「信じられるものだけに、情熱を注ぎ込む。」の信念をもとに、ドイツからアメリカへと渡ったアイザック・ウォルフ・バーンハイムが築いたバーボンウイスキーブランド・I.W.ハーパー。創業からおよそ150年、不退転の精神で挑戦を続けたI.W.ハーパーは、型にはまらず、自らの価値観を信じて進む大人たちのライフスタイルに静かに寄り添ってきた。
そんなI.W.ハーパーが似合う俳優・丘山晴己は、14歳でアメリカに移り住み、現地のショービジネス界で研鑽を積んできたアーティスト。海外生活を経て、現在は自身のアート活動や2.5次元舞台で唯一無二の輝きを放つ丘山は、おさない頃から“人を喜ばせる”という思いを持って“好き”を貫き、四十代を迎えた今、新たな境地へ踏み入ったという。ステージナタリーでは、丘山、chay、鈴木伸之、近藤頌利が参加した“好き”に徹する大人たちにフィーチャーするHARPER'S CROSSING~ I.W.HARPER とともに語る「好きを、貫く。」~プロジェクトを通し、丘山の“好き”や舞台俳優としての変遷について聞いた。
取材・文 / 大滝知里撮影 / 宮川舞子
HARPER'S CROSSING~ I.W.HARPER とともに語る「好きを、貫く。」~
ラウンドを終えて、グラスを傾ける。
そこで、語られるのは、
“好きを、貫く”大人たちの想いとことば。
そして、ここまで歩んできた、それぞれの物語。
揺るがない“好きを、貫く”人生に、
I.W.ハーパーが光を当てます。
※特設サイトのオープンは2026年5月7日を予定。
舞台はみんながやるものだと思っていた
──本日は、HARPER'S CROSSING~ I.W.HARPER とともに語る「好きを、貫く。」~プロジェクトとして、丘山さん、chayさん、鈴木伸之さん、近藤頌利さんに限られた時間ではありますが、ゴルフをプレーしていただきました。初めての顔合わせながら、皆さんの和気あいあいとした姿、丘山さんの美しいスイング姿が印象的でしたが、実は2025年11月にゴルフを始めたばかりだそうですね。
そうなんです。すごい勢いでハマってしまいました。ゴルフでは「10やって、5できれば良い」とよく言われるんですが、“できないことができたときの感動”があるんですよね。1回でも良いショットが打てたときにゾクッとする瞬間がゴルフにはあって、僕はそれが特に好きなんだと思います。その感覚というのは、実はいろいろなことに共通していて、旅行で初めての土地に行ったときに、「もうちょっとこうできたら良かったな」と反省することがあったとしても、それが良い思い出になる。ゴルフもカメラも旅行も大好きですが、“できないことができるようになる”喜びがある、冒険やロマンのある世界観に身を置くことに、いつもワクワクします。
──そんな丘山さんの“好き”の1つである、舞台への情熱の芽生えについてお聞きします。ご自身の初舞台は3歳。以降、舞台はずっと丘山さんにとっての“好きを貫く”対象でしたか?
3歳の頃は、舞台はみんながやるものだと思っていたので、舞台が最初から自分の好きなものかどうかはわからなかったんです(笑)。でも、僕にとって人に観られることはエクスタシーで、人前で何かをすることが自分にとってのハッピーだった。その思いが明確になったのが、6歳の頃にフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでパレード待ちをしていたときでした。待ち時間に僕が道の真ん中で踊ったら、みんな「わあっ」とか「フー!」と喜んでくれて。それで、人前でパフォーマンスすることが自分の“好き”なんだと実感しました。
──丘山さんはご両親の影響で、日本舞踊やヒップホップ、バレエやラテンなど、多ジャンルの踊りを習得され、23歳のときにアメリカで「Radio City Christmas Spectacular」のオリジナルキャストとしてデビューされました。アメリカでの活動経験はご自身の表現者としての価値観をどのように育んだと思いますか?
海外のお客さんはすごく素直で、良いものや面白いと思うものが観られないと、当然、喜んでくれないんです。それまでの僕は、表現者として“自分を観てもらう”ことが好きだったのですが、アメリカのお客さんを前に価値観が180°変わって、“お客様を喜ばせる”ことに意識が向くようになりました。自分たちのパフォーマンスによってお客さんの熱量が上がっていき、それに比例して僕の喜びも増えていったという感覚があったんだと思います。そのためには自分のスキルを上げる必要もありましたし、小さいステージであればそのキャパでの喜ばせ方があること、大きいステージであればあるほど自分の中でゾワゾワする感覚が増していくことを肌で感じました。「もっと歓声がほしい」「もっと喜んでもらいたい」と思うようになったのが、表現者としての大きな変化であり、自分の価値観になっていったと感じます。
できることをやり続けるのは“停滞”、「RENT」で新たなステージが思い描けた
──日本とアメリカでダンサーとしてステージに立ってきた丘山さんが、舞台俳優として歩む覚悟を決めたターニングポイントはどこだったのですか?
舞踊の世界で生きてきて、それが当たり前のように自分の人生にある中で、アメリカの大学ではパフォーミングアーツを専門的に学びました。でも、ダンサーはスポーツ選手と一緒で、年齢と共に身体の動く範囲や筋力が衰えていってしまう。そういうことに負い目を感じる前に、僕はミュージカルや舞台作品に挑戦する機会を多くいただけたんです。やってみたら、ミュージカルでは身体表現のダンスに加えて、芝居、音楽の3つのアプローチを一度に提示できることに気が付いて、僕にとっては最強のツールだった(笑)。また、アメリカでショービジネスに携わっていたときに、舞踊よりもミュージカルでのお客さんの盛り上がり方のほうが性に合っていたんですよね。それをあらためて感じたのが、ミュージカル「RENT」でした。
──2017年上演のマイケル・グライフ演出版「RENT」で、丘山さんはドラァグクイーンのエンジェル役を演じられました。それまでは日本とアメリカで交互に舞台出演されるような活動でしたが、以降は日本でのミュージカル作品、2.5次元舞台の出演へとシフトされましたね。
「RENT」で、ミュージカルの魅力を再認識できたという思いがしました。それ以前も観客として多くのミュージカル作品を観ていましたが、「RENT」という大好きな作品に関われたことで、「最高に楽しくてワクワクする世界で、技術的に劣る部分はあっても、それが克服できたときはきっと楽しいだろう」という、自分の新たなステージが思い描けたんです。それで、ミュージカルの世界でやっていこうと思いました。できることをやり続けるのは“停滞”でしかなくて、僕には魅力やこだわりが感じられない。かと言ってできないことに執着するのではなく、自分にとって未開拓なところを開拓し、自分の中に取り込んでいくことが、僕のスタイルなのかなと思います。
──その開拓の過程で、挫折や困難に直面することもあったかと思いますが、そのときは、丘山さんはどのように乗り越えられたのですか?
誰しもメンタルに来てしまうことはあると思うんですよね。でも、自分なりのビジョンが見えていたら、諦めることはなくなると僕は信じていて。逆にビジョンがあるからこそ、安心して臨むことができると思っています。だって見えているものがあるなら、そこを目指せば良いだけなんだから。
大事なのはロジカルな役の構築と直感を使ったパフォーマンス
──丘山さんはこれまで、日米でさまざまなバックグラウンドを持つ方と作品を作られてきましたが、性別、年齢に関係なく、丘山さんが憧れる大人に共通点はありますか?
あります。直感を信じて、ネバーランドに生きている子たち(笑)。「ピーター・パン」の“ロストボーイズ”です。大人だけど童心を持っていて、それに精一杯向き合っている人はロマンの塊だと思いますし、彼らは直感を大事にしているんです。直感を大事にすることには勇気が必要で、僕は、直感を信じる人には自分を認める強さを感じるし、型にはまらず、ハッピーに生きているように思えます。また、芸術の世界では「確実に」「完璧に」といった言葉を追ってしまうと、直感が消えてしまって面白くないんですよ。直感と行動の振り幅が大きい人たちほど人前でのパフォーマンスにオーラが出ますし、そういう人たちを見ることほど僕にとって魅力的なことはないので。直感は、僕がプライベートでも大切にしていることの1つです。
──舞台俳優には、役の背景を背負ってその人物を表現するという面白さがあるかと思います。言い換えれば、ある種の制約がある中で、丘山さんが舞台上から自分らしさを届けるとしたら、どのようなところで表現されていますか?
舞台上で完璧に役になりきるとしたら、僕は僕自身が演じる必要はないと思っています。なぜなら、自分の色を出して、その役と混合してパフォーマンスする、舞台の上に立つことに意味があると思うから。そのために何をするかというと、自分とキャラクターにある共通点を、無理やりすり合わせるんです。そうして、その劇世界で生きていく。ロジカルに考えて役を構築すると、それが演じるうえでのパワーになります。でも、大事なのは、本番では直感を駆使して伝えること。客席にいるお客さんからもらうエネルギーによって、自分の演じ方やアプローチが感覚的に変わっていくのを楽しむんです。それで、最終的にお客さんが「めっちゃ楽しかった」と言って劇場をあとにしてくれるのが、僕のパフォーマンスの理想ですね。
──ロジカルと直感の2段階構造で舞台に立たれているんですね。
そう。役のことや、自分自身のことに意識が向いている俳優は多いと思いますが、僕はショービジネス出身だからか、何があろうと、最終的にお客さんが喜んでくれることが一番。舞台を観終わったあとに感動して帰るのか、笑いながら帰るのか、何かを考えさせられて帰るのか……作品によって、または個人で受け取り方は違うだろうけど、僕は毎回そこへのアプローチを考えて、組み立てていますね。
──そんな丘山さんが、四十代を迎え、あらためて長い間舞台に立ち続けるために大切だと感じていることは何ですか?
やっぱり、お客さんに「立ってほしい」と思われ続けなければいけないですよね。そのために、「楽しかった」と思われなければいけないと感じているんだと思います。舞台は協働作業で、自分の力だけでは成り立ちませんし、演じる役柄によっても与える印象が変わる。そんな中、作品ごとに“どう楽しませるか”という目標を決めて、自問自答を重ね、そのゴールを毎回クリアするということの繰り返しでしかないんじゃないかなと。それができなかったら舞台俳優としての道は途絶えると思っていますし、とても基本的なことですが、求められることが僕の原動力であり、キャリアを積んでいく中での生きがいでもあります。






