ロックとオーケストラの融合を掲げ、2025年4月に初演、12月に再演されたGACKTの新たな試み「魔王シンフォニー」。そこで確かな手応えをつかんだ彼が、2026年夏、このプロジェクトで全国8都市でのツアーへ打って出る。
GACKT率いるバンド・YELLOW FRIED CHICKENzと、黒装束のローブと仮面をまとい立奏する総勢約70名のオーケストラ・グランドフィルハーモニックが放つ圧倒的なエネルギー。その壮大なショーの裏には、GACKTの「次世代に受け継がれる音楽」への願いがあるのだという。
2025年の「魔王シンフォニー」で得たものはなんだったのか、全国ツアーではどのようにブラッシュアップするのかを聞くべく、GACKTにインタビューを実施。このツアーで目指すという“誰も体験したことのない異世界”について話を聞いた。
取材・文 / 真貝聡
公演情報
GACKT 魔王シンフォニー 2026 -INFINITY- organized by billboard classics
- 2026年7月14日(火)埼玉県 ウェスタ川越 大ホール
- 2026年7月18日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2026年7月26日(日)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2026年8月2日(日)福岡県 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
- 2026年8月11日(火・祝)東京都 文京シビックホール 大ホール(昼夜2公演)
- 2026年8月15日(土)愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
- 2026年8月18日(火)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2026年8月29日(土)大阪府 東京建物 Brillia HALL 箕面(箕面市立文化芸能劇場)大ホール(昼夜2公演)
出演者
GACKT
指揮:米田覚士 / 村上史昂
管弦楽:グランドフィルハーモニック東京 / グランドフィルハーモニック京都
バンド:YELLOW FRIED CHICKENz
僕が目指しているのは、誰も体験したことがない異世界
──“ロックとクラシックの真の融合”を追求したコンサート「魔王シンフォニー」を立ち上げた経緯について、去年7月のインタビューで詳しくお話しいただきました(参照:GACKT|自分だけが生み出せる世界──ロック×オーケストラ「魔王シンフォニー」を語る)。そこから12月に東京・すみだトリフォニーホールで開催された「GACKT PHILHARMONIC 2025 魔王シンフォニー THE REVIVAL」を経て、今年の夏に全国ツアーへと発展していく今、GACKTさんの中で「魔王シンフォニー」の形やあり方に変わった部分はありますか?
主に2つあります。1つは、より音の分離感を追求していけると思ったこと。もう1つは、「すべての楽器が明確に1つひとつ手に取るようにわかる、そんな音楽表現ができるのではないか」ということ。それが「THE REVIVAL」を経て思ったことですね。
──12月の「THE REVIVAL」を拝見して、新しい世界に足を踏み入れたような感覚を覚えたんです。まず、ロックとクラシックが緻密かつ見事なバランスで融合していることで、これまでになかった新しい音楽だと感じました。そして、立奏というクラシックのコンサートではめったに見ることがない演奏方法や、漆黒を基調としたゴシックスタイル、儀式的なモチーフを取り入れたファッションなど、視覚的なインパクトも大きかった。その特異なステージを、1階にいる観客の皆さんが圧倒されたように仁王立ちで観ている。どこを切り取っても、ほかにないライブでした。
そう言っていただけると、すごくうれしいです。まあ……次のツアーはもっとすごいことになりますよ。というのも、すみだトリフォニーホールは規制が多いので、やれることに限界があるんですね。僕が目指しているのは、誰も体験したことがない異世界なんですよ。現実社会には存在しない、まるで映画のワンシーンに迷い込んでしまったような世界。入ってはいけないところに、足を踏み込んでしまったような錯覚を持ってもらえる表現を、次のツアーではより提示できると思います。
──「THE REVIVAL」は去年4月に行われた「GACKT PHILHARMONIC 2025 魔王シンフォニー」の再演という位置付けでしたが、どのようなステージになったと感じていますか?
4月の公演で見つかったサウンド面での反省点は、「THE REVIVAL」でかなり改善できたと思います。ただ、それはあくまで改善であって、自分の理想を超えているわけじゃない。「まだやれるな」って感じますよ。もっと突き詰められると思っています。
──「THE REVIVAL」も大変素晴らしいステージでしたが、GACKTさんの中ではそれ以上の表現ができると。
うん。それに12月のコンサートを観て感じられたと思うんですけど、「魔王シンフォニー」の音の圧倒感って、ほかのクラシックやロックのコンサートにないものがあるじゃないですか。ロックは電気的に出した音を使っているので、ボリュームはいくらでも上げられる。そこにプレイヤーのエネルギーを乗せて届けることで、観客の心を圧倒する感動を補っているんです。
体に当たった瞬間に全身が泡立つような、音楽の持つ根源的な“本当の力”
──クラシックはロックとはどう違うのでしょうか?
それに対してクラシックは「人間が自分の体を使って音を鳴らす」という、とても特殊なことをやっているんです。人間の体から発せられる音が、観客1人ひとりに直接届く。それって、すさまじいことなんですよね。そもそもステージから届くものは、音だけじゃないんです。音だけの話をするなら「いい加減でも同じ音量を出せば、観客は圧倒されて感動するのか」と考える人もいるかもしれませんが、それは絶対に違うんですよ。ステージ上には70人近くの奏者とバンドがいて、その70人が音にエネルギーを乗せて客席に向かって届ける。それをロックとクラシックがともにやっているわけです。
──まさに真の融合ですね。
そうです。客席にいる方たちは今まで感じたことがない、意味のわからないエネルギーを受け取ることになるんですよ。マニアックな話ですけど、僕らは音を耳だけで聴いていると思っている。でも実際は耳だけではなくて、聴こえない音も含めて耳と肌で感じて、それを脳が処理するんですね。あのライブ会場では人のエネルギーを飲んだ音が全身に届いている。その感覚……これこそが音楽の持つ根源的な“本当の力”だと思うんです。それを実際に体験した人は、音が自分の体に当たった瞬間に全身が泡立つというか、すべての毛穴がブワッと広がった印象を受けるんですよね。
──僕もそうです。「なんだこれは……」と思いました。
うん。その感覚をより多くの人たちに感じてもらいたいし、今まで経験したことのないエネルギー量、視覚的に脳を麻痺させるような錯覚も含め、そのすべてを味わって震えてもらいたい。それが「魔王シンフォニー」の大きな魅力なんです。
──7月に始まる全国8都市を巡るフルオーケストラツアー「GACKT 魔王シンフォニー 2026 -INFINITY- organized by billboard classics」では、多くの人がその新感覚を味わうことになりますね。
そもそも「魔王シンフォニー」は全国ツアーをやる前提で立ち上げた試みで、ようやくその準備が整いました。僕の中では去年4月のコンサートをするときに、自分が思っている方向性で表現ができるのなら全国に「魔王シンフォニー」を持っていけるけど、それができないのならやらない、という明確な線引きを考えていたんです。その結果、4月のタイミングで“理想の形でツアーができる”ことを確信したからツアーを組んだ。12月の「THE REVIVAL」では「演出はもっとこうするべきだ」「音はこの方向性で高めていくべきだ」という改善すべき点がいくつも見えたし、それをクリアできるとわかった。なので、次のツアーは非常にいいステージが届けられると思っています。
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ボーカルスキルを上げないと、このライブはやれない




