オオスカ(Vo, G)とマナミオーガキ(Vo, B)のロックバンド・Nikoんは、今最もライブをしているバンドと言っても過言ではない。
昨年9月にアルバム「fragile Report」をmaximum10よりリリースしてメジャーデビューを果たした2人は、同年10月よりアルバム購入者が無料で入場できる47都道府県ツアー「アウトストアで47」を開催すると、その最中に新たなツアーを次々と発表。全国のライブハウスでさまざまなバンドと競演し、4カ月で約80本ものライブをこなしてきたという。
まだツアーは続いているが、音楽ナタリーではひとまず47都道府県ツアーを完走したNikoんの2人にインタビュー。ここまでの手応えを聞きつつ、“ALL TOUR FINAL”として東京・Spotify O-EASTで行う単独公演「ふたり。」がどんなライブになりそうなのかを聞いた。
取材・文 / 三浦良純撮影 / 山口こすも
公演情報
“fragile Report RELEASE TOUR” FINAL
Nikoん単独公演「ふたり。」
2026年3月21日(土)東京都 Spotify O-EAST
O-EASTを選んだ理由
──O-EASTはこれまでのライブ会場からかなりスケールアップした印象ですが、ここでワンマンライブをやるというのはいつ決まったんですか?
オオスカ(Vo, G) 情報解禁自体は遅かったですけど、O-EASTでやるのは、47都道府県ツアーの前に決まってたんですよね。O-EASTに向けて、ツアーをどう作っていくか考えていった感じで。これまでに渋谷CLUB QUATTROとかでライブをしていて、順当に次の会場を考えたらLIQUIDROOMなんですけど「現実的すぎるな」って話になり、スタッフからO-EASTはどうかって提案があって。俺もO-EASTでわりといろんなバンドを観ていて、なじみのあるライブハウスだからいいなって。O-EASTを超えてZeppとかになっちゃうと、もうライブハウスってよりは、なんかこう……“空間”って感じになっちゃうんで、O-EASTが一番しっくりきた感じでしたね。
──無難な選択肢は選びたくなかったと。
オオスカ まあ無難なところなんて自分たちにはないんですけど、自分たちが想像できないようなところでやってみたかった感じはありました。
オーガキ(Vo, B) 想像つかないほうが面白そうっていうのは自分も思ったんで、特にそれに反対するとかはなかったです。もうクアトロくらいから自分としては「デカい」から、あんまりその上がないというか「もっと大きいのか、へえ」ぐらいの感じです。
──ここまでのツアーはO-EASTを目指して走ってきたと。
オオスカ ツアーをやることでお客さんをどれくらい集められるかっていうのももちろんあったし、O-EASTでやってる自分たちをお客さんが観て「やっぱO-EASTじゃなくね?」ってならないようにしたいなと思いましたね。1年前とか話が出た頃はO-EASTのステージに上がっても、そんなにいいライブができると思えなかったんで。でも、それが今は全然違う。
47都道府県ツアーはもう1回やる
──ツアーはまだ続いているわけですが(※取材は2月末に実施)、ひとまず47都道府県ツアーを終えたということで、率直な感想を教えてください。
オーガキ 「まだ終わらない……」みたいになるかなと思ってたんですけど、行く土地それぞれでハコとか対バン相手が違って、毎回なんかしら面白いことが起こるから、気付いたら終わってましたね。もちろん体力的なしんどさはありつつ、ずっと充実してました。バンドとしてマンネリのタイミングはあったかもしれないけど、私個人としては、自分がフロントマンでメインボーカルを務めるっていう今までやったことない課題が目の前にあったんで。ずっと「ヤバい、ヤバい」って追われてる感じでしたね。
──オオスカさんはどうですか?
オオスカ 「これでなんか変わるな」ってところと「別に全然変わんねえな」って部分が半々だったかな。達成感半分、歯がゆさ半分。47ツアーで自分の世界がめちゃくちゃ広がって大きく変わるかなと思ってたんですけど、なんかそういうことでもないっていう。ツアーはいろんなところにあるちっちゃい世界をつなげていくみたいな作業で、それって別に何か変わっているわけではなくて、知らないものを知っていく感覚なのかなと思った。今回のツアーでライブハウスに初めて来たって人がいたり、しかもそれが40歳とか50歳とかだったり、そういう手応えもあったんですけど、ムーブメントみたいなものを起こせたかというと、そういうこともなくて。これ1回じゃ世界は何も変わんないんだなってことはすごく思った。でも、その一方でこれから何かが変わっていくのかもなっていう予感は大きくあって。だからやり続けないとダメなんだなって思ったっすね。
──先日の東京ファイナル公演で「また47都道府県ツアーをやろうと思ってる」とおっしゃってましたよね。
オオスカ はい。今の俺らがもう1回47都道府県を回ったら、また話が変わってくるから。今回は俺たちも初めて行く土地があって、初めて出会うバンドがいて、「知っていくツアー」だったけど、次は本当に「届けるツアー」になると思うんですよ。関わる人間とか自分の手ですくい取れる人間の数が増えて、ツアー自体がもっといいものになる予感がある。せっかくまたやるんだったら、世界を変えられるだけのエネルギーみたいなものが欲しいなと思ったりしますね。
特に印象に残った都道府県は?
──47都道府県を回った中で、特に印象に残っている場所はありますか?
オーガキ 青森の八戸 ROXX。
オオスカ 言うと思った。
オーガキ ROXXは、けっこう辺鄙な場所っていうか、周りが真っ暗なスナックビルにあるバーみたいなライブハウスなんですけど、めちゃくちゃ温かかった。実家感がすごくあって、こんなにほっこりできるライブハウスもあるんだなって。お客さんの雰囲気も含めて居心地がよかったです。店長のユキさんがめちゃくちゃバンドに愛のある人で、前身バンドのTeen Ager Kick Ass時代にオオスカが来たことも覚えていてくれて。
──ツアーはそういう現地の人との出会いから得られるものも大きかったんですかね。
オオスカ そこしかないんじゃないですかね? 結局そこに誰がいて、どういうやつらが観に来るかの違いしかないし、人に出会いに行ってるだけ。俺が一番印象に残ってるのは、本州で最後に訪れた鹿児島ですかね。鹿児島はペヤング(オーガキ)の地元なんで、こいつの友達がすごく多く来てくれたし、去年の移住ツアー(参照:Nikoんが初のロングツアー開催、期間中はツアー先に部屋を借りて移住)のときに仲よくなった俺の友達も来てくれて。鹿児島に着くまでにライブが続きまくってて、たぶん20日で18本くらいやってたんですよ。その中で摩耗していくっていうかマンネリみたいな感覚はめちゃめちゃあって。曲が急に増えるわけじゃないし、メンバーが急に増えるわけでもないし、劇的に何かが変わっていくわけでもない。それで自分が空っぽになるんですけど、出会った人たちから得たものを入れ直すことでまたライブをする、というのを半ば強制的にやれた。2ndアルバム「fragile Report」の曲はペヤングがメインボーカルなんですけど、その歌を待ち望んでいるお客さんがすごくいる感じが鹿児島ではダイレクトに伝わってきたのもすごくよかったな。
──オーガキさんも自分の歌が待ち望まれていることを感じましたか?
オーガキ 全然思わんかった。
──あら。
オーガキ 鹿児島のライブを観に来てくれた後輩に「オーガキさんは歌の技術とかあるけど、俺はオオスカさんの歌が聴きたい」って話を1時間くらいされて。でも、自分の身近な後輩にそういうことを言ってもらえて、響いたというか、まだまだがんばんないとなって思えた。やっぱり自分を昔から知ってる地元のお客さんとか後輩とかにリアクションをもらえると、自分がどれくらい成長できてるかわかるんで、そういう点ではすごく意味があったなって思いますね。
各地の集客の差から見えてくるもの
──今回、特設サイトで各公演の申し込み数が見えるのがすごい大胆で面白い試みだなと思いましたけど、見ているとやっぱりかなりバラツキがありますよね。お客さんの多寡がライブに影響することはありましたか?
オオスカ 全国各地を回ったら、どこが一番来るんだという実験的な試みで。少ないほうが盛り上がったな。
オーガキ 私は数字をそんな見なかったな。
オオスカ 俺はわりと見てた。数字の理由を知るのが面白かったから。徳島とかこれまで1回もライブしたことなかったのに20人くらい応募があって「なんでだろう?」と思ったんですけど、行ってみて、お客さんの顔や反応を見てみたら、なんとなくわかった。岡山とかもそう。数字の差は人口密度の違いがもちろん大きいけど、「なんでここにこんな来んの?」みたいな場所って、やっぱりそれだけ音楽カルチャーというかライブハウスに遊びに来る文化が根付いてるんですよね。逆に文化がない場所は飢餓感があって、5人しか来てなくても、その5人の熱量というか濃さがあるんで、それはそれで面白かった。
刺激を受けた対バン相手は?
──全公演が対バン形式でしたが、特に刺激を受けたバンドは?
オオスカ 対バンのブッキングは基本的にハコにお願いしてるから、顔なじみのバンドもいたけど、ほぼほぼ初対面で、みんなから刺激をもらってましたね。ペヤングが話してた青森のROXXで競演したTHE.VISITとかはこのツアーじゃなかったら絶対に知り合うことはなかったし、ヤバかったですね。7年間で17回しかライブやってないらしいんですよ。
──Nikoんとは逆ですね。
オオスカ そうですね。新鮮な気持ちでライブしたいから、自分たちが本当に出たいイベントしか出ないようにしてるらしくて、そういう道を選んだ分のピュアさがありました。
オオスカ ただ、一番度肝を抜かれたのは、神戸のBLUEPORTで出会ったschizophragm(スキゾフラム)かもしれない。自分と同い年の女の子たちのスリーピースバンドで、どういう音楽を作って、どういう場所でやるかとかちゃんと考えてる人たちだから、メジャーデビューしてる俺らのことを警戒してる感じだったんですよ。でも関わってみたら相手も変わって、俺らも変わって。殴り合って一番仲よくなる少年マンガみたいな展開がありました。
オーガキ 今挙がった2つのバンドはホントすごかった。あと新しく出会ったバンドで言うと、岡山で対バンしたヨークシンはすごい元気というか。岡山で今勢いのある若手っていうポジションのバンドだと思うんですけど、お客さんのおじさんたちもその勢いに活性化された感じで元気だったのがよかったし、ヨークシンのおかげで岡山っていい場所なんだなと思いました。
──ほかのバンドから学んで取り入れたことはありますか?
オオスカ めちゃめちゃあるけど、その都度取り入れすぎてて、いちいち覚えてないかな。ホントにちっちゃいことですよ。演奏中の所作とか「ここはそんなMCしなくていいな」とか、それくらいのこと。この歳になって根幹を変えるってのも変な話だし、各地で出会う達人たちの技をちょっとずつ実験的に盗んだり、使ったりして自分に合うものを見つけていくツアーではあったかな。
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Nikoんが「今一番カッコいいバンド」だと言える理由




