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中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第26回 [バックナンバー]
浮世絵師&戯作者の“妻”役の中村米吉、役者絵カワイイにときめく
愛する旦那の絵も発見! “とんでもない出会い”も
2025年2月20日 19:00 8
放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の題材にもなっている、江戸のメディア王“蔦重”こと蔦屋重三郎。その活躍は、歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」昼の部で上演中の「きらら浮世伝」でも見ることができる。同作で
このコラムは、カワイイ米吉に、自分以外のカワイイを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で世界を救うことを目的にしている。今回は、人気浮世絵師が続々登場する「きらら浮世伝」にかけて、とある場所でカワイイを探してもらった。
題字:中村米吉
「きらら浮世伝」出演中の米吉が“ちょっと走った”先は…
大河ドラマで話題の蔦屋重三郎。
そんな彼を題材にした「きらら浮世伝」が歌舞伎座で上演されています。
“寛政の改革”で出版物が規制される中、人々を楽しませる作品を生み続けようと、熱く熱く走り続けるその姿に、きっと心熱くさせられることでしょう。
山東京伝の妻・お菊のお役で出演している私もその熱情に駆られております!
錦絵も戯作も書けないけど、どこまでも走らなくては!!
と、歌舞伎座からちょっと走った先に今の気分にぴったりな物が。
絵を描くことはできなくても、観ることはできるし、まずは自分が楽しまないと!(笑)
静嘉堂文庫が誇る役者絵を堪能できるこの展示。
静嘉堂の収蔵品のみ、よそから借りていないと言うところに、さすが三菱!と感じさせられますよね。
まず目に飛び込んでくるのは「歌舞伎図屏風」。
まだ歌舞伎が、出雲阿国が踊っていたとされる“ややこ踊”と言う原型であった頃を描いた屏風。
川の上に建てられた能舞台のようなところで舞う3人の女の子達。動いている瞬間をカメラで撮ったような、躍動感あふれる可愛らしい姿。
まるで橋本環奈さんの有名な写真のよう!
きっと、今で言うアイドルのライブみたいなものだったんでしょうねぇ。
歌舞伎芝居が形になってきてからの錦絵の中に、肌ぬぎをして刀を振るう、勇ましい姿ながら、なんとも素朴な可愛らしさのある女方の絵が。
北尾政演の描いた、瀬川菊之丞……
え? 後の山東京伝!? うちの旦那の絵だわこれ!(笑)
意外に上手じゃないのー。
そんな夫の描いた絵を見て展示に親近感を感じ、幕末明治の錦絵の展示へ。
彫・摺の技術が最高潮に達し、煌びやかになった作品たちはため息モノのうつくしさ!
やはり女方として、色気の中に可愛らしさのある古の名女方たちの艶姿に目が離せません!
こんな衣裳着たい!! こんな飾りの鬘素敵! ここに紋が入るのオシャレ!
ずーっと見てられますね。
さぁ、名残惜しくもその先の“明治の写楽”と称された豊原国周のコーナーへ。
まず、「一ツ家」で鬼婆に殺される浅茅の裾模様の蝶々がカワイイ。可哀想な役だけど。
「狐火」の兜のフワフワが立体的でカワイイ八重垣姫に、姫簪に銀粉が使われた「三代記」の時姫。
「金閣寺」がないのが惜しい!(笑)
そして何より目を引いたのはこの仕掛け絵。
顔の部分をめくると役者が変わる“子持ち絵”と言うもの。カワイイ名前ですね。
これは今から147年前。明治11年に新富座ではいつもとは違う趣向で、と「仮名手本忠臣蔵」の主要な役を日替わりにして上演した際のもの。
え!? それって3月の歌舞伎座そのもの!
絶対作って売った方がいい!!
求む! 令和の蔦重!
こちらは“目千両”と称えられた五代目岩井半四郎。
その目、豪奢な打ち掛け、カワイイところは多々あれど、個人的なお気に入りポイントは絵師の“東南西北雲”の署名の下の筆の絵。
「僕が描いたよ!」って伝えてくれてるみたいでカワイイ。
そして、最後に待っていたのが歌川国貞の描いた直筆の画帖。
芝居町と吉原を精緻に、生き生きと描いたこの作品の見事さたるや!
その中にはカワイイものも。
芝居前の喧騒の中で幟に登ろうとする子供に、開演前の幕から出てくる坊や。
吉原の絵のワンちゃんがこれまた大変にキュート!
そしてこの画帖の中に、とんでもない出会いがありました。
舞台裏を描いたこの1枚。
今と変わらない黒御簾や楽屋の中の様子。
狂言作者が後ろでプロンプターやってるのだって今とおんなじ(笑)。
そんな中、中央で熱演中の女方。
これなんと、初代中村歌六なんですって。
まごう事なきご先祖さま!! 私の、ひい、ひい、ひいおじいさま!
このような所でお目もじするとは……。
どことなく面影が……。あるかな?(笑)
あなたの子孫は今歌舞伎界で一番人数がいると言っても過言ではないんですよ!
え? 数より質? 恐れ入りました……。
まさかの出会いに興奮しながら、帰りがけに見つけたパネルで「三人吉三」の“お嬢吉三”の初演としても有名な名女方岩井半四郎になってから帰途につきました。
今回ご紹介した錦絵類の多くは前期展示のものですので、2月24日までの展示です。
2月26日からは後期の展示が開始!
京都に行くから絶対に見に行けないのがとても残念……。
皆さんからの後期展示の“カワイイ”報告お待ちしております!
来月のコラムはそれで書きますからね!
皆さんからの報告がないと来月は休載でーす(嘘)。
- 中村米吉
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1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、2023年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、2024年2・3月、10月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」の東京公演と福岡公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。また女方の大役・三姫より、「祇園祭礼信仰記」雪姫を2023年9月、「本朝廿四孝」八重垣姫を2024年1月、「鎌倉三代記」時姫を2024年11月に、それぞれ初役で演じた。
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