「モンゴル・ハーン」は、2022年にモンゴルで初演され、その後、イギリス・ロンドン、シンガポールで上演された舞台作品。2019年に死去した作家バブー・ルハグヴァスレンが1998年に発表した「Tamgagui Tur(英題:State Without A Seal)」をもとに、演出家ヒーロー・バートルが2022年に舞台化した。劇中では、約3000年前の古代モンゴル帝国を舞台に、血塗られた権力闘争が描かれる。
物語の発端は、架空の王アーチュグ・ハーンのツェツェル正妃とゲレル側妃に数日違いで子供が生まれたことにさかのぼる。ツェツェル正妃とは長らく床を共にしていなかったアーチュグ・ハーンは訝しむが、エゲレグ首相に諭されて受け入れる。しかし、実はツェツェル正妃と通じていたのはエゲレグ首相で、エゲレグ首相は自身の血を王位に就かせることを企んでいた。アーチュグ・ハーンは、ゲレル側妃が生んだ子の成人を待たずにハーン(君主)を継承することに決めるが、エゲレグ首相は自身の子とゲレル側妃の子をすり替えることに成功し……。
劇中では、王位継承問題に葛藤するアーチュグ・ハーンの様子から、匈奴帝国の国家を重んじる思想や、民衆への思いが浮き彫りになる。さらに、権力闘争に巻き込まれる女性たちの悲しみや、裏切り者の残忍さが、約70人のダンサーによって身体表現を駆使して力強く描かれた。特にダンスは本作の見どころの1つで、モンゴルの土着的な踊りからアクロバッティックな群舞、軟体を生かした振付、激しい剣舞までが観る者の目を楽しませ、物語に躍動感を与える。舞台奥のスクリーンにはモンゴルの太陽や月、星空といった壮大な自然が映し出され、さらにはアクティングエリアが八百屋舞台になることで、匈奴帝国が誇る栄光、国家に懸けるハーンの思いがエネルギッシュに観客に迫り来て、感動を誘った。
白鵬は初日公演のカーテンコールで花束を贈呈。白鵬は、「私は燦然と輝く歴史あるモンゴルで生まれ、15歳で日本にやって来て、美しい日本で育ちました。横綱として結果を残せたのは、日本の子供たちの応援があったから。また、相撲を通して日本の国民にモンゴルを知ってもらえたのではないかと思います」とあいさつ。さらに作品について、「今日、初めて観たのですが、何回泣いたかわかりません。最後には皆が笑顔になって出て来てよかったなと思います」と感想を述べた。
さらに初日公演を観劇した
日本モンゴル友好記念事業「モンゴル・ハーン Japan Tour 2025」の東京公演は、10月20日まで。その後、24日から26日まで愛知・愛知県芸術劇場 大ホールでも上演される。
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日本モンゴル友好記念事業「モンゴル・ハーン Japan Tour 2025」
開催日程・会場
2025年10月10日(金)〜20日(月)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
2025年10月24日(金)〜26日(日)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
スタッフ
脚本:バブー・ルハグヴァスレン
演出:ヒーロー・バートル
出演
アーチュグ・ハーン:エルデネビレグ・ガンボルド
エゲレグ首相:ボールド・エルデネ・シュガー
ツェツェル正妃:バイラ・ベラ
ゲレル側妃:ドゥルグン・オドゥフー
アチール王子:ドルジュスレン・シャダヴ
クチール王子:サムダンプレフ・オユンサンバー
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すもすも文庫 @tittyai69
記事内に写真もたくさん
こういう時つくづく東京の人を羨ましく思う https://t.co/XCaLnxH14C