武道館には魔物が棲んでいる…?
──「日本武道館には魔物が棲んでいる」という話を聞いたことがあります。ミュージシャンが武道館のステージに立つとき、その場の空気にのまれて普段通りのライブができなくなるっていう。フミヤさんも武道館の魔物に遭遇したことはありますか?
遭遇したかどうかはわからないけど、やっぱりほかの会場とは全然違うし、始まったらすぐ終わっちゃう感じがする。自分では冷静でいるつもりなんだけど、たぶん思ってる以上に興奮してるんだね。「あれ? もう終わっちゃった」みたいな。
──それは111回やってても?
そうだね。やっぱりホール会場などと比べて音の響きが全然違うので、舞い上がってるんじゃないかな。
──それに対してどういう対策をしているんですか?
武道館でやるときはね、もう「なるようにしかならない」と思ってる。リハーサルが終わって「大丈夫かな?」と思っても、「ここまできたらやれることをやるだけ」ってある種割り切っていつもやってるよ。
──本来、日本武道館は柔道や剣道といった武道大会の決勝戦などが行われる場所ですよね。そういう意味で身が引き締まる感じはありますか?
やっぱり最後を飾るにはふさわしい場所というか、ある種ゴール的な感じはする。だからツアーでも、できれば最後に組んでほしい(笑)。
なぜミュージシャンは武道館を目指すのか
──日本武道館は2019年から2020年にかけて改修工事が行われましたが、昔と今で変わったところってありますか?
昔はシャワーの出が悪かったね。急に熱くなったりとか(笑)。今はだいぶよくなったけど。
──あははは。音響面は? 会場が八角形だから、音が反射してやりにくいという話を聞いたことがあります。
音は昔に比べるとだいぶよくなっていると思うけど、昔のことはもう覚えてないな。イヤモニもないからすごい環境でやっていたとは思う。ただ音の反射に関してはあんまり変わってないんじゃないかな。
スタッフ 武道館が変わったというより、機材が進化しているんだと思います。前回のライブのときも適したものを用意しますとイベンターさんが言っていたので。
──なるほど、PA機材が進化して、それを扱う運営スタッフ側の力量が上がっているということなんですね。フミヤさんは日本武道館にライブを観に行きます?
もちろん行くよ。プリンスとか、いろいろ観に行ったね。日本人だったら東京事変とかTHE COLLECTORS、ピアニストの角野隼斗さん、最近だととんねるずも行ったし(参照:「本当にありがとう」東京事変、武道館で有終の美飾り解散 / とんねるずが日本武道館で29年ぶりライブ、しかし本編は8分で終了)。
──たくさん行かれてるんですね! それにしても、なんでミュージシャンは武道館を1つの目標にするんだと思います?
なんでだろう。でもやっぱり「目指せ武道館!」っていうのはあるよね。キャパ的にもマックスお客さんを入れて1万人ちょっとで、そこを埋められたら「売れた」って言えるだろうし、これまで洋邦問わずいろいろなアーティストがやってきた場所だから、そういう意味でもやっぱり武道館を目指すのはあると思う。
──確かに武道館を満席にできたら胸張って「売れた」って言えそうですよね。あのー、僕が武道館でのライブを目指すにあたって、何かアドバイスをもらえたらうれしいんですけど……。
最近SNSでバズったりしていきなり武道館公演をやっちゃう子もいるでしょ? そういう時代だとは思うんだけど、俺としてはミュージシャンとしてちゃんと武道館を目指すんだったら、やっぱり段階を踏んでほしい(笑)。
──小箱のライブハウスからZeppクラス、ホールと地道に実力を付けながらということですね! 怒髪天やフラワーカンパニーズの武道館公演はすごく感動的だったみたいですもんね(参照:怒髪天、初武道館で男泣き「何やってもグッとくるわ」 / フラカン初の日本武道館ワンマンは満員に「次は50代のバンドにバトン渡したい」)。
コレクターズも30周年のタイミングで初武道館だったけど、もう日本中のコレクターズファンが集まっての大集会だったからね。ああいうのがやっぱり武道館らしい光景だと思うんだよな(参照:次なる目標は紅白&東京ドーム!コレクターズ、デビュー30周年で念願の武道館に立つ)。
武道館で「White Party」をやりたい
──今年6月に111回目の武道館ライブを成功させましたが、今後の目標はあるんですか?(参照:藤井フミヤが40年分の歌を届けた111回目の武道館、燃え尽きながらも再会を誓う「また一緒に遊ぼうぜ」)
やり続けられたらいいなってことだけだね。自分の肉体的なことはもちろん、お客さんが入ってくれるっていうことも含めて。
──今後武道館でやってみたい演出ってあります?
そうだなあ……「White Party」(※)をやってみたいね。
※チェッカーズ時代、来場者に「白い服」というドレスコードを設け、客席をスクリーンに見立てて映像を映し出した公演。
──ぜひ復活させて、フミヤさんが制作したアートを投影してほしいです!
あれをやったのは随分昔だけど、今のプロジェクションマッピング技術ぐらいの光量でできればもっときれいに映ると思うんだよね。還暦ライブのときはステージの床に映像を敷き詰めていて、それはそれで派手で面白かったけどね。
──ところでフミヤさんは来年4月から47都道府県コンサートツアー「FUTATABI」を開催しますよね。2023年9月から今年5月にかけても47都道府県ツアーをやりましたけど、なんでこんな短いスパンでまた全国を回るんですか?
全都道府県を回ったのは前回が初めてだったんだけど、すごく手応えを感じたんだよね。やっぱり近くまで行ったら来てくれるなっていう。「え? フミヤがそこまで来るんだ。じゃあ行こうかな」みたいな(笑)。あと、こういう時代なのでSNSでファン同士がつながって、開催地で合流とか、1人遠征とかもあるんだよ。「開演までに近くの有名なお寺に行きましょう」「コンサート後はここでごはん食べましょう」という感じで、ライブと旅行を兼ねてね。そうやってコミュニケーションが広がっている現象がすごく面白くて。あと年齢的なことを考えても、もう47都道府県ツアーはそうそうできない気がするから、やれるうちにやっておこうと思ってる。
──それで“再び”各地のファンに会いに行くんですね。
そうだね。あと実はこのタイトル、“F(フミヤ)”“UTA(歌)”“TABI(旅)”っていうダブルミーニングになっていて。前回もそうだったけど
──「TRUE LOVE」ですね!
そうそう。俺のファンは結局何回「TRUE LOVE」を聴くかっていう。“TRUE LOVEポイント”をいっぱい貯めるのが俺のファン(笑)。
──僕も貯めに行かせてもらいます!(笑) ツアーの日程はこれから追加発表されていくと思いますが、また日本武道館でのライブも期待しています。今日はありがとうございました!
藤井フミヤ
1962年生まれ、福岡県出身。1983年から1992年までチェッカーズのリードボーカルとして活動後、1993年11月にシングル「TRUE LOVE」でソロデビュー。人気ドラマ「あすなろ白書」の主題歌にもなった同作は200万枚を超えるセールスを記録し、オリコン5週連続1位という快挙を成し遂げる。2013年7月にデビュー30周年&ソロデビュー20周年を記念したシングル「青春」を発表し、大規模なアニバーサリーツアーを実施した。2020年に実弟である藤井尚之とのユニットF-BLOODの活動を再開。還暦を過ぎてもなお精力的にライブ活動を行っており、2025年4月から2026年にかけて全国47都道府県ツアー「FUTATABI」を開催する。日本武道館での公演数はチェッカーズ、F-BLOODも含めて111回を数える。
FUTATABI - 藤井フミヤ
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