原因は自分にある。「文藝解体新書」インタビュー|“日本文学×四季”で誘う、ゲンジブ世界の深淵

原因は自分にある。が、3月11日に新作EP「文藝解体新書」をリリースする。

前作「テトラヘドロン」以来、約1年3カ月ぶりのEPとなる「文藝解体新書」。デビュー当初より、美しく印象的な日本語表現に重きを置いてきたゲンジブが今作で掲げたコンセプトは、ずばり「文学」だ。日本文学の名作4編を春夏秋冬と掛け合わせた4曲が制作され、梶井基次郎「蒼穹」と春を題材にした久下真音によるリード曲「ニヒリズムプリズム」や、☆Taku Takahashi(m-flo)提供による、遠藤周作「沈黙」と冬をテーマとした「Silence」などが収められている。

EPのリリースを記念して、音楽ナタリーではメンバー全員にインタビュー。今作の制作エピソードを中心に、今のゲンジブについて聞いた。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / YURIE PEPE

僕らの夢が広がった1年

──まず昨年の活動を振り返れたらと思うのですが、2025年はユニバーサルミュージックとパートナーシップを締結したり、自身最大規模となる東京・国立代々木競技場第一体育館でのワンマンライブ「序破急」を成功させたりと、かなり大きな動きがあった1年だったかと思います(参照:原因は自分にある。過去最大ワンマン「序破急」で“堕天”「待ってろよ東京ドーム!」叫んだ夢と流した絆の涙)。

武藤潤 僕は「序破急」が2025年の一番大きなイベントだったと思っています。ゲンジブ史上最大規模のライブで、そこへ向けたライブとの向き合い方は、以前とは全然違った感覚がありました。それを乗り越えて、振り返ってみたときに「あ、進化できたな」と感じられる出来事になったなと思います。

武藤潤

武藤潤

吉澤要人 2025年は、僕らの夢が広がった1年になったとすごく思っています。音楽番組に出演できる機会が増えたことで、世の中に出るチャンスもいただきました。「序破急」という大きなライブを実現させたことで、さらに大きなステージでライブをやりたいという思いも高まりました。たくさん夢を見させていただいて、夢がさらに広がって……もっと大きな場所で、もっとたくさんの方の目に触れるグループになりたいということを、今までよりも強く思えた1年だったなと思います。

──代々木第一に立つ経験は、これまでにも「EBiDAN THE LIVE」などで何度かあったかと思いますが、自分たちのワンマンライブでステージに立った、その景色はいかがでしたか?

小泉光咲 今まで「エビライ」などで立ったときとは見え方が全然違いました。どういう言葉で表現したらいいのかわからないんですけど……すごく込み上げてくるものがありました。だからこそ「しっかり見せたい」という気持ちが高まったし、さらに大きなステージに立ちたいという意欲も湧いて。それは「序破急」を終えて、すごく感じたことです。

大倉空人 光咲さん、熱いっすね……!

大倉空人

大倉空人

──では、7人の中の「序破急」の一番の思い出を1つ挙げるなら?

杢代和人 リハーサルでの出来事なんですけどいいですか? 初めての代々木第一でのワンマンということで、みんなすごく緊張感を持ちながら1つひとつ進めている中で……最後の見せ場で、ステージから飛び降りて消えるという演出があったんです。ステージ上空から“天使”として登場した僕たちが、堕天使となって最後は奈落に落ちるっていう。7人の呼吸をそろえて消えなきゃいけない、けっこうな見せ場なわけですよ。そのシーンのリハで、なぜか潤くんがよくわかんないタイミングで飛んで「ああっ!」って変な声上げて……。

長野凌大 「まだ飛んじゃダメだよ」と言い合ってたのに、潤くんの「うわあ~!」という声が聞こえて、「なんだ!?」と下を見たら彼が……。

杢代 一瞬「何が起きた?」みたいな状態になったわけですよ。僕はちょっと離れた場所にいたから「もしかして転んだ?」と心配してメンバーに聞きに行ったら「なんか、潤くんが飛んじゃったんだよね」って(笑)。

武藤 ジャンプした瞬間に「あ、カウント間違えた! しくじった!」と思って、声出ちゃった(笑)。

長野 しかも、間違えて飛び降りちゃったからって、そこからよじ登ろうとしてて。

一同 あはははは!

杢代 それが、すっごい思い出ですね!

武藤 次の日が本番だったんですけど、このミスを引きずってなかなか眠れませんでした(笑)。

小泉長野吉澤 (口々に)リハーサルでよかったよ、本当に。

杢代 潤くんのおかげで気持ちが引き締まったという思い出でもあります。

長野 だいぶ緊張感出たもん。

一同 あはははは!

杢代 もうさ、俺、潤くんのこの話大好きなんだよな。

武藤 「リハのときに……」って言い出した瞬間に「和人絶対この話するな」と察したよ。

吉澤 ……てか、これが僕らの一番の思い出になっちゃっていいの?(笑)

吉澤要人

吉澤要人

新たな表現に挑んだ“実験室”

──年末に開催されたFCツアー「GNJB FC Limited Tour Laboratory -」についても聞かせてください。このライブでは、ゲンジブにとって初となるバンドセットでのパフォーマンスが披露されました(参照:原因は自分にある。が“実験室”で見せた新たな姿、生バンドとの化学反応に沸いたFCツアーがお台場で大団円)。

小泉 バンドとやってみての第一印象は「音でか~!」でした。

武藤 音でか(笑)。

小泉 やっぱり迫力があるなって。僕らがしっかり表現して見せて、そこにバンド演奏があったら怖いものなしなんじゃないかと思えるくらい。すごく自信が持てました。

小泉光咲

小泉光咲

杢代 毎公演毎公演、新鮮で楽しかったです。ツアーが終わったあと、すぐに「絶対もう一度やりたい」という感想が浮かぶくらいでした。

小泉 バンドの皆さんがちょっとずつアレンジを加えてくれるから、聴いてるだけでも楽しいんだよね。

吉澤 バンドの皆さんと一体になっている感覚というか。僕らがアガると、バンドメンバーの皆さんも同じようにアガってアレンジを入れてくれたりするし、逆にバンドのアレンジで僕らがアガって、いつもよりもガンと、1個上に行ける感覚みたいなものもありました。

大倉 凌大は事あるごとに「バンドと一緒にライブがしてみたいです」と言ってくれてたんだよね。

小泉 それこそデビューしたての頃からじゃない?

吉澤 6、7年越しの念願か。

長野 そうですね。僕は普段からバンドのライブに行くのが好きで。もちろんジャンルにもよりますけど、バンドの生音ってお客さんのノリが違うし、僕らはアイドルだからこそ、音にこだわったほうがもっと魅力的にゲンジブの音楽が伝わるだろうなと思っていたんです。それがようやく念願叶いました。「Laboratory」、実験室というテーマだからこそ「絶対やりたいです」と希望を伝えて、新しい表現に挑戦できました。僕的に、メンバーに「やってよかった」と言われたら成功だなと思っていたので、みんながすごくうれしそうにしていたり「またバンドでやろう」と言ってくれたのがすごくうれしかったです。

大倉 思ってるよー!

桜木雅哉 バンドの生音で踊るのはどんな感じか想像がつかなかったけど、逆に踊りやすかったです。抑揚がはっきりしているので、音が自分の中に入ってくるような感覚があって。イヤモニの中でずっと波に乗ってるような感じがあって、音ハメの瞬間とかは特に気持ちよかったです。本当にダンスがしやすかった。

桜木雅哉

桜木雅哉

吉澤 また絶対にやりたいよね。実現できるようにがんばります。

言葉への意識すべてが変わった

──そして、2026年最初のCDとしてリリースされるのが「文藝解体新書」。「文学的である」というのは、原因は自分にある。の結成当初から“ゲンジブらしさ”を成す要素の1つでしたが、作品のテーマとして「文学」を掲げるというのは新しい試みかと思います。

長野 「序破急」や「Laboratory」といったライブを通して、2025年は僕らが今後表現していきたいものの展望が少し見えたような年になったので、このタイミングだからこそゲンジブにしかできないこと、トガることをやろうという話になったんです。ゲンジブの曲と言えば言葉遊びが特徴ですし、日本語の素晴らしさをもっと伝えていきたいという思いのもと、文学を1つの軸にして曲作りをしていこうと。その中でさらにコンセプトを構築したほうが面白いよねと、文学に四季を掛け合わせて。

長野凌大

長野凌大

大倉 そうね。

長野 4編の文学作品と四季を用いて、4組の作家さんに曲を作っていただきました。こういった僕たちのこだわり、ゲンジブらしさというものを、最近知ってくださった方にもずっと応援してくださっている方にも再提示する、という思いも込めています。

──凌大さんが今おっしゃっていた言葉遊びや言葉へのこだわりというのは、ゲンジブの楽曲を語るうえで欠かせないポイントかと思います。「文学的である」というアイデンティティと寄り添って約7年、皆さんそれぞれ、自分の中で言葉に対する意識の変化などはあったりするのでしょうか?

杢代 (神妙な面持ちで)マジで、ないですね……。

長野 なさそうだもん。

杢代 ゲンジブの歌詞で難しい言葉に触れているから、私生活ではどんどん簡単な言葉を使うようになっていってます。

大倉 確かになあ(笑)。

小泉 僕は日本語が多い曲がめっちゃ好きになりました。ジャパニーズカルチャーって感じの曲。

杢代 それ、普通にJ-POPじゃん(笑)。ジャパニーズカルチャーって言いたいだけ!

杢代和人

杢代和人

小泉 あ、バレた? だからそんなに変わりはないかもしれないです(笑)。

長野 僕はめっちゃ変わりました。言葉への意識すべてが変わったし、ゲンジブになっていなかったら、性格もこんな感じじゃなかったと思う。

小泉 えー、そうなんだ。

長野 ゲンジブになってから、言葉の重みというものを理解したんです。パフォーマンスとは別に、ステージ上から自分たちがどんな言葉を発するのか。自分たちの表現を、ちゃんとカルチャーとして伝えていきたい。自分たちがカルチャーになろうとしているからこそ、文化の深い部分までちゃんと知らないと恥ずかしいと思うようになった。だから、音楽や本や芸術作品、1つひとつを見たり聴いたりするときに「もっと深くまで知りたい」と思うようになったのは、紛れもなくゲンジブのおかげなんです。

大倉 素敵。

小泉 いやあ、僕もまったく同じです、凌大と。

杢代 僕も一緒で、言葉って大切だなって……。

小泉 さっきはうまく伝えられなかっただけだよね。

一同 あはははは!

──読書家の要人さんは、今作の「文学」というテーマをどう受け止めましたか?

吉澤 そうですね。「ゲンジブにすごく合いそうだな」と思いました。

一同 浅っ!(笑)

杢代 薄いし浅! 浅瀬すぎて貝がいっぱい出てくるわ。

吉澤 (笑)。文学をモチーフにするとなると、その作品自体の始まりと終わりがあるわけで。それを楽曲にして僕らが歌うという形なので、理解をさらに一段深めないといけないなと思いました。ただ曲を曲として歌うだけじゃダメ。僕らの表現を通して、物語を伝えなきゃいけないという使命感が生まれた気がします。