松竹創業百三十周年「三月花形歌舞伎」の取材会が、去る1月27日に東京都内で行われた。
「三月花形歌舞伎」は、毎年3月に南座で行われる、若手の歌舞伎俳優が中心となる公演。今回は、
取材会には、壱太郎、米吉、福之助、虎之介が登場。なお、平成生まれの若手歌舞伎俳優が古典の大役に挑む形態での「三月花形歌舞伎」は、コロナ禍の2021年にスタートし、今回が5回目となる。そのすべての回に出演してきた壱太郎は、同公演を「毎年どんどん深く、濃くなっている」と評し、「今回で5年目になりますが、“節目”と掲げると、なんだか終わってしまいそうなので節目とは言わず(笑)、通過点として良い公演にしていければ」とコメントした。
これまで、2021・2022年に出演した米吉は「コロナ禍真っ只中での初回公演(2021年)がすごく思い出深いです。壱太郎兄さん、(尾上)右近さん、(中村)橋之助くん、私の4人を中心に、いろいろなことを相談しながら公演を行いましたので、それが次の年につながったうれしさがありました」と言葉に力を込める。さらに、米吉が「最初の年には、壱太郎兄さんが盛んに『アンダー30の公演』と言っておりましたが、私も壱太郎さんも30歳を越えてしまいました。今回は“年嵩2人”が女方ということでございますので……」と続けると、隣の壱太郎から「いや、“年嵩”ではないでしょ!(笑)」とツッコミが入り、会場の笑いを誘う。米吉は、壱太郎の言葉に笑いながら「若い立役2人を盛り立てながら、精一杯勤めさせていただきます」と続けた。また米吉は、今回初役で勤めるお三輪について「娘役の最高峰のお役。私も『いつかは』と思いながら、憧れていたお役でした。このお芝居は大化の改新がモデルになっております。最近の日本史では、大化の改新を、“乙巳”の年に起こったことから乙巳の変と習うらしいのですが、2025年は、その60年に1度の“乙巳”の年なんです。そんな年に上演できることに、すごく縁を感じております」と述べた。
初回の2021年公演に出演した福之助は「米吉兄さんのお話の通り、(初回公演は)壱太郎兄さん、米吉兄さん、右近兄さん、そして兄である橋之助が看板となっている公演でした。僕も、いつかはチラシに大きく顔と名前が載る役者になりたいと思っておりましたので、今回呼んでいただけてとてもうれしいです」と瞳を輝かせる。福之助は、今回の「三笠山御殿」の上演では、橘姫が身分を明かす姫戻りからではなく、鱶七の入りから上演されることに触れつつ「今回初役で勤める鱶七は、昨年国立劇場で父(中村芝翫)がやった役です。僕は、(橋之助・福之助・歌之助の)三兄弟の中でも、父親がやってきた役の中で、特に線の太い役をメインでやっていきたいと思っていて、鱶七は、まさに僕が目指している、ど真ん中の役柄。物語の面白さのためにも、なるべく余裕を持って勤められたら」と意気込みを述べた。「三月花形歌舞伎」初登場となる虎之介は「いつも客席から観ていて、いつか出たいと思っていたので、今回出演でき、すごくうれしい」と公演への思いを話し、「今回は『伊勢音頭』を初役で勤めます。自分ごとになりますが、松嶋屋のおじさま(片岡仁左衛門)に役を教わるというのが、僕の1つの目標だったので、今回(仁左衛門に)監修していただくことになり、その思いがかないました。京都でこの演目がかかるのは、約半世紀ぶりのようなのですが、作品世界と京都の街はリンクする部分があると思いますので、お客様にも楽しんでいただけるのでは」と語った。
俳優によるあいさつが終わり、質疑応答に移るタイミングで、壱太郎が「ちょっと1つだけ……」とおもむろに立ち上がり、「今回の公演は、“恋に狂い、恋に戸惑い、恋に踊る”ということで、“恋”がテーマなんです!」と公演のテーマを発表。この発表を知らされていなかった米吉、福之助、虎之介は騒然。米吉は「ねえ、落ち着いて!(笑)」と壱太郎を着席させたあと、「それは、公式見解なんですか?」と壱太郎に尋ねる。壱太郎は笑顔で「公式見解です!」と返すが、会場を見渡した米吉から「……会社の人、初耳だって(笑)」と告げられると苦笑し、会場を笑いで包んだ。記者からテーマの真意を問われた壱太郎は「演目にちなみ、こうなりました。(虎之介が演じる)貢は恋に惑わされ、(米吉が演じる『妹背山婦女庭訓』の)お三輪は恋に狂う。(福之助演じる『妹背山婦女庭訓』の)鱶七についても、結局恋の結末は鱶七が取るということで、“恋”ですべてつながっているなと思いました。そして私が勤める『於染久松色讀販』は、お染、久松、お光の恋の三角関係を成した踊りですので、このテーマを掲げました」と説明した。
登壇した4名はいずれもスーツ姿だったが、その服装には、壱太郎が赤、米吉が黄色、福之助が緑、虎之介が青が差し色として入っていた。このことに壱太郎は「何かテーマカラーのようなものがあると、親しみをもってもらいやすいかな、覚えていただきやすいかな、ということで、このような形になりました。色は……役とリンクしてるかな?」と、ほかの3名に問いかける。米吉が「だとしたら、僕は緑じゃない?」と伝えると、壱太郎は「そうだよね。じゃあ、色は役と関係ないです!(笑)」と宣言。米吉が「あとは、それぞれの雰囲気ですかね。リーダーの壱太郎さんが赤で、僕はカレーを食べていそうだから黄色」と話し、ツッコミ待ちの表情で周囲を見渡したあと、「……それは、右近さん!」と自らツッコミを入れ、周囲の笑いを誘う。また福之助のネクタイに黄色が入っていることに、米吉は「これは、僕と『妹背山婦女庭訓』を二人でやるぞ!という気持ちをすごく強く持ってくれている……ということですよね?(笑)」と福之助に問いかけると、福之助も「はい! 仲間意識です!」とハキハキと応え、息の合ったやり取りを見せた。
チケットの一般販売は、2月9日10:00にスタート。なおこのたび「お染の五役」で、壱太郎が演じる5役が松プログラムと桜プログラムで1役異なることが明らかに。桜プログラムでは既報の通り、油屋娘お染、丁稚久松、久作娘お光、雷、土手のお六を演じるが、松プログラムでは、雷に代わり、鬼門の喜兵衛を勤める。
松竹創業百三十周年「三月花形歌舞伎」松プログラム
2025年3月2日(日)〜23日(日)
京都府 南座
出演
一、「『妹背山婦女庭訓』三笠山御殿」
杉酒屋娘お三輪:
烏帽子折求女実は藤原淡海:
豆腐買おむら:
漁師鱶七実は金輪五郎今国:
二、「『於染久松色讀販』お染の五役」
油屋娘お染 / 丁稚久松 / 久作娘お光 / 雷 / 土手のお六:中村壱太郎
猿廻しお龍:中村虎之介
船頭白蔵:中村福之助
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中村福助 @fukusuke9_
恋に狂い、恋に戸惑い、恋に踊る…中村壱太郎の「三月花形歌舞伎」テーマ発表に中村米吉らびっくり
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