにかく自分ががんばってみんなを引っ張らなきゃ」と思っていたけど、最近は、引っ張るだけでもダメで、支えることも大事なんだと思っています。
Kenichi 新しいアーティスト写真は「三原色」というテーマで撮ったんです。「赤、青、緑の3色が合わさってmuqueの始まりの色である白になり、ここから新たな物語が始まる」というテーマ。3人体制になったことで、それぞれの個がもっと洗練されて、いい意味でぶつかり合いながら前面に出ていけばいいなと僕は思っていますね。
──3人体制になってから最初にリリースされたシングルが「DARK GAME」だったことには、バンドとしての何かしらの意思表示はありましたか?
takachi 「DARK GAME」は自分の好きな、原点と言えるようなサウンドなんですけど……好きすぎるがゆえに、作り始めるとバカになっちゃうし、やりすぎちゃうサウンドでもあって。なので、muqueを始めてからは封印している部分もありました。でも「いつかmuqueでこういう曲をリリースしたい」という気持ちはずっとあったんです。そのタイミングはいつなのかを考えていたけど、3人体制になったときにレーベルの人が「3人体制一発目はこの曲がいいんじゃない?」と言ってくれて、自分としても「挑戦してみようかな」と思いました。
──Asakuraさんとしては、「DARK GAME」の歌詞の世界観はどのようなところから生まれたものなんですか?
Asakura トラックを送られてきたときに、takachiから「洗脳感」みたいなキーワードを一緒にもらったんですが、それも踏まえて、私がこの曲のイントロを聴いたときに思い浮かんだのが「ハリー・ポッター」に出てくるヴォルデモートだったんです(笑)。そのイメージも持ちつつ「人間って、弱っているときにこそ洗脳されやすいのかな」とか、そんなことを考えて。「それが、あなたが本来求めている姿なんですか?」と語りかけるような曲になったらいいなと思いながら歌詞を書きました。
──それは、聴いている人に対する語りかけですか?
Asakura そうですね。「洗脳されて、人の言うことばかり聞いていて大丈夫ですか? 自分自身のことを見失っていないですか?」って。
次のページ »
すべての感情に「よろしく」と言ってあげたい






