otsumami feat.mikan インタビュー|“正面切って堂々とJ-POPをやる”ユニットの成り立ちと展望

2022年の始動以降、楽曲配信を中心に活動してきたクリエイターユニットotsumami feat.mikanが昨年よりライブ活動を活発化させ、結成5周年に向けて新たなフェーズへと移っている。

otsumami feat.mikanは、音楽やアートなどさまざまな分野で活躍するクリエイターにより結成されたユニット。北海道を拠点とするアイドルグループ・タイトル未定の冨樫優花がmikan名義でボーカルとして参加している。良質なポップソングをコンスタントに発信し続けるこのユニットは、どのように結成され、なぜこのタイミングでライブ活動を本格化させているのか。4月24日に配信リリースされた最新曲「よりどり日和」、5月8日に東京・青山 月見ル君想フで開催される「ピアノと私のライブ #2~よりどり日和~」の話題を交えながら、楽曲のプロデュースを担当する青葉紘季と、透明感あふれる無二の歌声を持つmikanに話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一

otsumami feat.mikanの成り立ちは

──otsumamiは今から約4年前の2022年2月に始動したそうですね。

青葉紘季 はい。otsumamiに関わるメンバーは僕を含め、J-POPアーティストへの楽曲提供をメインの仕事とする作家の集まりでして。昔と違って今は自ら発信できるメディアが整っているので、楽曲提供だけにとどまらず、純粋に今いいと思っているものを自分たちなりのやり方で発信していこうという考えが始まりでした。その中で、例えばYouTubeで発信するにはビジュアル的なものが必須なので、友達のつてをたどっていったところでイラストレーターの福井伸実と出会いました。

──もともとどんなコンセプトのもと活動をスタートさせたんですか?

青葉 いろんなクリエイターが集まってカタログのようにたくさん楽曲を作っていく中で、リスナーがそのすべての曲を好きになってくれたらうれしいですけど、なかなかそうもいかないじゃないですか。だったら「好きなものをつまんでいってください」という……その考えがotsumamiというユニット名やコンセプトにつながっていきました。

──otsumamiの楽曲を歌うシンガーとしてmikanさんが選ばれた理由は?

青葉 僕が立ち上げのときから楽曲提供している、タイトル未定という北海道在住のアイドルグループがいまして。そのメンバーの1人である冨樫優花に対して、以前から「この子、いい声しているな」と思っていたんです。それで彼女が東京に来たタイミングで、試しにotsumamiとして制作した楽曲を何曲か歌ってもらったらとてもいい感じだった。最初は「つまんでいってください」というライトな感覚で楽曲制作をしていたところ、彼女の声を真ん中に置いて楽曲を作るようになり、だんだんと本気になっていったわけです。

mikan

mikan

──当初はmikanさんの素性を明かしていなかったですよね。

青葉 最初のうちはどういう動きになるのか、僕の中でもノープランだったので、「とりあえず別名義でやったほうがいいのかな」くらいの感覚で。彼女に「名前はどうしようか?」と確認したところ、「mikanがいいです」ということでこの名前になりました。

──mikanさんは青葉さんからotsumamiの楽曲レコーディングに誘われた際、どう思いましたか?

mikan 純粋に私の声を必要としてくださる方がいるという事実がすごくうれしくて、「もちろん参加させてください」と即答しました。ちょうど私がタイトル未定の活動を少しお休みするタイミングと重なったこともあって、1人で歌うことも含めてそれまでと違う環境が新鮮で。結果として、とてもリフレッシュした状態でタイトル未定の活動に戻ることができましたし、今となっては2つの活動それぞれを通して、歌を歌うことが自分にとって大切だということを再認識できていると思います。

──ちなみに、mikanという名前を選んだ理由は?

mikan 両親が私の名前を付けるときに、候補の中に「みかん」があったそうで。その話を小さい頃から聞いていたので、ずっと頭に残っていたんです。タイトル未定の冨樫優花とは違う、otsumamiとしてもう1つの人生を歩むという意味で、もしかしたら自分の名前になっていたかもしれない「みかん」を選びました。加えて、タイトル未定のコンセプトに「未完成」というキーワードがあったので、そこともかかっています。

増え始めたライブでの反省と成長

──当初は楽曲配信が活動の中心だったotsumami feat.mikanですが、2025年5月に初のワンマンライブを行って以降、ライブ活動も増え始めています。

青葉 mikanが固定メンバーとして参加するようになった時点で、ライブはいずれやりたいなと考えていました。僕がもともとバンドマンで、20代、30代はライブに明け暮れる日々だったから、ミュージシャンにとってライブは絶対に必要なものだという認識がありましたし、実際ライブをしている瞬間が最も幸せを感じられます。それに、タイトル未定のライブに演奏で加わったことがあるんですが、mikanがステージに立ったときのスイッチの入り方を間近で見て、本当に素晴らしいなと思いまして。これをotsumamiというフィルターを通して、しっかり届けたいなという気持ちもありました。

──昨年5月の下北沢の初ワンマン、そして9月の渋谷と2回ライブを拝見しましたが、初ワンマンでは最初のMCで下北沢を渋谷と間違えたり、かなり緊張している様子が伝わりました(笑)。

mikan そうでしたね(笑)。otsumamiとしては2024年の夏に出演した北海道のイベントが初めてお客さんの前で歌ったタイミングで。そのときは30分程度だったんですけど、まだ私の中で「otsumamiの曲がどんな感じでリスナーの方に届いているのか」が見えていなかったんです。でも、お客さんの前で歌っていくにつれて、楽曲にどんどん色が付いていくような感覚が得られて、それが自分の自信にもつながりました。そこから初めてのワンマンライブへと向かっていくわけですが、イベントへの出演で得られた自信があったものの、1人で長時間歌うことを含め、グループで活動しているときとは環境が違いすぎて、いっぱいいっぱいになってしまい……1曲1曲を丁寧に歌うことができず、結果的に反省点ばかりだったのが下北沢での初ワンマンでした。

otsumami feat.mikanによるライブの様子。

otsumami feat.mikanによるライブの様子。

──ところが、2度目のワンマンライブとなった9月の渋谷の公演では、mikanさんがステージに立って歌い始めた瞬間に場の空気がガラッと変わるほどに堂々としていて。あの瞬間がすごく特別に感じられました。

mikan うれしい……グループ活動でもそうですけど、ステージに立つときは「今日死ぬかもしれない」というぐらい全身全霊で、自分ができる精一杯の気持ちで臨んでいるので、それが大阪のライブではいい形で表れたのかもしれませんね。あと、下北沢や渋谷のライブはバンドの音数が多くて華やかでしたけど、「ピアノと私のライブ」はタイトル通りピアノと私の歌のみだったので、音に集中しやすくて自分に合っていたのかもしれません。でも、最終的にはバンドセットでも「ピアノと私のライブ」と同じくらいのパフォーマンスができるようになりたいです。

青葉 僕もボーカルとして長年ライブをやってきた中で、当然壁にぶち当たることもあったので、彼女にとってグループとは違う環境下でライブに臨むことはそう簡単ではないだろうなと思っていました。ですが、mikanは常に僕の予想を超えてきましたし、昨年10月に大阪で行った最新のワンマンライブ「ピアノと私のライブ #1」は、僕が昨年観た中でトップレベルでいいライブでした。