「もう一度観たいあの舞台」Vol.5ビジュアル(ロゴデザイン・イラストレーション:りょこ(ゆうめい))

もう一度観たいあの舞台 Vol.5 [バックナンバー]

中村壱太郎・咲妃みゆが10年を振り返る

演じる者の力で魅せる、訴えかけてくる舞台体験 帰り道は感動のあまり放心状態

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ステージナタリーは2026年2月に10周年を迎えます。あなたはこの10年、どんな舞台に出会い、どんな舞台に心揺さぶられてきましたか?

このコラムでは、さまざまな舞台で活躍中のアーティスト10人に、舞台ファンとしての“10年の観劇ライフ”を振り返ってもらい、「もう一度観たい」と思う、心と記憶に刻まれた舞台作品を教えてもらいました。

アーティストたちの“客席からの視点”を糸口に、ぜひあなたの10年の観劇ライフも振り返ってみてください。そして最後に重大なお知らせも!

中村壱太郎

中村壱太郎

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2009年、大学1年生の夏、兵庫県立芸術文化センターで目にした、体感した「A Chorus Line」が忘れられずにいます。もちろん歌舞伎の世界において忘れられない舞台は沢山ありますが、あの鏡だけのセットの中、板の上で演じる者の力で魅せる、訴えかけてくる舞台体験は初めての衝撃でした。特にCassieが「私に踊らせて!」と訴えかける「The Music and the Mirror」は、舞台で表現できることは当たり前ではない、ありがたいこと、選ばれしことなのだと痛感させられ、同時に舞台で表現する喜びを更に意識するようになった瞬間でもありました。そして、この体験は翌年の冬、初めてブロードウェイに弾丸で飛び立ちミュージカル好きとなるキッカケともなりました。この10年で新たな娯楽が沢山生まれ、舞台観劇人口は平均的に減少傾向にあります。そんな中、歌舞伎という伝統文化を担う1人として、たくさんの挑戦と、それに伴い今まで以上に責任を帯びることが増え続けているような気がします。これもまたありがたいこと。これからも内部の核心をつき、常に外に目を向け、インプット時間を大切に生きていきたいと思います。“舞台は勉強しに観に行くものではなく、楽しみに行くものである”というポリシーはずっと抱いていきたいと思います!

歌舞伎俳優
中村 壱太郎

中村壱太郎(ナカムラカズタロウ)

1990年、東京都生まれ。1995年、初代中村壱太郎を名乗り初舞台。2014年、吾妻徳陽として日本舞踊吾妻流の七代目家元を継承。歌舞伎の女方を中心に活動するほか、現代劇にも出演。アニメーション映画「君の名は。」では奉納舞の創作、映画「国宝」では振付・所作指導を担当。11月には、配信公演や映画で展開されてきた自身の企画「ART歌舞伎」の初劇場公演と、脚本・振付・特別出演を務めるフラメンコ公演「イン・ヒューマン」が控える。2026年1月に大阪松竹座「壽 初春歌舞伎特別公演」に出演。

咲妃みゆ

咲妃みゆ

咲妃みゆ [拡大]

この10年間で特に印象深い舞台はシス・カンパニー公演「子供の事情」です。作・演出は三谷幸喜さん。私が宝塚歌劇団を巣立った2017年7月。時を同じくして上演中だった「子供の事情」が卒業後の初観劇となりました。天海祐希さんや大泉洋さんなど……魅力的な俳優さんが大集結して10歳の小学生の日常を色鮮やかに演じられる舞台。素晴らしい脚本とお芝居に惹き込まれる内に、朧げだけれど実は心の奥に深く刻まれている〈遠い日の記憶〉を優しく呼び起こしてもらえるような演劇体験でした。エンディングは涙が止まらなくて今思い出しても熱いものが込み上げてくるほどです。新国立劇場からの帰り道は感動のあまり放心状態でした。そしていつか私もこんな素敵な作品に携わりたい!という高い目標も生まれました。10年を振り返る今……思い浮かぶのは舞台人として自分が何を成したのかよりも、出逢いや経験から受け取ったものがいかに多く尊いか、です。演劇が不要不急という扱いを受ける日が今後再来しないとも限りません。しかし私は確実に演劇に救われている一人です。演劇を愛する全ての方々への感謝と敬意を胸に、この先も一歩ずつ前進できたらと思います。

公演レポート

咲妃みゆ(サキヒミユ)

1991年、宮崎県生まれ。2010年に宝塚歌劇団入団。2014年に雪組トップ娘役就任、2017年に退団。退団後は舞台・映像作品に出演する傍ら、アーティスト活動も行う。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。近年は音楽劇「空中ブランコのりのキキ」、舞台「最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote」、映画「やがて海になる」、テレビドラマ「波うららかに、めおと日和」などに出演。2026年1・2月に「クワイエットルームにようこそ The Musical」が控える。

読者参加型、「もう一度観たいあの舞台」総選挙を開催します!

5日間にわたり10人の舞台人に観劇体験を振り返ってもらいました。思いがけず出会った作品、たった一度の観劇だからこそ良いのだという気付き、活動に変化をもたらした作品など、コラムを読んでいくうちに、皆さんにもさまざまな記憶が浮かんだのではないでしょうか。

そこで、ステージナタリーでは11月4日より、“もう一度観たい”と思う作品を教えてもらう読者参加型の投票企画「もう一度観たいあの舞台」総選挙を開催します!

過去10年に観た舞台作品の中から思い出に残る作品を、エピソードと共に教えてください。劇場や屋外、さまざまな空間で日常と非日常をつなげてくれる“舞台”、そしてそれを作るすべての方への敬意と感謝を込めて。皆さんと語り合える場になればうれしいです。詳細は11月4日にステージナタリー公式サイトでお伝えします。

なお、ステージナタリー10周年を素敵に盛り上げてくれるメインビジュアルを、同じく10周年のゆうめいさんが手がけてくれました。メインビジュアルの創作裏話も今後、公開予定です。ゆうめい10周年全国ツアー公演「養生」は明日11月1日に開幕。こちらもご注目ください!

ステージナタリー10周年ビジュアル

ステージナタリー10周年ビジュアル [拡大]

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読者の反応

中村 壱太郎 ( Nakamura Kazutaro ) @Rinta0803

#ステージナタリー さん!✍️

いつもお世話になってるおります!

今回は、✨忘れられない舞台✨
「A Chorus Line」 
Cassieが「私に踊らせて!」と訴えかける「The Music and the Mirror」

語らせていただきました☺️

https://t.co/ZGiiOJKBps

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