音楽ナタリー編集部が振り返る、2025年のライブ
石崎ひゅーい、Mrs. GREEN APPLE、Perfume、森高千里、ピーナッツくん、MONO NO AWARE、TEAM SHACHI、サニーデイ・サービス
2025年12月29日 18:30 8
語り継がれるような名演が各地で繰り広げられ、たくさんのオーディエンスがライブに熱狂した2025年。本稿では、この1年のさまざまなライブの中から音楽ナタリーの編集部員たちが“個人的に印象に残ったもの”を各々3本ずつ挙げ、その思い出を振り返る。
いつか、本当のアンコールを
文 / 丸澤嘉明
印象に残っているライブ3本
- 石崎ひゅーい「石崎ひゅーい LIVE 2025 - Season2 -」7月25日 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
ASOUND「Summer Dreams [Release One Man Live]」8月5日 東京・WWW - 佐野元春 & THE COYOTE BAND「YOKOHAMA UNITE音楽祭 2025 presents 横浜フォーエバー 45TH ANNIVERSARY TOUR FINAL MOTOHARU SANO AND THE COYOTE BAND」12月7日 神奈川・横浜BUNTAI
ずっとそう思っている。確かに、10年以上にわたってメジャーのフィールドでコンスタントに作品を発表し、ドラマや映画のタイアップ曲も多数ある。実績を見れば第一線で活躍していると言っていいでしょう。それでも、菅田将暉さんの代表曲になった「さよならエレジー」や映画「STAND BY ME ドラえもん2」の主題歌「虹」といったヒット曲を生み出すソングライティング力、あいみょんさんやアイナ・ジ・エンドさんらアーティスト仲間も絶賛する歌唱力、そしてライブでの唯一無二の表現力を考えると、「もっと売れるべき」と思わずにはいられません。
7月にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行われたライブは、ひゅーいさんが次のステージに向かおうとしているのを強く感じさせるものでした。ライブハウスを主戦場にしてきた彼が初めてホールワンマンを開催したのは2024年5月のこと。その年の暮れのインタビューで、彼はこんなふうに語っています。
「初期は『僕がこの物語の主人公だ』という意識で歌っていました。だけど最近は逆にしようと思っていて。『あなたがこの物語の主人公です』というふうに人にステージを与えられるような立ち位置から歌うことは、自分にとってかなり挑戦なんです」
LINE CUBE SHIBUYA公演でひゅーいさんは、その言葉を真正面から体現していました。まだ不慣れであるはずのホール会場の雰囲気に飲まれることなく、むしろ場をコントロールしながら観客1人ひとりを照らすようなライブだったと思います。終演後にその感想を本人に伝えると、「いやあ、まだまだです。難しい」と謙遜していましたが、その表情からは確かな手応えと、さらに上を目指す意思を感じました。実際、ライブ中に彼は「もっとすごいところにみんなを連れていきたい」と力強く宣言していたのだから。
石崎ひゅーいはアンコールをやらない。
そのことについて以前尋ねたことがあります。その答えは、本当に求められているというより、アンコールが予定調和になっていることへの違和感でした。もちろん、LINE CUBE SHIBUYAでもアンコールはなし。しかしいつか、もっとすごいところ──例えば日本武道館を埋める日が来たとき、万雷の拍手とアンコールに包まれてひゅーいさんが再びステージに現れる。そんな瞬間を想像するだけで、今から胸が高鳴ります。
想像を超えた景色
文 / 中川麻梨花
印象に残っているライブ3本
Mrs. GREEN APPLE「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD(フィヨルド)~」7月27日 神奈川・山下ふ頭特設会場 - ART-SCHOOL「ART-SCHOOL 25th ANNIVERSARY LIVE 2025『Our Beautiful Things』」3月16日 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
- GLAY「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」6月1日 東京・東京ドーム
「今日の景色は想像してたその日よりも、とっても素敵なものでした」
神奈川・山下ふ頭で行われたアニバーサリーライブの最後に、
“想像してたその日”とは、幼い頃からステージマンとして大きなステージでキラキラと演奏する景色を想像し、夢を膨らませていたという大森元貴の、頭の中に広がっていた未来である。結成当初から「NHK紅白歌合戦」出場を目標に掲げていた通り、Mrs. GREEN APPLEは国民的アーティストになることを前提に結成されたバンドだ。彼らは今年デビュー10周年を迎えたわけだが、この10年間を振り返ると、ライブハウス、ホール、アリーナ、ドームと規模が大きくなっていくライブの光景も、その年を代表するアーティストの象徴である「日本レコード大賞」の受賞も、目標にしていた「紅白歌合戦」出場も、街のあらゆるところでミセスの音楽が流れている風景も、大森の壮大なロードマップに描かれたものが1つひとつ現実になっていくのを見ているような感覚があった。例えば結成5周年を迎えて幕張メッセ国際展示場のステージに立ったとき、大森は「5年でこんなに素敵な光景が見れると思っていませんでした……と言ったら、嘘になりますけど」と笑いながらも話していたが、こちらも「それはそうですよね」とごく当たり前に同じように思ってしまう。Mrs. GREEN APPLEは“想像”を繰り返し、それをずっと叶え続けてきたバンドだ。
では「想像してたその日よりも、とっても素敵なもの」というのはどういう光景だったのだろうか。山下ふ頭に2日間で約10万人の人々が集まった、あの壮観な景色そのものだったのかというと、きっとそれは厳密には少し違う。彼の心を震わせたのは、おそらく人の数や会場の規模ではない。あの場に集まった1人ひとりがMrs. GREEN APPLEの音楽に感情を動かし、笑ったり泣いたり、救われたりしている光景が、かつて大森少年が描いてきた景色を超越していたのだろう。
2022年3月から続いてきたMrs. GREEN APPLEの“フェーズ2”は、今年12月31日をもって完結。2026年1月1日にいよいよ“フェーズ3”が開幕する。彼らはどのような地図を描いているのだろうか。ここから先に広がるのは、きっと想像以上の景色ばかりだ。
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