世界各地のレコード店で毎年展開されるアナログレコードの祭典「RECORD STORE DAY」が4月18日に開催される。
今年で19回目を数える「RECORD STORE DAY JAPAN」のミューズを務めるのは、3年ぶり2度目の登場となる満島ひかり。彼女は今年の「RECORD STORE DAY」で、自身が敬愛する3人組バンド・ceroをサウンドプロデューサーに迎えた新作「踊るノアール / dröm」を発表する。
「RECORD STORE DAY 2026」の開催を記念し、音楽ナタリーでは満島とceroにインタビュー。「踊るノアール / dröm」はどのようにして作られたのか──満島とceroが考えるサウンドと言葉への眼差しを踏まえて紐解いていく。
取材・文 / 高橋圭太撮影 / 平間至
取材協力 / ELLA RECORDS VINTAGE
RECORD STORE DAY JAPAN
毎年4月の第3土曜日に世界で同時開催されるアナログレコードの祭典。2008年にアメリカでスタートし、現在世界23カ国で数百を数えるレコードショップが参加を表明している。日本での運営は東洋化成が担当。レコードショップで数多くのアーティストのアナログレコードの限定盤やグッズなどが販売される。また世界各地でさまざまなイベントも行われ、毎年大きな盛り上がりを見せている。
満島ひかりとceroの出会い
──満島さんがミューズを務める今年の「RECORD STORE DAY JAPAN」にて、ceroの皆さんがサウンドプロデュースを手がけた「踊るノアール」「dröm」のアナログ盤が発売されます。まず前段として、このようなコラボレーションが生まれた経緯について教えていただけますか?
満島ひかり カクバリズム代表の角張(渉)さんのことはよく知っていて、ずっと前に「いつかceroとお仕事をしたい」というお話をさせていただいてたんです。そのときは自分が歌うというよりも、「三浦大知くんの曲をceroさんが作ったらカッコいいはず!」って勝手に提案したんじゃないかな。で、それから時間が経ち、去年私が声優として参加した「ホウセンカ」というアニメーション映画の音楽と主題歌をceroが担当することになって。少し距離が近くなった感覚があったから、角張さんに「ceroと音楽やりたいです」と改めてメールをしました。
髙城晶平(Vo, G, Flute) 実はけっこう前にお会いしたことがあって、そのときも「ぜひ一緒に」という話はしてたもんね。僕としてはそんなふうに言ってもらえるだけでありがたかったし、時間が経っても覚えててくれたなんて。
──荒内さんと橋本さんは、満島さんの第一印象はいかがでした?
満島 私のこと知ってました?
荒内佑(Key) ハハハ、もちろんですよ。満島さんが出演されてた「トットてれび」が好きでよく観ていて、実際にお会いしたらドラマの印象とあまり変わらなかった。けっこうあのままだなって印象です。
橋本翼(G, Cho) すごく話しやすい方ですよね。一方でレコーディングのときは「ここをこうしたい」という意思がはっきりしていて、すごいスピードでアイデアが出てくるから、頭の回転が早い人なんだなと思いました。
ceroは“職人・アーティスト・風”
──満島さんご自身としても、具現化したいイメージは頭にしっかりあるタイプだと思いますか?
満島 自分がというよりは、客観的に“あり”と“なし”のジャッジをしてる感じですね。今回の制作だと音源のミックス作業の段階で自分の意見をお伝えさせてもらいました。お会いして曲を作っていくうちに、ceroというひと塊のものだったのが、だんだんと3人のキャラクターがイメージで見えてきたんです。そうやって照らし合わせて、やっと曲に対して実感できる目線を持てたというか。
──ちなみにceroの皆さん各々に対してはどんなイメージを?
満島 「職人」「アーティスト」「風」という感じでしょうか。荒内さんが家具や器を作ったとしたら、すごくカッコいいものができそう。作品の細かなディティールまでこだわってくれそうだから“職人”ですね。橋本さんは言語化しづらいんですけど、私の中で“アーティスト”という言葉がしっくりきます。最初の打ち合わせに、私の友達で奄美大島の島唄を歌う女の子が一緒に来てくれたんですけど、その子も「橋本さんって人は奥深いねえ」と言ってました。髙城さんは“風”のイメージ。自分の世界を持っている人だと思います。それに、一緒に制作していて「めっちゃceroだな!」と感じました。コーラスで髙城さんの声が入るだけで、一発で「わっ、ceroだ! 本物だ!」って。
髙城 コーラスの話で言うと、当初は満島さんの声をフィーチャーするべきだろうと、僕の声はちょっと控えめにしてたんですよ。でも、満島さんが「もっと上げてほしいです」って。最終的には同等な感じになって、「そうか、こういう感じを求めてたんだな」と理解しました。結果的にめちゃめちゃ共同作業という感じになりましたね。
満島 本当にありがとうございます。
満島ひかりが描きたかったもの
──「踊るノアール」と「dröm」については、どのような順序で制作がスタートしたんでしょうか?
髙城 去年の年末ぐらいにお話をいただいて、すぐに制作に取りかかりました。まずは3人それぞれで曲を作って、大晦日前には3曲とも提出したので、ceroとしてはかなり早い制作だったと思います。それから「歌詞はどうしましょうか?」という話になったときに、満島さんが「ちょっと書いてみようかな」と言ってくれて。
──満島さんはどんなことを想定しながら2曲分の歌詞を書かれたんでしょう?
満島 最初の打ち合わせで、なんとなく歌詞の内容は恋愛とかの方向じゃないよねって話をしたんです。当初は1人の……まだ学生とか仕事を始めたばかりで、自分を確立する前の人が駅からの帰り道に聴くような曲がいいな、とかいろんなアイデアを出しました。でも、いざ曲をもらって詞を書くとなると、イメージが変わってくるんですよね。
──最初の構想から逸れていった?
満島 大まかなイメージは同じだけど、もっと物語的なものを想定していたんです。でも、いざ書こうとすると「伝えたいことってホントに何もないかも」と思っちゃって。
髙城 ハハハ、めっちゃわかります。
満島 もうホントにナッシングだから。でも「踊るノアール」の詞の着想は、明確にありました。5年くらい前に、東京に来て初めて「東京大好き!」って思えた日があったの。
橋本 わりと最近なんだ。
満島 そう。沖縄や奄美大島の景色を見て育ったから、ああいった美しさを東京で感じたことがなかったし、東京に対しては“過去”だったり“ノスタルジー”のようなイメージを持っていたんです。でも、5年くらい前に自転車に乗って新緑の下を走ってたら、「なんて美しい!」と思えた日があって。疾走感と緑が目の前を流れて、都会の喧騒が混ざっていく感じ。荒内さんが作ってくれた曲は、めちゃくちゃキレイだけどエグみのようなものも感じられたので、その日の気持ちをもとにした歌詞が書けたらいいなと考えてました。朝と昼と夜、それに季節。そういったことをイメージして書こうかなって。
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自然と人間の行動=ダンス


