キニナル君が行く!

キニナル君が行く! 第12回 [バックナンバー]

歌手の後ろにいるDJって何をしてるの?

DJ活動45周年のDJ KOOさんに直撃取材!

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ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

この間、あるグループのライブを観に行ったんだけど、DJの人がカッコよかった! ターンテーブルを使いこなして、MCでお客さんを盛り上げていて。今ではDJってJ-POPのグループでも当たり前の存在だけど、もともとクラブで夜通し音楽をかける人ってイメージがあるんだよね。僕がライブで観たDJとの違いがよくわからなかったので、DJ活動45周年を迎えたレジェンド・DJ KOOさんに話を聞いてきたよ!

取材・/ キニナル君 イラスト / 柘植文

そもそもDJって何?

──DJってカッコいいなあと思ってるんですけど、よくよく考えてみたらDJの人たちがいったい何をしているのか、ちゃんと理解していなくて。ズバリ聞きます! DJって何をする人なんですか?

音楽をかけて、たくさんの人に踊ってもらうお仕事だよ。

2024年12月に東京・ZEROTOKYOで行われた「TOKYO HARD GROOVE SESSION 24」に参加したキニナル君。

2024年12月に東京・ZEROTOKYOで行われた「TOKYO HARD GROOVE SESSION 24」に参加したキニナル君。 [高画質で見る]

──それはなんとなくわかります! もう少し具体的に教えてください!

DJには、大きく分けて2種類あるんだ。1つは“クラブDJ”と呼ばれるもので、DJが1人でお客さんの前に出て行って、いろんな人の曲を次々にかけて踊ってもらう。もう1つは“バックDJ”といって、DJがバンドの代わりに音楽を流して、ボーカリストやラッパーの伴奏のようなお仕事をするんだよ。

──僕がこないだライブで観たのは“バックDJ”のほうですね。スクラッチをしたりするのはどっち?

人によるかな。クラブDJでもバックDJでもやる人はやるし、やらない人はやらないからね。

──そうなんですね! クラブDJとバックDJは、どちらか専門でやるものなんですか? それとも、どっちもやる人が多いの?

けっこう分かれるんじゃないかなあ。ジャンルでいうと、ヒップホップやレゲエなどではバックDJ的なスタイルの人が多いと思うし、EDMやハウス、トランスといったクラブミュージック寄りのジャンルではクラブDJ専門っていう人が多い印象があるね。

──KOOさんは両方やりますよね?

そうだね。僕はDJを45年間やってきているんだけど……。

──45年! すごい! 45周年おめでとうございます!

ありがとう(笑)。僕がDJを始めた当初は、ずっとクラブDJとして活動していたんだ。そこから1990年代にTRF(※デビュー当初は「trf」表記)の活動を始めたことで、バックDJのスタイルも加わった。そのあたりから、その2つがミックスされたような自分のスタイルができあがっていった感じだね。

──例えばTRFの場合でいうと、KOOさんは具体的にどういう役割を担っているんですか? ステージを見ているだけだと、どの音がDJから出ているのか素人にはよくわからなくて。

TRFの場合は、バックトラックの音が全部DJから出ているわけじゃないんだよ。マニピュレーターという人が別にいて、その人がオケと呼ばれる基本のバックトラックを鳴らしてくれているんだ。僕はそのオケに合わせてスクラッチやエフェクトを入れたり、声を出してお客さんを盛り上げたりする役目をやっています。そういうMCスタイルのDJも最近はすごく増えていて、特に大きな会場ではMCで盛り上げることがすごく大事なんだ。それによって会場がどんどんひとつになっていって、よりライブ感が強くなる。

──なるほど! ベースとなるオケをマニピュレーターさんに任せることで、DJは楽器プレイヤーのように音を重ねたり、MCパフォーマンスに専念したりすることができるんですね。

そうだね。ただそれはあくまでTRFの場合であって、DJがすべてのオケを担うスタイルもある。R&B系のユニットなんかだと、そういうやり方をしている人たちが多いと思うよ。

技術が進歩しても根本は変わらない

──素朴な疑問なんですけど、DJって基本的にはレコードをかける仕事じゃないですか。ラッパーやボーカリストのバックでDJをする場合、普通にレコードをかけたら歌が重なっちゃいそうな気がするんですけど……。

いい質問だね(笑)。初期のヒップホップでは、ジャズやR&Bなどのレコードの歌のない部分だけをDJが2台のターンテーブルを使ってつないで繰り返していたんだ。“ブレイクビーツ”と呼ばれる手法だね。そのブレイクビーツに乗せてラップをする、というスタイルが1970年代にアメリカで生まれた。その後はシングルレコードに歌のないインストトラックを収録してリリースすることが一般的になったので、それを使ったりするようにもなっていったんだよ。

──確かに、今でもシングルCDにはほぼ「(Instrumental)」っていうトラックが入ってますよね!

なので、すごく即興性の高いやり方なんだ。その場で思いついたビートの組み合わせを急に試したり、途中にスクラッチだけでつなぐ展開を作ったり、DJの発想次第で大胆な音の演出を作っていくことができる。それによって、いろんなジャンルの音楽を組み合わせる面白さも新しく出てきたんだよ。例えばジャズのビートにロックのギターリフを乗っけてみたりとか、それまでには作り得なかったような音楽を自由に生み出していけるようになったんだよね。リミックス的な発想と言えばいいのかな。

──それがどんどん進化して、今はデジタルが主流だと思うので、さらに自由になっている?

そうだね。90年代ぐらいからサンプラーという機材を使うDJが一般化し始めて、それまでアナログだったものがデジタルに移り変わっていったんだ。さらに2000年代以降はPCと連動するシステムもどんどん出てきて、いちいちレコードやCDを用意しなくてもPCに入っているデジタル音源を呼び出せば済むようになったから、それまでの“2枚のレコードの組み合わせ”という制約もなくなった。DJのシステムが進化することによって、どんどんDJの自由度は上がっていったんだよ。

──「DJ」という言葉は「ディスク・ジョッキー」の略だと聞いたことがあります。でも今は「ディスク」が関係なくなっちゃってるんですね!

もちろん今でもディスク、つまりレコード盤にこだわっているDJもたくさんいるけどね。でも、やり方が変わってきているだけで、DJの根本は何も変わっていないんだ。最初に「DJって何する人?」と聞かれて「踊らせる仕事だよ」と答えたでしょ? その仕事を今はいろんな手法でできるようになった、というだけのことなんだよね。

DJ KOOさん

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