「錦秋十月大歌舞伎」開幕　寺島しのぶ・中村獅童の「文七元結物語」、坂東彌十郎の「水戸黄門」ほか

歌舞伎座新開場十周年「錦秋十月大歌舞伎」が、昨日10月2日に東京・歌舞伎座で開幕した。

昼の部には、「天竺徳兵衛韓噺」と「文七元結物語」がラインナップされた。四世鶴屋南北の作による「天竺徳兵衛韓噺」は、江戸時代初期に、東南アジア諸国の見聞録を残した実在の商人・徳兵衛を主人公にした作品。今回は尾上松緑が、祖父の二世尾上松緑、父の初世尾上辰之助（三世松緑）も演じてきた天竺徳兵衛を初役で勤める。徳兵衛が、中村又五郎演じる吉岡宗観から譲り受けた妖術を次々に繰り出す様や、蝦蟇の姿となって見せる立廻りの演出に、客席からは拍手が巻き起こった。

山田洋次が脚本・演出を手がけた「文七元結物語」では、中村獅童が左官としての腕は良いが、大の博打好きな主人公・長兵衛役、寺島しのぶが長兵衛の女房お兼役を演じる。花道に寺島が現れると、客席からは「音羽屋！」と大向うが。獅童と寺島の息の合った小気味良いやり取りに、客席は笑いで包まれた。

夜の部は「『双蝶々曲輪日記』角力場」で幕開け。貫禄ある人気力士・濡髪長五郎を獅童、山崎屋の若旦那で、濡髪贔屓の与五郎と、素人力士出身の放駒長吉の2役を坂東巳之助が勤める。続いて披露される舞踊「菊」では、菊の精たちによるかれんな舞が展開。同作で中村雀右衛門と中村錦之助は、しっとりとした舞で恋心を表現した。「『水戸黄門』讃岐漫遊篇」では、四国の金毘羅様にやってきた坂東彌十郎演じる水戸光圀、そしてそのお供の中村福之助演じる佐々木助三郎（助さん）と中村歌之助演じる渥美格之進（格さん）が活躍する物語が描かれる。彌十郎は、大らかな笑顔で“黄門様”を体現した。公演は10月25日まで。