“納涼”を謳いつつ、猛暑を上回るアツさで連日エネルギッシュな舞台を繰り広げている「八月納涼歌舞伎」。米吉は第一部では、31年ぶりの上演でも話題の「男達ばやり」で又兵衛女房とま、第二部では坂東玉三郎監修「日本振袖始」で稲田姫を演じている。
そんな米吉が、今回はカワイイネクタイを求めて、あるお店へ……。このコラムは、カワイイ米吉に、カワイイものを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者の心を癒やすことを目的としている。
題字:中村米吉
カワイイの大洪水、ネクタイブランド・giraffeへ
毎日毎日お暑うございます。
地球が発熱してるんじゃないかと思って地面にカロナールを埋めてみましたが、あんまり効果はなさそうです。
たとえどんなに暑くても、男性はフォーマルな場面ではネクタイを締めなきゃなりません。
私もちょっと正装をする用事があるので、せっかくだからネクタイを新調しようと思い立ち、こちらにやってまいりました。
私の愛用しているネクタイブランド「giraffe」さんの工房であり本店、“WORK TO SHOP Sendagaya”へ。
ネクタイの形の看板がまずカワイイではありませんか!
ユニークでオシャレで他にないネクタイを販売しているgiraffeさん。
かねてより愛用する私はお店の方に自慢するために自前のコレクションを持ち込んでご披露(笑)。
こちらのブランドはとにかく遊び心満載なデザインが売り。
知らない方なら二度見すること間違い無いような可愛らしく面白いデザインが並んでいます。
リバーシブルタイプや、大剣と小剣で柄の違うもの。
表の柄に対してのアンサーのようなワンポイントが織りで表現されているものもとても素敵です!
中にはネクタイなのにネクタイをしていないように見えるワイシャツ柄のものまで(笑)。
ちゃんとひとつ立体のボタンがついているところが憎い!
蝶ネクタイの種類も豊富で、こちらは縁日のヨーヨーをイメージしたもの。
片側が丸くなっていて風船を思い起こさせます!
蝶ネクタイ好きとしても心くすぐる品ばかり。
ネクタイとお揃いの蝶ネクタイもあったので、広報の花摘さんとお揃いコーデをしてみました。
聞けば、ネクタイを作った際にどうしてもできてしまう余り布をうまく活用して蝶ネクタイを作る場合もあるんだとか。サステナブル!
またこちらでは生地を選んでオリジナルの組み合わせが作れたりもするそうです。
しかもこれらが西陣織の生地だというから驚きです!
ネクタイ単体だけではなく、ネクタイピンとの組み合わせで更に楽しめるのが魅力でもあり、こんな組み合わせが!
テーブルクロスの上に乗ったお皿の柄に、ネクタイピンでドーナツをON!
これはなかなか攻めてます!
そんな攻めたネクタイ達をこちらでは“体温”として種類分け。
締めたらこれぐらい自分の心の温度も上がりそうになります!
ちなみにドーナツのネクタイは40℃でした(笑)。
更に、包装まで一風変わっていました。
毎年2月のチョコ配り日に妻がこちらのネクタイをプレゼントしてくれるのですが、熨斗紙で貰ったことはなかったのでこんなのがあるのだと驚きました。
熨斗の部分がネクタイなだけではなく、言葉のチョイスにクスッときてしまいますよね。
越後屋さん! 公然と賄賂を包んでくれるお店がここにありますよ!(笑)
さぁ、私も本気で品定め開始。
ネクタイを外し戦闘体制です(笑)。
優柔不断日本代表
まずは試します!
こっちも試そう。
次から次に締めまくる。
取材だということを思い出してカメラ目線(笑)。
悩んでいます。
苦しみ出しました。
小道具みたいに持つな(笑)。
候補が出揃ったようです。
相談に入りましたね。
なんか語りだしたぞこいつ。
そして決まったのがこちら!
丸福珈琲店さんとのコラボ商品でもあるパンケーキのネクタイ!
迷彩の模様のような柄が実はパンケーキの蜜が垂れているような形になっているところが可愛い!
決め手となったのは、このコラムのタイトル。
元々このタイトルは私が発明し、人生のテーマとしている言葉で、Instagramのハッシュタグとしても愛用している「甘いものは世界を救う」のもじりでした。
そこに繋げて、甘いもののネクタイをチョイスした訳です。
しかも、現在私は「銀座はちみつ」のアンバサダーを務めているので、はちみつが垂れているデザインはもってこい!(メイプルシロップのつもりで作ったらしいけど、そこはまぁはちみつと言い張れば……)
締めてみるとこんな感じ。意外にシックにみえるかも??
ということで、素敵なおニューのネクタイで身なりを整えることができました!
何のために整えたのか?
実は、みなさまへ“最後”のご挨拶です。
“カワイイ”を探し求めて幾星霜。
世界を救わんとする当連載も、これでおしまい。
この企画は、担当編集フェアリー櫻井の「カワイイ×カワイイ」をやりたいんです!という熱意に呑まれ、意味不明のまま、試行錯誤を繰り返し連載を続けてまいりました。
いつもいつも原稿を上げると、フェアリーは大興奮の感想を送ってくれて、(こっちではそんなに面白いと思ってないけどな)と思いつつ、それはそれは継続の励みとなったものです。
今回、さまざまな理由で、残念ながら2年半の連載を終えることとなりました。
苦労も多かったけれど、気づきも多く、楽しい連載でした。
とはいえ、最終回を迎えた今も戦争や紛争は留まらず、分断は強まり、政治は混乱。夏の気温も上がりっぱなし。
あの歌とは違い、“カワイイ”だけじゃどうもダメ。世界を救えやしないみたい。
でも、“カワイイ”は大きな世界は救えなくとも、小さな世界を救うことができると信じています。
疲れたとき、弱ったとき、辛いことや悲しいことがあったとき。
自分の中の小さな世界が危機に瀕したその時に、あなたの思う“カワイイ”が、そっとその世界を癒し、救ってくれていませんか?
そうして一人一人の小さな世界が救われていいけば、やがては大きな世界も救われる。
そんな気がしています。
いまや“カワイイ”はどんなものにでも当てはまり、個々人の定義の中で可愛ければそれで何に使っても良いと言う、かなり懐の広くて深い言葉になりました。
この連載でも、何度こじつけたことか……(笑)。
でも、自分の中の“カワイイ”を突き詰めれば必ず一つの形になるし、それで良いのだということをこの連載で気付かされました。
コラムとしての「#カワイイは世界を救う?」は今回で最後になりますが、この連載を読んでくださった読者の皆さんは、「?」を「!」に変えて、自分の思う“カワイイ”を突き詰めていってください!
あなたを救った“カワイイ”が他の誰かを救い、大きな世界が救われるその日まで、この言葉を振りかざして歩んでまいりましょう!
約30回の当コラムをご愛読くださって本当にありがとうございました。
また会う日までお元気で。
世界を救う“カワイイ”の戦いはまだまだ続くのだ!!
【ご愛読ありがとうございました。中村米吉先生の次回作にご期待ください。】
- 中村米吉
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1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、2023年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、2024年2・3月、10月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」の東京公演と福岡公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。また女方の大役・三姫より、「祇園祭礼信仰記」雪姫を2023年9月、「本朝廿四孝」八重垣姫を2024年1月、「鎌倉三代記」時姫を2024年11月に、それぞれ初役で演じた。
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