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歌心りえ「しあわせのまわり道」ジャケ写

歌心りえ しあわせのまわり道

表情の異なる2バージョン、その奥に通底する“本物のウタゴコロ”

文 / 大谷隆之

限りなく伸びやかな声の持ち主だが、いわゆる熱唱系とは違う。持ち前のテクニックをことさら押し出す気配もない。透き通ったボーカルから伝わってくるのはむしろ、自分の色を消し去ってでも曲に寄り添おうとする意志。そこから生まれる滋味と温もりこそが、歌心りえというシンガーの類まれな魅力だと思う。

2024年、50歳のとき韓国のテレビ番組「韓日歌王戦」に出場。中島美嘉「雪の華」、さだまさし「道化師のソネット」のカバーで一躍脚光を浴びた。言語の壁を超えて感動を巻き起こしたのは、まさに“無私のウタゴコロ”の力だろう。翌2025年4月には「SONGS」「HEARTS」という2枚の1stアルバムをビクターとエイベックスから同時リリース。51歳という遅咲きのメジャーデビューに加えて、レーベルをまたいだ異例の活動スタイルが話題を呼んだのも記憶に新しい。

「しあわせのまわり道」は、そんな彼女が次なるステップに踏み出したオリジナル曲。喜びも悲しみも分かち合ってきた2人の日常が、穏やかでどこか甘酸っぱいメロディに乗せて紡がれる。誠実なストーリーテラーとしての持ち味が遺憾なく発揮されたミディアムナンバーだ。昨年と同じく、ビクターとエイベックスから同時発売された2枚の2ndアルバムに、唯一共通で収録されている。

作詞は松井五郎、作曲は都志見隆。日本のポップス界を代表する名コンビによる仕事ぶりが、まず素晴らしい。時とともに移ろう街の風景と、決して変わらない大切な記憶。誰もが感じる人生の機微が、簡潔な言葉と旋律で表現されている。「それがどこにあるか わからなくても 探していることが きっとしあわせ」。さりげないサビのフレーズはきっと、苦労を重ねても歌うことを止めなかった彼女自身の思いとも重なるはずだ。決して派手ではない。でも隅々まで慈しむような丁寧なアプローチが、かえって深く胸を打つ。

さらに今回、2つの「しあわせのまわり道」を聴き比べられるのもうれしい。ビクター制作のアルバム「UTA」収録バージョンはしっとり落ち着いたテイスト。ほんの少しこぶしを効かせた歌い回しが、弦楽器を強調した大人っぽいアレンジに映える。対するエイベックス制作の「KOKORO」バージョンは、声の色合いが若干明るい。ピッチもテンポも同じはずなのに、ちょっとしたブレスの加減だけで歌の表情が驚くほど華やぐ。リスナーにまったく作為を感じさせない、最上級のうまさ。本物のウタゴコロが、ここには間違いなく息づいている。

歌心りえ「しあわせのまわり道(UTA ver.)」(Official Music Video)

歌心りえ「しあわせのまわり道」
2026年4月22日(水)配信開始 / Victor Entertainment / avex
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作詞:松井五郎
作曲:都志見隆
編曲:多田三洋

※2ndアルバム「UTA」「KOKORO」にそれぞれ異なるバージョンで収録。

「UTA(CD+DVD盤)」
2026年4月22日(水)発売 / Victor Entertainment
[CD+DVD] VIZL-2527
「UTA(CD Only盤)」
2026年4月22日(水)発売 / Victor Entertainment
[CD] VICL-66149
「KOKORO(CD+DVD盤)」
2026年4月22日(水)発売 / avex trax
[CD+DVD] AVCD-63882/B
「KOKORO(CD Only盤)」
2026年4月22日(水)発売 / avex trax
[CD] AVCD-63883

歌心りえ(ウタゴコロリエ)

歌心りえ

1973年生まれの女性歌手。1995年に3人組ユニットLetit goのボーカルとしてデビューし、同年発売の2ndシングル「200倍の夢」がポカリスエットのCMソングに使用された。1997年には実姉とのポップユニットCiao、2004年にはピアノ / ボーカル / チェロ編成の3人組ユニットSeptemberを結成し活動。2023年に出場したオーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」ではファイナリスト入りを果たし、その表現力と歌声が高く評価され話題に。2024年には韓国MBN「韓日歌王戦」への出演をきっかけにブレイク。日本国内では「千鳥の鬼レンチャン」「DayDay.」への出演でも注目を浴び、歌心が出演するYouTube動画の総再生回数が累計1億3000万回を突破している。2025年にカバーアルバム「SONGS」「HEARTS」をリリースし、51歳でソロメジャーデビュー。この2枚は同年12月、「第67回 輝く!日本レコード大賞」企画賞を受賞した。2026年4月にはアルバム「UTA」「KOKORO」を、ビクターとエイベックスの2社から同時リリースした。