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アイドルのセカンドキャリアを考える 第2回 [バックナンバー]

佐藤春奈がイメージする、アイドルに寄り添った衣装作り(聞き手:レナ)

周りのスタッフを大切に、やりたいことは口に出そう

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アイドルとスタッフの相乗効果

左から佐藤春奈、レナ。

左から佐藤春奈、レナ。

レナ 佐藤さんは現在さまざまなグループの衣装を手がけていますけど、ご自身が元アイドルという立場だからこその気付きって何かありますか?

佐藤 私は衣装制作担当として呼ばれたわけだから、そのことだけを考えればいいんだけど、自分もアイドルをやっていたからこそ「この子はすごくがんばってるから、もう少しなんとかよくしてあげたいな」と気持ちが入ることがあるんです(笑)。だからアイドルはファンの方の心を動かすだけじゃなくて、周りのスタッフさんや、関わってくれている人の心をつかむのも大事だなと、スタッフとして携わるようになってすごく思うんです。

レナ 確かに、運営がやる気にならないとアイドルは活動できないですもんね。だから私はファンの方にも、アイドルばかりにラブコールを送るんじゃなくて、運営にも思いや愛を伝えてほしいなと思っていて。アイドルはファンの方からたくさんの思いをもらいますけど、運営の場合はやったぶんだけ返ってこないことの方が多いような気がするから。

レナ

レナ

佐藤 うんうん。現役時代はステージに立ったり、大きいワンマンを達成したり、ファンの方とお話することでやりがいを感じていたけど、スタッフさんがそれを感じる瞬間ってどれだけあるのかなと思いますよね。

レナ だからアイドル側も運営さんに感謝の気持ちを伝えることが大事というか。アイカレの石塚汐花さんが卒業して衣装を事務所に返却するときに、全部の衣装に付箋を貼って感謝の気持ちをつづっていましたけど、すごく素敵だなと思って。

佐藤 あれは素晴らしいですよね。例えばシングルの衣装だと、それにまつわるメッセージを書いていたりして。アイドルの卒業の最上級だと思いました(笑)。しおちゃんは同じチームで、ライバルだった時期もあったんですよ。でもすごく大切な先輩で、卒業ライブの衣装を作らせていただいたときは今までで一番気合いを入れて作りました。

レナ 真っ赤な衣装ですよね。気合いが入っているのが伝わってきました。

佐藤 本当に寝ないで現場に行くくらい、めちゃくちゃ気合いが入ってました(笑)。

佐藤が制作した衣装を纏う石塚汐花。

佐藤が制作した衣装を纏う石塚汐花。

左から佐藤春奈、石塚汐花。

左から佐藤春奈、石塚汐花。

レナ やっぱり相乗効果なんですよね。アイドルのやる気がすごいと、衣装を作る側もやる気が出るからステージがいいものになるというか。

佐藤 そうそう。「あの子があれだけがんばっているなら、こっちもしっかりサポートしよう」という気持ちに本当になるんですよね。

レナ これ現役のアイドルの方が読んでいたら、ぜひ意識してみてほしいですよね。

佐藤 皆さん、本当にそうしてください!(笑) 今は1人のスタッフ、1人の個人事業主として現場に行くと、いろんな大人の方と話す機会があるんですね。そうすると余計ちょっとした心遣いが大事だったんだなとわかるんですよ。

レナ それってアイドル時代からなんとなく感じていましたか?

佐藤 いえ、私はけっこう雑だったかもしれないです(笑)。今思えばもっと大事にしなきゃいけなかったなと反省してます。

レナ (笑)。アイドル時代はグループの一員として活動しているから、責任感も分散しちゃってそういったところまで目がいかなかったりしますよね。少しの努力ではあるんですけど。

佐藤 そうですね。笑顔で「おはようございます」を言うとか、そのくらいのことでいいと思うんですよ。もちろんできる子のほうが多いとは思うんですけど、それがいかに大事なことだったかを社会に出て感じていますね。

佐藤春奈

佐藤春奈

レナ そのほかにアイドルの経験が社会に出て役立ったことはありますか?

佐藤 ファンの方も運営さんも年上の方が多かったので、そういう人たちと話すスキルはすごく上がったと思います(笑)。もともとよく話すほうだったけど、アイドルとしてステージに立ったり、ファンの方と触れ合ったりする中で、よりコミュニケーション能力が身に付いたというか。アイドルは少しでもチャンスがあったらチャンスをつかみにいかなきゃいけないから、そういう精神性も今の仕事に役立っていると思いますね。やっぱりフリーの人間はガツガツ行かないと、お仕事をもらえないので(笑)。

レナ アイドルは運営さんが敷いてくれたレールの上をいかに華やかに歩んでいくかが大事ですけど、フリーだと自分1人でその道を切り開いていかないといけないですもんね。

佐藤 そうですね。1人でお仕事をしてみて、いろんなことを考えられて、いろんなことに挑戦できる環境は楽しいなと思う反面、自分から動かないと本当になんにもならないんだなと気付かされました。

アイドルに寄り添った衣装作り

レナ アイドル衣装の流行りみたいなものってあるんですか?

佐藤 あると思います。グループごとにコンセプトがあるので一概には言えませんが、ライブアイドルの子たちはフワフワフリフリのやつとか、大きいリボンが付いた衣装を着たいみたいで。胸に大きいリボンを付けて、フワフワのパニエで、後ろの丈が長くて、みたいなオーダーが多いですね。

レナ なるほど。その流れってどこから来てるんでしょうね。

佐藤 うーん、たぶん、ゴスロリにもう少しアイドルっぽいキラキラを加えているというか。あとはオフショルダーにしたいとか、お腹出しにしたいというのはほぼ100%言われますね。

レナ お腹出しは寒そう(笑)。

佐藤 (笑)。お腹を見せると細く見えるんですよね。

レナ 皆さんそれぞれ自分のスタイルや似合うものがわかっているんですね。

左から佐藤春奈、レナ。

左から佐藤春奈、レナ。

佐藤 そうですね。みんな「ここを出したらきれいに見える」とかのこだわりがあるから、細かく打ち合わせをする必要があるんです。自分がアイドルをやっていたからこそ、そういう気持ちに寄り添いたいなと思っていて。

レナ 逆に「佐藤さんにお任せしたい」という子もいるんですか?

佐藤 いますね。なんでもいいというよりは、自分に似合うものがわからないからお任せしたいみたいな。そういう場合は、その子が好きな洋服やスタイリングをヒアリングするんです。私は本人が好きなものが一番似合うと思っているので。

レナ ガチガチにオーダーが決まっているのと、佐藤さんにお任せしたいという子とヒアリングしながら作っていくのはどちらが楽しいですか?

佐藤 どちらも楽しいですね。その子が考えるものを形にしていくのは新鮮だし、自分では思い付かないような発見があったりするんです。逆にお任せの場合は、その子に似合うものを全力で作ろうと思えるから、どちらも違うモチベーションの持ち方ができるというか。

佐藤が制作したアイドルカレッジの衣装。

佐藤が制作したアイドルカレッジの衣装。

佐藤が制作したアイドルカレッジの衣装。

佐藤が制作したアイドルカレッジの衣装。

やりたいことがあったら言葉にしよう

レナ ここまでお話を聞いて、佐藤さんは大変そうなことも楽しそうにお話されているので、充実したセカンドキャリアを送っているんだなと思いました。

佐藤 大変なことも多いですけど、やりがいは大きいですね。自分の技術でごはんが食べられたり、少し広いお家に引っ越せたり……お金のためにやっているわけではないですけど、そういうふうに対価が付いてくると「私、もうちょっと行けるのかも!」とがんばれるんですよね(笑)。

レナ そういう体験をすると大人になった感じがしますよね。

佐藤 そうなんですよ。一方で時間に追われる日々ではあるんですけど(笑)。あと、1人になってみて、私は本当にアイドルが好きなんだなと改めて思いました。その気持ちだけでやっていけるんだなって。

レナ 元アイドルだからこその視点を持ってお仕事に取り組む佐藤さんを見ていると、アイドルとの関わり方もたくさんあるんだなと思いました。

佐藤 アイドルの気持ちがわかるからこそ、アイドル関連のセカンドキャリアっていろんな分野であると思うんですよ。「アイドルって卒業したあとどうするの?」と思われがちだから、いろんな選択肢が生まれたらいいなと思っていて。先駆けと言ったら大げさですけど、私の活動を通して現役の子たちに「こういう道もあるよ」と示せたらいいなって。

レナ 今、将来について悩んでいるアイドルたちに何かアドバイスはありますか?

佐藤 先ほども話に出ましたけど、スタッフさんや自分に関わってくれる人を本当に大事にしてほしいですね。あとはやりたいことがあったら、ちゃんと口に出して周りに伝えることが大事。私の場合、衣装の仕事も自分からスタッフさんに協力をお願いしていろんなところとつなげてもらったので。だからまずは口に出せる夢を持つことですかね。

佐藤春奈

佐藤春奈

レナ アイドルにとって運営さんはすごく大人に見えるから、自分の意見を伝えづらいというのもあると思いますけど、そうやって行動することは大切ですよね。

佐藤 そうですね。最初は緊張するかもしれないけど、やりたいことがあるならグイグイいかなきゃダメです。やっぱり黙っていたらなんにも起こらないですから。

レナ ありがとうございます。では最後に、今後の目標について聞かせてください。

佐藤 今はオーダーを受けてアイドル衣装を作っていますけど、ほかにも違う視点の需要があると思うんです。今の時代、アイドルみたいな活動をしている方がたくさんいるじゃないですか。例えばTikTokやYouTubeで活躍している人だとか、みんなの憧れになったり癒やしの存在になったりする人はみんなアイドルだと思うんですよ。そういう子たちが着る衣装を作れたらいいなと思っていて。例えばそういう人たちがサンタのコスプレをして配信したいと思っても、チープなパーティグッズを着るのは嫌だと思う。でもオーダーメイドだと金銭的に難しいと思うから、パーティグッズと完全オーダーの中間くらいの価格帯でクオリティの高い衣装を提供できたらいいなって。

レナ うんうん。

佐藤 あとは事業の規模をもっと大きくしたいですね。今はアシスタントの子が1人いるんですけど、まだ人を雇ったりするほどの余裕はないので。将来的に会社化して従業員を抱えて、それこそ元アイドルの子たちを積極的に採用できたら理想的だなと思います。アイドルという職業を無駄にしないというか、まだまだ将来のことはわからないけど、そういう野望は持っているんです。

左からレナ、佐藤春奈。

左からレナ、佐藤春奈。

レナの取材後記

レナ

レナ

盛りだくさんのインタビューを読んでいただきありがとうございます!
佐藤さんとのお話はすごく楽しく、質問事項もたくさん考えていったのですが、最初と最後しかノートを見ないくらいあっという間に時間が過ぎていました。
佐藤さんとのインタビューはひと言で言うと、人を引き寄せるパワーを感じた時間でした。
佐藤さんと言う人柄、姿勢、感性。

すごくまっすぐにお仕事について話す彼女の姿に、私も引き寄せられていった気がしました。
それはきっと彼女の周りにいるアイドルさん、運営さん、スタッフさん、そしてファンの皆さまも同じことを感じられているではないでしょうか?
ひたむきな姿勢が佐藤さんのセカンドキャリアを明るいものに導いた1つの要因でもあると思います。

自分がどうありたいか、どう見られたいかを考えてみても、
なかなか自分が思った通りには理解されないことが多いと思います。

でも

この人、なんかハッピーなオーラでてるな~
この人、なんか幸せそうだな~
この人、なんかいいな~
みたいな感覚って、自分のさじ加減1つで
他人にも与えることが可能な気がします。

何が言いたいかまとまりない感じになりましたが、
今回のインタビューは後書きを書かなくても
充分なくらい読み応えのあるものになったと思います。

手に職も大事、それと同じくらい
自分が幸せでいることも、もっと大事。
そんな気がするよ。

最後まで読んでくださいまして
ありがとうございました。

佐藤春奈(サトウハルナ)

2015年から2020年までアイドルカレッジのメンバーとして活躍し、同グループの派生ユニット・MELiSSAのリーダーも担当。また服飾専門大学を卒業しており、現役時代からグループの衣装制作を手がけていた。引退後はフリーの衣装デザイナーとして、さまざまなアイドルグループの衣装を制作。デザインはもちろん、生地の仕入れから縫製までを自身で行っている。2020年6月にはハンドメイドブランド・PALMLANDを立ち上げた。
佐藤春奈 (@ic_paruna0417) | Twitter
佐藤春奈【アイドル衣装製作】 (paachan0417) ・Instagram
PALMLAND (@palmland_costume) ・Instagram
PALMLAND official (@palmland_by_paruna) ・Instagram

レナ

2007年にデビューした女性アイドルユニット・バニラビーンズの元メンバー。バニラビーンズはスウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めた。2018年9月にラストシングル「going my way」をリリースし、10月のライブをもって解散。バニラビーンズ解散後は、トークスキルを生かしてMC・タレント業をメインに活躍しており、“多摩川のおんな”としてボートレース多摩川の選手インタビュー、生配信の番組進行を担当している。
レナ(多摩川のおんな) (@VB_Rena) | Twitter
レナ(多摩川のおんな) (@vb_rena913) ・Instagram

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レナ(多摩川のおんな) @VB_Rena

コラム「アイドルのセカンドキャリアを考える」第2回、インタビューさせていただぎした。お話を進めていくたびに
佐藤さんを好きになっている自分がいました。
是非最後まで見ていただければ幸いです☺️ https://t.co/SRIeZjdDsx

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