井上鑑のカセットブック作品「カルサヴィーナ」が、明日4月29日にCDとしてリリースされる。
「カルサヴィーナ」は、出版社・冬樹社が立ち上げたカセットブックシリーズ「SEED」の一環として、1984年に発表された作品。20世紀初頭に活躍したバレエダンサー・ニジンスキーをテーマに制作され、電子楽器に凄腕プレイヤーたちによる生演奏を精密に重ね合わせた先鋭的なサウンドの楽曲が収められている。
なお今回の再発にあたって、カセットテープにデジタルリマスタリングを施して新たなマスターを作成。このほか当時エンジニアとして作品に参加していた藤田厚生と井上による回想録が、付属のブックレットに掲載される。ブックレットには、リイシューを記念した特設サイトにアクセスできるURLを記載。このサイトでは、オリジナルのカセットブックに掲載された井上と
また「カルサヴィーナ」の再販について、佐野など当時の関係者によるコメントも公開。P-VINEの公式YouTubeチャンネルでは、本作のティザー映像を視聴することができる。
※動画は現在非公開です。
井上鑑「カルサヴィーナ」収録曲
01. プロローグ
02. アントルシャ・ディス
03. ア・キ・エス・パスポート
04. INNOVATIONS
05. ワスラフのいちご狩り
06. 第二幕のはじまり
07. 湖のピアノ
08. オンディーヌ
09. ア・キ・エス・パスポート(Version 2020)
井上鑑 コメント(CDブックレット内掲載『断章』<回想録>からの抜粋)
今回のCD版リイシューで「カルサヴィーナ」には新たな角度の光が当たることになる。その織りなす影は今という時代感覚とシンクロして、36年前のエネルギーを翻訳、もしくは増幅して伝えてくれるだろう。中には原語を体験したいと思って、ほぼ絶滅状態のカセットテープ版を探し始める強者も現れるかもしれない。作者としては両方を聴き比べてもらえたら最高なのだが、高望みというものだろう。
もっとも、大瀧さんだったら「鑑くん、、そりゃーね、そういうもんだよ」とほくそ笑みながら、CDとカセットブックの両方を差し出してみせるに違いないが。
佐野元春 コメント
再発された井上鑑『カルサビーナ』を聴いた。僕の記憶の彼方にあった懐かしい景色が蘇った。80年代前半。世界は新しい音楽の波動を感じていた。ピーター・ゲイブリエルやデヴィッド・バーンがデジタルとアフリカとの邂逅による化学反応を楽しんでいたように。ブライアン・イーノやフィリップ・グラスが電子の向こうにある広大な緑を再定義しようとしたように。同じ時代、日本では井上鑑がメンタルなダンスのためのユニバーサルな現代音楽を試みた。それが『カルサビーナ』だ。この偉業を新しい世代、特に若いクリエーターの人達に伝えたい。
柴崎祐二(音楽ディレクター、ライター) コメント
フュージョン、ニューウェーブ、現代音楽、民族音楽……それぞれの音楽要素が、井上鑑という巨大な才能によってメルトされ、境界線は何処へかと溶け出していく。
カセットブックという「あの時代」ならではの幸せな(しかし極めてニッチな)形態で世に送り出された本作は、長く一部マニアの珍重する音楽メモラビアとして古書店の隅で独特の虹彩を放ってきた。麗美でいて大胆、精緻でいて豪胆。秀逸なデジタル・リマスタリングを経て、いよいよ銀盤として姿を現したこのアルバムには、世界中の音楽ファンが大切に抱くべき「新しい過去」が宿っている。
松岡正剛 コメント
ほほう、カルサヴィーナで来たかと思った。ぼくが井上鑑に注目するようになったのは、この洒落たカセットブックからだ。バレエ・リュスのテラスに、寄せては返す音のフュージョンの波形が粋な山水画のように組み上がっていた。伝説誕生だった。
松本章太郎(和レアリック・ディスイクガイド監修) コメント
大衆歌謡曲史を支えてきた井上鑑の極めてプライベートな作品。カセットブックでのみリリースされていた知られざるインストゥルメンタル音源が世界初CD化。ニジンスキーに導かれるまま舞踏情景のなかを彷徨うエキセントリックでロマンチックな世界。和レアリック。
パトリック・サウス(ベーシスト、ライター)) コメント
『カルサヴィーナ』こそ井上鑑のエキセントリックで“ハイテク”かつ“ハンドメイド”な音楽的ヴィジョンを明確に示した作品といえるだろう。そして彼が最高の音楽を創りだしてきたアーティストであることの確かな証明だ!
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井上鑑のカセットブック作品「カルサヴィーナ」がCD化、佐野元春ら関係者のコメントも https://t.co/Gj6PvG5Yph