名古屋市在住のシンガーソングライター・カズミナナが、2月25日に新曲「reflected」を配信リリースした。
小学生のときに作詞作曲を始め、アメリカ・ポートランドの高校を卒業後にはロサンゼルスの音楽専門学校で学んだ経歴を持つカズミナナ。NEWSに楽曲「白」を提供するなど、ソングライティングの才能が注目を浴びる中、2023年に本格的な音楽活動を始動させた。
そんな彼女の才能にかねてより注目し、たびたびピックアップしてきたのが地元のラジオ局であるZIP-FMだ。カズミナナというアーティストの魅力、そして新曲「reflected」の聴きどころを探るべく、音楽ナタリーでは彼女と縁が深いZIP-FMナビゲーターの小林拓一郎、白井奈津、町田こーすけによる座談会を企画。これまでの関わりの中で感じたカズミナナの素顔やアーティストとしての真価、「reflected」から受け取ったメッセージなどを存分に語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一撮影 / R!N
歌うために生まれてきた人
──皆さんはカズミナナさんのことをよくご存知だと思うので、これを読んでいる皆さんに彼女がどんな人柄でどんな魅力の持ち主なのかを、それぞれの視点でお話していただけたらと思います。まず、皆さんがZIP-FMでナビゲーターを務める中での、カズミナナさんとの関係性や彼女に対するファーストインプレッションを聞かせていただけますか?
白井奈津 私は毎週日曜日に「FIND OUT」という番組を担当しているんですけど、その中でナナちゃんにはマンスリークローザーとして、彼女の曲でオンエアを締めくくる形で登場してもらいました。ナナちゃんは今もそうですが、いい意味でどこかつかめない部分があって。かつ、楽曲としゃべっているときの印象がまったく違って、普段はほんわかしてるのに急に焦らなくていいところで焦り始めたり、逆に焦るであろうところですごく落ち着いていたりと、不思議とずっと目で追ってしまうところが魅力かなと思っています。
町田こーすけ 僕は「SUPER CAST」という月曜から木曜までの帯番組で火曜日を担当していて、かれこれ2年くらい毎週のようにナナちゃんに出てもらっているんですよ。その中で感じたのは、おしゃべりは苦手なのに歌うとすごく流暢に思いを伝えられるという。本当に歌うために生まれてきた人というイメージですね。
白井 トークと歌とで、全然違いますものね。いきなりスイッチが入るというか。
町田 そう、急にカチッと切り替わるんで、近くで見ていて驚きますよ。
小林拓一郎 ナナちゃんはアメリカ・オレゴン州にあるポートランドの高校を卒業しているということで、僕に関してはそこでのつながりが強くて。僕もオレゴン州に留学をしたことがあって、今も毎年ZIP-FMのリスナーさんとポートランドに行くツアーをやっているんです。だから、あの町並みの雰囲気や現地のカフェで流れていそうな音楽とか、そういうところでナナちゃんとは共通言語があるんですけど、僕の中ではお二人が抱いているような「おしゃべりが苦手」みたいな印象があまりなくて。逆に、「ポートランドってこうだよね」とかそういう話で盛り上がることが多いので、好きなことに関して語る力はあるんだろうなと、今話を聞いていて感じました。
白井 確かに。
町田 それはマジでそうかも。
小林 映画に関しても饒舌だよね。
町田 確かに、映画のことになるとナナちゃん、会話が止まらなくなりましたね。「ゴジラ」が大好きと言っていました(笑)。
白井 あと「ジュラシック・パーク」とかね。
町田 そうそう!
小林 そういう好きなことに関しては、言語化が上手なんだよね。
白井 しかも、早口になりますし(笑)。
町田 オタク気質なんでしょうね。
小林 なので、僕はポートランドや映画など、好きなことだけについて話してもらって、そこから楽曲へとつなげているから、しゃべりが苦手という印象があまりないんです。
やり遂げる覚悟
──なるほど。今の映画の話題みたいに、ふとした瞬間に見つけた彼女らしい個性や、印象的なエピソードって何かありますか?
町田 ナナちゃんは弾き語りのカバー曲をSNSにアップしているんですが、1曲上げるのに100テイクくらい撮ってるそうで。
小林 えーっ!?
白井 そんなに?
町田 と、本人が言ってました。成功したところだけをつまんで編集するんじゃなくて、1テイクで100点を取りたいからという理由で撮り直すらしく。そういうこだわりがあると聞くと完璧主義なのかなと思いますよね。先日もある動画に対して、「あれは何テイクぐらいだったの?」って聞いたら「120テイクでした」と言ってましたから。
小林 そんなに歌ってるんだ。
白井 集中力がすごいんでしょうね。普通だったら、そこまでやり続けられないじゃないですか。
小林 僕だったら途中で「もうここでいいか」と切り上げるか、公開すること自体を断念するよ(笑)。
白井 自分の中に絶対的な正解があって、そこにたどり着くまではやり遂げるという覚悟があるのかな。私の場合は「FIND OUT」に出ていただいたときに、最初の週と最終週に生演奏をしてもらったんですけど、1週目はギターの弾き語りで、最終週はピアノでの弾き語りだったんですね。最後の週は彼女も番組に少し慣れてきた様子だったけど、1週目のときはギターを抱えながら縮こまっている感じだったんですよ。正直、最初は「このあとの生演奏、大丈夫かな?」と心配していたんだけど、演奏が始まった瞬間に肩の力がふっと抜けたというか、見るからにリラックスしていて。急にゾーンに入って、素敵な弾き語りを披露してくれたことは、今でもよく覚えています。で、終わるとまた緊張した様子に戻るんですけど(笑)、そういうところにも彼女らしい根性みたいなものを感じましたね。
小林 ライブでもそうですよね。僕は豊川にバスケットコートを作って、その横にカフェを併設してるんですが、そのカフェでナナちゃんにライブをしてもらったことがあって。その途中で1人語りみたいになって、僕が聞く限りでは違和感はまったくなかったんだけど、本人的には「もうちょっとまともにしゃべればよかったです」みたいなことを言っていたので、ドキドキしていたんでしょうね。そんななのに、歌になるとCDを超えるクオリティで聴かせるという。
町田 根っからのアーティストなんでしょうね。
小林 かもしれない。歌っているときのほうが落ち着くみたいな、そういう感じがしますものね。
第1声から引き込まれる、歌声の魅力
──では、アーティストや表現者としてのカズミナナさんの魅力は、どういったところでしょう。
町田 僕は毎週、番組中に目の前で歌ってもらっているんですけど……素人みたいなこと言いますけど、歌がめっちゃうまいんですよ。もう2年くらい一緒に番組をやっているのに、初めて出会って恋に落ちるぐらいの感覚で、何回聴いても新鮮なリアクションができるぐらい毎週「本当にうまいな」と感じますから。声にすごく透明感があって、線が細いイメージなのにめっちゃパワフルっていうところが、ナナちゃんの個性なのかなと思います。
白井 いつも思うんですけど、最初の1音、1言目でもう魅了されちゃいますよね。発した瞬間に周りの目の色がパッと変わるぐらい、グッと引き込まれちゃう。
小林 僕は映画を観ているような感覚になるというか。彼女は映画が好きで、おそらく映画音楽もたくさん聴いていると思うから、その影響ですべての曲に物語の世界に連れていってくれるような第1声があるのかなと思っています。
──歌声やニュアンスの付け方が、ちょっと日本人離れしているところがありますよね。
小林 そう、洋楽的なんですよ。僕も以前本人に伝えたことがあるんですけど、日本では見られない壮大な草原みたいな景色が浮かんでくる。
白井 ディズニーのプリンセスが歌い始めると、周りに鳥や動物が集まってくるみたいな、そういう感じに近いというか。歌った瞬間に、すべての生きものが彼女に惚れてしまう、そういう魅力がある。あと、空気も味方にしますよね。吸って吐いて出る音だけじゃなくて、空気に乗ったときの彼女の声が本当に素敵すぎて、いろいろ含まれているというか。
町田 そういう意味で言うと、空気を浄化してくれるんでしょうね。聴いているだけで心洗われて「俺、もっとちゃんとしないとな。明日からもっとがんばろう」って思わせてくれますし(笑)。
──歌詞に関しては、耳に入ってくる言葉などで彼女らしいなと感じる瞬間はありますか?
小林 今回の「reflected」の、最後のほうに出てくる「目 鼻 口 声 みんなでお揃いあぶれていく私 もう怖くはない」に関してなんですけど……みんなが「こっちだよ」と言っていることに対して、たぶん乗り切れない彼女が絶対にいて。そのことを怖がっていた時代もあっただろうけど、いつからか「でもそれでいいんだよ」という自己肯定が始まった力強さがあるなと思う。またポートランドの話に戻るんですけど、ポートランドってもともとアメリカの中でも変人が集まるところで、「Keep Portland Weird(ポートランドは風変わりなままで)」という標語があるくらい「変わったやつ大歓迎」みたいな風土があるんですね。ナナちゃんとも「ポートランドのそういうところっていいよね」という話で盛り上がることがあるので、彼女が学生時代に感じた自分のことを肯定してくれる空気感みたいなものを、今同じようなことで悩んでいる人たちに伝えているんじゃないかなと感じるんですよね。
白井 確か、ポートランドに行く前の自分はすごい引っ込み思案だったという話を、ラジオの中でもしてくれたことがあって。ポートランドに行ったことをきっかけに変わったがゆえに、どっちの気持ちもわかるんでしょうね。いつも心の奥のほうにあって人には言わないんだけど、自分の中でちょっと渦巻いていたり、ちょっとコンプレックスになっていたりする思いや憂いを、彼女は楽曲の中でまとっている印象もあります。で、そういう感情を難しい言葉じゃなく、でも直接的でもない絶妙な言葉で表現してくれているんですよね。
小林 しかも、決して文字数が多いわけでもないし。
白井 そう。単語単語で表現している感じが強い。
小林 行間に込めた思いが強いんじゃないかなとは思いますね。
──日本語だと場合によっては説明的になりすぎてしまうけど、カズミナナさんの歌詞は小林さんがおっしゃるように少ない文字数で行間に余白を持たせている。その結果、聴いた人それぞれが違った感じ方をできるのかなと思いました。
小林 確かに。「reflected」の最後だって「鏡映しの世界 迷いなく さよなら」って、もうこれだけで完結してるからすごいなと思うし。
白井 ほかのパートにも出てくる言葉を、最後に違って聞かせる展開もすごいですよね。
町田 あと、今までのナナちゃんの歌詞には英語のフレーズが含まれることも多かったけど、「reflected」は圧倒的に日本語が多いんですよね。自分の世界観とかアメリカで培ったものはエッセンスとして残しながらも、今回は日本語で勝負したいという覚悟があるというか。腹をくくったなと感じました。
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最大のポテンシャルを出し切る、進化の幅


