左からU-zhaan、小宮山雄飛。

U-zhaanが食べて聞く「カレーと音楽」 第2回 [バックナンバー]

小宮山雄飛が問う「そもそもカレーってなんですか?」

目に見えないものを組み合わせて作る、音楽とカレーの構造

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ユザーンも大人になったな

U-zhaan 雄飛さんのレトルトカレーを販売してるサイトに「『スパイスが発する“香り”という目に見えないものを組み合わせてつくるカレーと、同じく目に見えない“音”を組み合わせる曲作り。どちらもよく似ている』と考える小宮山」って書いてあったけど。

小宮山 声に出して読むのやめてよ。

U-zhaan 実際、レトルトカレー作りと曲作りは似てた?

小宮山 ミュージシャンって、曲を作るときになんとなく絵が見えてるじゃない。ベースがこう鳴って、そこにギターがこう被って、とか。その絵が、カレーを作ってるときにも見えるんだよね。この具材は大きめに切って、これは深めにローストして、もう少しクミンを入れて、とか。完成系を思い浮かべたときに内部の構造が見えてくるくらいの経験を積み重ねてきたものが、僕の場合は音楽とカレーだったという感じ。

U-zhaan なるほど。

小宮山 車でも映画でもスポーツでも、きっと同じだと思う。車好きの人は1回乗っただけでギアがどうだとかタイヤがこうだとか瞬時にわかっちゃうんだろうし、スポーツチームの監督なんかも、まさにそういうことがわかるからこそ戦略を立てたりできるんだろうし。

U-zhaan レトルトカレーを僕と共同プロデュースしてる石濱匡雄さん、彼もミュージシャンだから音楽とカレーの両方に造詣が深いタイプの人で、商品開発中には音楽に例えたやりとりがお互いに意外とわかりやすかったりした。「ちょっとハイが足りなくない?」って言ってカルダモンを入れたり、「下のほうがもう少しだけ欲しいね」ってクローブを足したり。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

小宮山 まさに僕もハイだったらカルダモンかブラックペッパーって印象だし、クローブは絶対に低音。カルダモンでも、ビッグカルダモンならローな感じがするけど。

U-zhaan そうだね、ビッグカルダモンは低域。音というよりもむしろ、ライブハウスの壁のスモーキーな色みたいな感じ。

小宮山 ハイが効いているものが好きなのか、リズムがバキバキ出てるものが好きなのか、そういう好みを形にしていくという意味では音楽もカレーも一緒だと思う。だからミュージシャンがカレーを作ると、きっとその人の音楽に似たものになるんじゃないかな。ユザーンのレトルトカレーだってそうだよ。前作のマトンと比べて、チキンはだいぶ丸くなった。ほら、マトンの頃は触るもの皆傷付けようとしてたじゃない。

U-zhaan いや、そんなことないって(笑)。

小宮山 音楽に例えるなら、たぶん前のやつは本場のインド音楽そのまんまだったんだよ。日本人の味覚とか無視して作ってたでしょ? それもすごいなとは思ってたんだけど、今度のチキンカレーはその尖った雰囲気も残しつつ、万人とは言わないまでもかなりの人がおいしいと感じそうな味わいになっていて、大人になったなと思った。

そもそもカレーってなんですか?

U-zhaan ところで、雄飛さんに初めて会ったときにアジアカレーハウスをリコメンドされたって話をさっきしたじゃない。今日もまた、どこか1軒紹介してくれないかな。

小宮山 カレー屋を?

U-zhaan うん。あの店を紹介された当時、日本にいるときにはインド料理をなるべく食べないようにしてたの。どうせインドに行ったら毎日カレーなんだから、日本にいる間は違うものを食べようと思ってて。でもアジアカレーハウスで本当に現地そのままの料理を食べてインド料理やベンガル料理が大好きになっちゃってることに気付かされ、日本でも積極的にカレーと触れ合うようになった。あれが自分にとってすごくエポックメイキングな出来事だったから、この機会にまたオススメを教えてほしいなと。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

小宮山 えー、どこにしようかな。カレーじゃなくてもいい?

U-zhaan カレー屋を紹介してくれって言ってるじゃん(笑)。

小宮山 いや、そもそも「カレーってなんですか」ってことなんだよ。どこまでをカレーとするか。ユザーンだったらどう答える?

U-zhaan うーん、かなり悩むけど「あなたがカレーだと思うなら、それがカレーだ」って感じかな。

小宮山 そう、僕も同じことを言ってる。でもまあ、最低限スパイスは1種類以上入ってる必要があると思うんだよね。カレーの定義をそのぐらいまでゆるく設定したうえでユザーンに勧めたいのが、大門にある中華料理店、味芳斎(※7)の牛肉飯。

U-zhaan 中華料理?

小宮山 言わば、中国のカレーみたいな料理なんだよ。唐辛子とか八角とかが効いた牛ほほ肉の煮込みがごはんに乗ってて、ものすごく辛いんだけどめちゃくちゃおいしい。ユザーンだったら、これがカレーであるということを食べた瞬間に理解してくれるはず。

U-zhaan えー、興味あるな。ありがとう、近いうちに行ってみる。えっと、最後にひとつだけ聞きたいことがあるんだよね。雄飛さんって、横浜の赤レンガ倉庫で毎年「CURRY&MUSIC JAPAN」ってフェスのプロデューサーみたいのやってるじゃん。あれに僕が呼ばれないのはなんで?

小宮山 あれはプロデューサーじゃなくて「オフィシャル・アンバサダー」っていう親善大使みたいな立ち位置だからブッキングには絡んでないのよ(笑)。

U-zhaan あんなに前面に出てるんだから、きっと1組ぐらいなんとかできるよ。みんなに聞かれるんだよね。「あのフェスにユザーンさん出てないけど、小宮山さんと仲悪いんですか?」って。

小宮山 名前がないのは確かに不自然だよね。わかった、じゃあ次は「1枠だけブッキングの権限ください」って頼んでみるよ。でもユザーン、イベントでのカレー出店って今までにやったことあるの?

U-zhaan レシピで関わったことはあるけど、実際に調理をする出店はやってないかも。いや違う、出店のほうじゃなくてミュージシャン枠で呼んでよ(笑)。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

左からU-zhaan、小宮山雄飛。

小宮山雄飛(コミヤマユウヒ)

ワタナベイビーとのユニット・ホフディランのボーカリスト / キーボーディスト。渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダーを務める。カレーや蕎麦を中心にさまざまなグルメにも精通しており、音楽活動の傍らレシピ集の出版、グルメコラムの連載、テレビやラジオ出演など幅広く活躍している。2018年9月にレモンライス専門店「Lemon Rice TOKYO」をオープンさせた。ホフディランとしては2022年9月に10thアルバム「Island CD」をリリース。現在小宮山が監修したレトルトカレー「究極 渋谷ブラックカレー」が東急ストア、イトーヨーカドー、ホフディランのオンラインストアにて販売中。

U-zhaan(ユザーン)

埼玉県川越市出身のタブラ奏者。世界的なタブラプレイヤーであるザキール・フセイン、オニンド・チャタルジーの両氏に師事する。タブラ修業のために毎年インドを訪れ、本場のスパイス料理に慣れ親しんだ経験を生かし、自身が監修したベンガル料理のレシピ集、レトルトカレー、仕切りが取れるカレー皿を発売した。2014年10月リリースの1stソロアルバム「Tabla Rock Mountain」の初回限定盤はスパイスで一部色付けされたことが大きな話題に。

登場したカレーショップ

※1)酒場食堂(もしも食堂)
※2)アジアカレーハウス
※3)Lemon Rice TOKYO
※4)デリー上野店
※5)ムルギー
※6)新宿中村屋
※7)味芳斎

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U-zhaan(ユザーン) @u_zhaan

音楽ナタリーで連載中の「カレーと音楽」、第2回が公開されました。ゲストはホフディランの小宮山雄飛さんです。 https://t.co/igULgwCW27

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